勝手に最遊記

勝手に最遊記

Comouflage ―11―




三蔵は眼を開けた



慣れた気配がしたのだ




「・・・なんだ、バカ女・・。」障子の前で佇んでいる桃花に、再び目を瞑りながら言った。


「三蔵・・・ごめん。」座り込んだ気配を感じた。


「なにがだ。」


一瞬、間があった。


「明日・・・迷惑掛けるかも。」消え入りそうな声で、呟く。


「・・・いつものことだろ。」


「え、・・まあ・・そうなんだけど・・。」でも・・と続きそうな声を止めるかのように

「俺は寝る。」

「三蔵?」

「煩せぇ。・・・いつものことだろ。」障子に背を向けるように、寝返りを打った。


くすっと笑う桃花。

「お休み・・。」

離れていく気配に、三蔵は眼を開けた。「バカが・・・いつもの事じゃねぇか・・」
フッと口角を上げ、再び眠りへとついた。




――――――――――すでに時間は深夜を回っていた。




薄暗い中、桃花は台所へと向かった。

『彗と草庵・・・。』話を聞いてしまうと、いても立ってもいられなくなってしまった。

今回は、本当にゴメン。
心で三蔵に詫びる。

今までも、自分が勝手に首を突っ込んで騒ぎになった事が多かったが、それとは違う。
目を閉じ、耳を塞いで、気付かない振りさえしていれば・・・命に関わることではないのだ。
知らないフリを出来ただろう。 でも、自分には出来そうに無い。

『幸せに暮らして欲しい。』

自分のエゴだ。
大桷に似たあの子を・・・重ねてみて、救いたいと思ってしまった。

寺院で騒ぎになったら、“玄奘三蔵法師”の称号に傷が付くかも知れない。

それだけは避けたくて・・・でも、避けられそうにないと予感がして、三蔵に先に詫びを入れに行ったのだ。

「いつものことだろ。」

繰り返し言った。


「いつものことだろ。」


桃花には、     『だから 気にすんじゃねぇ』  そう聞こえた。


「いや、そう言ったな。・・・素直じゃないから。」思わず微笑む。



三蔵は素直じゃない。



でも、


意外と。


意外と、優しい。



そう言ったら、ハリセンを喰らうだろうけど。




「さて・・・明日の為に、準備しますか。」
真顔で、台所に入っていた。




© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: