勝手に最遊記

勝手に最遊記

Short Story Nap ―3―


プカーと紫煙を吐きながら悟浄が呟いた。

大騒ぎのランチが終わり、それぞれ休息していた。

片づけを終えた八戒が読書を始め、その膝にはジープがくつろいでいる。

三蔵も眼鏡をかけ、新聞を読み始めた。

「ねぇねぇ八戒ちゃん。・・あそこの木の方に行ってきてもイイ?」
桃花は少し離れた場所にある、大きな木を指さした。

「・・あそこですか?そうですねぇ~。」
多少、距離がある。刺客を撃退したばかりとは言え、また襲ってくるとも限らないのだ。
瞬時に行動を起こせない場所に、桃花だけ行かせるわけにはいかない。

「じゃ、僕がお付き合い・・「俺が一緒に行くって!」
寝そべっていた悟空が飛び起きた。

「あのデッカイ木だろ?登れるかな~って思ってたんだっ。」
「じゃ、お願いしますね。悟空。」
「あたしも登ろうかな~?これでも昔は良く、登ってたんだよ!」

歩いていく二人を見送って、八戒は読書の続きをしようと座った。


「仲、いーのな、あの二人。」ポソッと悟浄が言った。
「おやおや・・悟空にやきもちですか、悟浄?」
「じょーだんっ!大体、俺は桃花に手を出す気なんて、さらさらナッシング!」
うぇ~っと言う顔を作る。

「そうですね~。貴方の恋人になったら大変でしょうね、僕が。」
「・・・なんでお前が?」
「毎晩毎晩、痴話喧嘩して、僕が仲裁する羽目になると思いますから。」
安易に想像できてしまう事が可笑しい。

「なにげに酷いよな・・・。」悟浄が項垂れた。


「うっわぁ~!いい眺めぇ~っ!!」
「マジ、すげー眺めっ!!」
悟空と桃花は木の上に登っていた。

10年ぶりぐらいに木登りした桃花。かなり悟空に助けられて、苦労したのだが
苦労が吹き飛ぶほどの景観だった。

サアァーッ・・と風が吹く。
太陽の光が木洩れ日となって包む。

「・・・なんか、眠くねぇ?」
「うん・・降りよっか?」折角登ったのに、そそくさと降りる二人。
お腹も一杯で、気持ちの良い空気が眠気を誘う。

木の根本で、ゴロンと悟空が寝そべった。
先程居た場所より、やや小高くなって居るので、三蔵達の姿も見れる。

『木陰なら日焼けにもなりにくいしねっ。』桃花がそう思っていると、
横で既に寝息を立て始めた悟空。
大地色の髪が、サラサラと風で揺れている。

『・・・あたしも寝ーようっと。』
悟空の横で、桃花も寝ころんだ。


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