勝手に最遊記

Comouflage ―18―

「大桷が・・・桃花さんが女性だと判って、驚きよりも安堵しました。この・・この心は一体・・・？」

草庵はフッと笑みを浮かべ、彗の肩に手を置いた。「そりゃ・・初恋ってヤツだ。」

「初恋・・・。」

三蔵達の姿が見えなくなるまで、二人は佇んでいた。

「あー・・何だか疲れたよな～。」悟空が力無く言った。
「折角、屋根のある場所に泊まれたんですけどねぇ。」
「そりゃ、このバカ女の所為だろうが。」
「～三蔵・・・みんな、ゴメンね。」
「だーっ、い～って！桃花も頑張ったジャン？見直したぜ。」

悟浄が頭をガシガシ撫でる。「い、痛いって・・。」思わず苦笑。

「そーいや、首絞められてたよな？桃花、大丈夫か？」悟空が桃花の顔を見る。
「ひっ！？だっ大丈夫！！なんともなって無いから！！」首を隠し、後ずさりする桃花。

八戒のモノクルがキラリと光った。
「大丈夫なわけ無いでしょう？僕が診て上げますよ。」ジリジリと桃花に近づく。

「いやっ・・ホント、大丈夫っ・・ってわあっ！悟浄君！？」悟浄が背後から桃花を羽交い締めにする。
「大丈夫なら見せてよ？悟空、髪の毛かきあげてみな？」

「・・？こうか？」悟空が桃花の髪を上げると、首を絞めた跡と、その上に重なるように鬱血した跡が・・・・。

「キスマークじゃん！！」悟浄が嬉しそうに叫んだ。
「なにいっ！？」悟空が怒りを露わにする。
「いけませんねぇ、嫁入り前の娘が・・・。」はーっとため息をつく八戒。

「なっ・・もう、離してよっ！」真っ赤になって悟浄の腕から逃げ出す。

「桃花チャンたら、ふしだらな事しちゃって♪」
「ふしだらの固まりの、悟浄君に言われたく無いっ！！」
「悟浄はイイですけど・・桃花までそうでは困りますよ。」
「「八戒・・（ちゃん）」」

「ホントに草庵ってヤツの嫁になるのか？」悟空が真顔で聞く。

「ならないっての！・・・あたしは一生、お嫁には行かないから。」
「・・マジ？」「ん、マジで。」「なんで？」「なんでって・・。」困った。

「ソイツはな、“嫁に行かない”じゃなくて、“嫁に行けない”んだ。本気で貰ってくれるヤツなんか、居るわけねぇだろ。」
「さ・・三蔵っ！アンタってヤツはっ・・・。」なんでこんな男が“三蔵法師”やってるワケ？

三蔵は平然と煙草を吸っている。

「もー・・まぁイイや。今回は迷惑掛けて悪かったよ。みんな、ゴメンねぇ？」

「だから気にスンなって。」
「・・・無理なことは、して欲しく無かったですけどね。」
「俺も、桃花が首絞められててるトコなんか、もう見たくねぇよっ。」

「ん・・・守りたかったから。ね、つい。」

淋しそうに微笑んだ桃花に、
「俺が守るからっ！！」悟空が叫んだ。

「・・・へ？」マヌケな桃花の顔。

「俺がさ、守るから！三蔵も、悟浄も、八戒も、ジープも、桃花も！！俺の大事なモン、絶対守るからっ！！
守って・・・守って、死んだりしないから、俺っ！！」

顔を紅潮させて、一生懸命に訴える悟空。

守って・・・死んで・・・残した大事なヤツに、哀しい想いをさせたりしない！

あの、大桷って言うヤツみたいに――――――桃花を護って、死んで。　あんな悲しそうな顔させたりするモンか！！
「俺、もっともっと強くなって・・みんなを守るからっ！」だから、そんな顔すんなよ・・。

【ゲシッ】・・・三蔵が悟空を蹴り飛ばした。
「って～！？何スンだよ、三蔵っ！？」

「煩せぇ、馬鹿猿。・・なんで、てめぇに守られるんだ？この俺が。」
「・・・だなっ。自惚れるのもイイ加減にしとけよ？」
「僕も守られるだけなのは、不本意ですねぇ。」
「だってさ、悟空ちゃん。」

「えっ・・いや、俺はっ・・。」悟空の手を桃花が握った。「判ってるって。・・・ありがとね、悟空ちゃん。」

こんなに気を使わせていたのかと、驚いた。そして、感謝した。

「行こうっ、悟空ちゃん！」「・・・おうっ！！」駆け出す二人。

「ガキか、アイツらっ。」
「・・仲良しこよしってか？」
「転ばないでくださいね～っ！」
「キューッ」

そして走り出す　　　　大事なモノを無くさないように　　　しっかり握り締めて

“守るモノなんて要らない”　　俺の太陽は　　そう言うけど

俺は　　　俺は　　　　みんな　大事で　　　守りたいんだ

「ちょっ・・悟空ちゃん、危なっ・・！」
「うわああぁ～っ！？」

「・・・やっぱり転びましたよ・・・・。」
「期待通り・・・て事か？」
「あの、アホ共っ・・・！！」　

また三蔵の怒声が鳴り響く――――――――。　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第八話　　　　完　

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