勝手に最遊記

勝手に最遊記

Comouflage ―5―



「いつもしてらっしゃるんでしょう?戦闘要員ではないから、三蔵様の身の回りの世話をしていると、仰ったじゃないですか。」
何を言ってるんですか?と彗が不審気な顔をする。

「わ・・わはは。そう、そうなんだけどな。みんなが一緒だから・・いつもは。」

慌てて三蔵に椅子を勧める。「・・・どうぞ、三蔵サマ。」

「じゃ、遠慮なく世話をしてもらうか。」意地悪そうに口角を上げる三蔵。尊大にふんぞり返って椅子に座る。




ソレを見た八戒達は、必死に笑いを堪えている。


『なんでなんでなんで・・・こんな目にぃ~~っ!!』料理を三蔵に取り分けながら、心の中で身悶えする。

自慢じゃないが、給仕などした事がない。
基本的に八戒が仕切ってくれるし、悟空と悟浄は争いながら食べているし、
三蔵は人に“コレ食べろ”的な行為をされるのが好きじゃないから、勝手に食べている。お酌もしかり。

『なのに・・・今日に限ってっ・・・わざとだろっ!!』

当然だろ、と言わんばかりに盃を出す三蔵にお酌する。


一度、宿で食事をしている時に、宿の女の子が
「お酌しますぅ♪」と、見かけがキレイな三蔵に寄り添ってきたら「・・うぜぇ、消えろっ・・。」と低い声で威嚇した・・・のに!




「・・お酌をする手が震えてますよ。」
「ありゃー、相当怒ってんな・・。」
「三蔵・・後のこと考えてんのか?」
自分達は勝手気ままに食事をしながら、ボソボソと三蔵達の様子を窺う。

「・・・しかし、この寺は肉やら酒やら出しているが・・・構わんのか?」

食って飲んでいる三蔵が言うことか?ツッコミたいけどツッコメない桃花。

「はい。本来ならば、精進料理をお出しするべきなのかも知れませんが、僧正の方針で、妖怪に対向するには体力が大事だと。
その為には、体を作る食事をせねば・・と言うことで。申し訳ございません。」

「ぜーんぜん、コッチの方がイイよな~悟浄!」
「ったりめーだろ?前に立ち寄った寺院なんか、豆やら草やら・・。腹の足しにもなんなかったぜ。」
「・・・浄化された生活が、体質に合わないんですねぇ。」
「「八戒・・・。」」

桃花は、賑やかに食事する八戒達を笑って見ていたが、『・・・?彗君?』深刻そうな彗の表情(かお)を見た。

桃花が彗の様子を見ていると、

「・・・おいっ、酒!」グイッと目の前に盃を押し出され、「気の利かねぇ世話係だな。」と言い捨てられた。

「本当にっ・・申し訳ございませんねぇ、 三蔵サマっ!!
引き吊りながら、笑顔でお酌をする桃花の顔を・・・悟空達は恐いと思った・・。






――――――――――「あ~・・疲れた・・・。」一人、トボトボと厠へ向かう桃花。

まだ食事中なのだが、怒りが爆発しそうになっていたので、一時退出したのである。


『三蔵ってマジ、性格悪い・・仕返ししてやるっ・・。』
寝付くのが早いから、顔にヒゲでも書いてやろうかしら・・・・不穏な事を考える桃花。


三蔵にしてみれば“いい退屈しのぎ”に過ぎないのだが、されている桃花にしてみれば、腹立だしい事このうえない。

ヒゲじゃ甘い?額に 「肉」 って書いた方が・・悩みながら歩いていると、いきなり目の前に太い腕が突き出され、道を阻んだ。



「・・・何か用ですか?」
桃花の目の前に、三人の僧達が立っていた。厳つい顔に、下品な笑みを浮かべつつ・・・・。

『町のチンピラと変わらないな。』そう思っていると、


「お前、名は何という?」高圧的な態度で、真ん中の一人が話し掛けてきた。

「大桷と申します。」普段なら、人の名前を聞く前に、自分の名前を言えっ!
・・・そう言ってやるのだが、騒ぎを起こしたくないので我慢する。

「大桷?名前だけは立派な男だな。」ニヤニヤしながら桃花に近づく。

『エッ・・!バレてるのっ・・!?』思わず青ざめる。

「・・・お稚児さん風情が、三蔵様一行に加わってるなんてよ。」そう言って、三人が哄笑する。

『お稚児・・?ソレってつまり・・。』


「まぁ、三蔵様の気持ちも分からんではないな。おなごの様な顔をしておるし。」
「全くだ。あの妖怪共もソッチの方面で役に立っておるのではないか?」
「確かに。我らのように、体を鍛えている様にも見えん。
見かけは皆、美形揃いだしな。さぞかし夜は激しいだろうて・・。」

哄笑する僧達――――ドォンッ!!桃花は拳で激しく壁を打ち付けた。


「・・俺の仲間を馬鹿にすんじゃねぇよ。」怒りに燃えた目で僧達を睨み付ける。


自分は馬鹿にされようが、軽蔑されても構わない。
でも“仲間”は別だ。
喧嘩しても、いがみ合っても、信頼できる仲間・・。

こんな奴らに、三蔵やみんなの事を悪く言われたくないっ!!





もう、止まらなかった。


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: