勝手に最遊記

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Comouflage ―16―



「・・・、下劣だと言ったのだ。」その言葉を言い終わらないうちに、僧正の手から札が放たれた。

札は勢い良く空を走り、悟空達を囲むように床に散った 

―――瞬間―――

パアッと光が悟空達を包むと、梵字が浮かぶ―――――――

「がっ・・体がっ・・!?」「くっ・・。」「どうなってん・・だよ?」次々に悟空達が床に倒れる。

「大人しく寺から去っていれば良かったモノの・・。余計なことに首を突っ込むから、こんな目に合うのだ。」

「このっ・・クソ僧正っ・・!!」桃花が毒づく。

ニヤッと僧正が嗤って、
「不浄な女が。・・・三蔵様の妾か?お前のような女の代わりなど、幾らでもいるというモノだ。そうですよね、三蔵様?」

三蔵が小馬鹿にしたように「・・・それで勝ったつもりか?」マルボロを投げ捨てた。

「遠回しに、この俺を脅しているつもりか?三蔵法師が女を連れ歩いていると。
言いたければ何処へなりと吹聴するがいい。
ま、貴様のような負け犬の話など、誰も聞く耳をもたんがな。」

「まっ、負け犬!?この私がっ・・・?言わせておけば・・例え三蔵法師と言えども、容赦しませんぞ!!」

「・・・今から負けるんだよ、貴様は。」

三蔵の言葉と同時に、広間の空気が切られた――――――


ゴオォッ ・・・広間の中に轟音が響く。

「・・・があっ・・!!?」

僧正の肩を突き刺し、勢い衰えぬまま、僧正の体を壁に串刺したソレは「てっ・・鉄槍!?」桃花が驚きの声を上げた。



――皆の縛が解ける――


「よっ。大丈夫か?」広間の入り口から声が聞こえた。

「あっ・・草庵。」

己の身の丈ほどの鉄槍を悠々と担いで、にこやかに草庵が立っていた。

「・・・遅すぎ何だよ。」体を起こして、不服そうに桃花が言った。

「いいじゃねぇか。この方がカッコイイだろ?」笑いながら近づいてくる。

「あ、兄上・・・。」彗が助け起こされる。

「すまないな。お前に辛い思いをさせて・・。」

「兄上っ・・!」彗が飛び付く。
苦笑しながら、ソレでも嬉しそうに彗の頭を撫でてやる草庵。

「“言わなくても判る事もあるが、言わなきゃ判らない事の方が多い”って
この俺に説教したヤツが居てな。・・・俺は、お前を大事に思ってるぜ。彗。」

良かった・・・幸せそうな彗と草庵の姿を見て、しみじみ喜びを噛みしめる桃花。

クルッと桃花の方を見て、
「しっかしな、・・良かったぜ。俺は自分がアブノーマルになっちまったかと思ってよ?ちょっと悩んだぜ。」

「は?・・・ああっ!!?」
見るも無惨な自分の服・・・上半身が露わになっているのを、忘れていた桃花。慌てて両腕で隠す。

「はいはいっと。桃花、コレ着てろ?」悟浄が自分の上着を脱いで、桃花に掛けてやる。

「・・・見ないで下さいね?」さりげなく、桃花の前に立つ八戒。

悟空と言えば・・歯を剥き出しにして、他の僧達を威嚇している。

「・・・わーったよ、ガードが堅いな。責任取れってゆーなら取ってやるぜ?俺のトコに嫁に来るか?」

「ボーズのトコに何て、ぜええっったい、嫁にはイカン!!」桃花の大声が、広間に響いた。


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