勝手に最遊記

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Comouflage ―15―


完徹が棍棒を振り下ろそうとしたが、その動きより早く彗が動いた。

バシインッ・・完徹の足のすねに、棍棒を横から叩きつける。「痛っ・・!」思わずかがみ込んだ所に、

「はあっ!!」バシッバシッ・・・顔面の左右に、棍棒を振るう。

「こっこのっ!」鼻血を垂らしながら、完徹が棍棒を構え直す。

「・・・私は負けません。」彗が堂々と言った。

「ヤれーっ!!不細工なんかヤッちまえ~っ!!」桃花も堂々と(?)声援を送る。


「お前などっ・・!」棍棒を振り回しながら、完徹が彗に向かって飛びかかる。

それを冷静に受け流し、背後に回り込んだ所で棍棒を背中に叩きつけた。

「ぐっ・・!」痛みに耐え、闘争心剥き出しの顔で振り返ったが、

彗が「はあぁ――――っ!!」気合い一心、

―――――――― ドゴッ、ドゴッ、ドゴッ、ドゴッ ――――――――

額・鼻・喉仏・鳩尾・・・・的確に急所に棍棒を突き入れる。


「がっ・・・・。」ふらつく完徹。

クルクルッと右手で円を描くように棍棒を回し、「はぁっ!!」かけ声と共に、完徹の脳天に棍棒を叩きつけた。

もはや声を発する事すら出来ずに、完徹が倒れていく・・・。


「アイツ、スゲーじゃん!!」同じ棍棒使いの悟空が、目をキラキラさせて言う。
「急所を心得てますねぇ。」安心したかの様に、八戒が頷く。
「・・・フン。非力なヤツは、急所を狙わないとヤられるからな。」
「でも、まーコレで?一件落着ってワケ?」

悟浄が笑いながら喜び合う桃花達を見た時、異変が起こった。


低く、囁くような声が聞こえてきた。





・・・・・・  オン・キリキリ  オン・キリキリ   ・・・・・

ノウマクサラバタタ  ギャティヤクサラダババ  ボケイビャクサラバ・・・





『この・・真言(タントラ)はっ・・!』三蔵が声をする方を見ると、僧正が憎しみの眼で唱えている。


「てめぇっ・・・桃花っ・・・!!」三蔵が叫んだ、 ウンタラカタマン ――――――「不動霊縛術!!」





―――――パキイィィ・・・ンッ


「・・・っ!?」「かっ・・?」桃花と彗が床にひれ伏す。

『体の自由が・・・効かないっ!?』指先一つ、自由にならない自分自身に、恐怖が沸き上がる。

「・・・対人霊共通の金縛りの術・・・不動霊縛術だ。」僧正が進み出てくる。

「ざけんな・・よ。なんで、てめぇがっ・・。」倒れても尚かつ、睨み付ける桃花に、

「ふん・・不浄な女のお前に、言われる筋合いなど無いわ。」

「知って・・!?」桃花が驚愕する。

彗が目を剥く。他の僧達もしかり。

「私の目は誤魔化せぬわっ!!」そう叫び、桃花の服を引き裂く。

ビリイィッ・・ミシャアッ・・肌が露出し、明らかに男ではない体が露呈される。

「―――っ!!」桃花が歯を食いしばった。『のっ・・!』

「・・大桷さんっ・・!」顔を真っ赤にし、悲痛な声で彗が叫んだ。

「てめぇ、桃花に何しやがる!!」
広間の中央に、悟空が飛び出した。その後ろを、八戒と悟浄が並ぶ。

「下賤な妖怪共か。・・・不浄な女を連れ歩いている三蔵法師なだけに、供も下劣な奴らだな。」僧正が嗤った。



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