勝手に最遊記

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Comouflage ―10―



「・・・貴様・・。」
“三バカ不細工トリオ”が桃花――――――――・・大桷へと向き直る。

「女にモテ無いのは判るけど?嫌がる男に手をだすんじゃねーよ。」油断なく、陳捻達を睨み付ける桃花。

「酔っ払っている所為なら、今すぐ此処から去れ。俺の目は“玄奘三蔵法師”と繋がっているって思ってくれていいからよ。」

陳捻達が悔しそうに顔を歪め、「虎の威を借る狐め・・・。」言い捨てて、三人が立ち去った。

「・・・はーっ・・。」頭を振る。三蔵の威光を盾にしたくは無かった。しかし、穏便に事を収めるには一番いい方法であった。

「大丈夫か?・・彗。」地面に倒れている彗に手を差し出す。

「あ・・すみません・・痛っ!」激痛に顔をしかめる。

「捻ったのか?・・手当を・・。」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます。」慌てて彗が立ち上がる。


サアッ―――・・と夜風が吹いて、雲から月が姿を現した。彗は凝視した。


風呂上がりでシャツ姿の大桷・・・。

胸元や、長めの裾から出ている足が白い。上気した頬は柔らかそうで、男らしい特徴が見られない。

なぜか・・・官能的だった。


「・・・・・?彗?」「――――っ、はっ・・!」思いかけず心が跳ね上がる。

『なっ・・・なんだ、今の感覚はっ?私は・・・私は・・・!』

「どうしたんだ、彗?」近づいてくる桃花に、顔が赤面する彗。
「なんでも・・ありません!お休みなさいっ!!」
脱兎のごとく、その場から駆け出す彗を、桃花は口を開けて見送った。

「・・どうしたんだ、アイツ・・。」その言葉に呼応するように、

「思春期真っ只中だからな、彗は。」揶揄するような声が、降ってきた。


「・・・とっとと助けろよな。」声の主も確かめず、桃花は言い放った。

「お前さんが来たからさ。」裏庭にある、ひときわ大きな木の上に――・・草庵が居た。
美味そうに煙草を吸っている。


『まったく、この男は・・。』
喰えないヤローだと、顔をしかめながら「お前の弟なんだろ?庇護してヤレっての。」

木の幹に煙草を押し潰して、「本人の為にならない、だろ?」笑いながら木から飛び降りてきた。

「・・・本人の為・・ねぇ?」
近寄ってきた草庵に、軽くため息を付きながら、持っていたタオルで体を庇う。

なんとなく、危険。

先程の“三バカ不細工トリオ”の時は、まだ暗かった。彗は幼いので何とかなった。

でも、草庵は違う。しかも月明かりが明るい。

この長身の喰えない男・・・だらしなさそうで、眼光の鋭い男には自分が女だって事を、見破られそうな気がするのだ。

「草庵さん、あんた・・「さん呼びは止めてくれ。」

「草庵。アンタ、この寺を出奔したのは何故だ?彗が来たからなのか?」草庵が可笑しそうに、
「ズケズケ聞いてくるな~。かえって気持ちが良いくらいだぞ?」

桃花が呆れて、
「・・茶化すなよ。彗から大体は聞いている。
でも俺には、アンタみたいな人間が、母親が違うとかどうとかって事に拘(こだわ)るようには見えないからな。」

「じゃーどう見える?」顎に手を置いて、ニヤニヤ笑いながら聞く草庵へ、

「俺が質問してるんだけど・・。そうだな、人のこと考えて、貧乏くじ引いてそうだよな、アンタって。」

桃花の一言に、一瞬、草庵から笑みが消えた。

だが、すぐに笑みを浮かべた。

「・・言うね~。口説かれてるみたいだな。」草庵の言葉に、顔が赤面する。それを悟られまいと、

「馬鹿か、てめぇ!男なんか口説くわけねーだろっ?さっさと俺の質問に答えろよっ!!」桃花が怒鳴り散らした。



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