勝手に最遊記

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A Rose Prison ―6―



「ご主人様はお体が弱く、訪ねてくるような友人も居ません。
一泊とは言わず、暫く滞在して頂きたいのです。」
眉根を寄せて、切なそうに三蔵を見る沁紗。

「――断る。先を急ぐ旅だ。金持ち相手に
気を使っている暇など無い。」
マルボロを出し、ゆっくりと火を付ける。

「それでは・・せめて、ご主人様のお部屋で
お話をして頂けませんか?・・・せめてもの慰めに。」

紫煙を吐き出した。
「・・・この煙草を吸い終わったらな。」

沁紗は笑顔を見せて、
「ありがとうございます・・・三蔵様。」
お辞儀をしながら、扉を閉めた。―――――――そして、

「・・・ご主人様が喜ばれます・・・。」
扉の向こうで、深い深い笑みを浮かべて、呟いた。


八戒と悟空の部屋で、皆、トランプに興じていた。

この洋館に麻雀卓があるはずもなく、ポーカーなどの賭事は八戒に敵うはずもなく
4人で呑気に“ババ抜き”で遊んでいる。

「うぅ・・どっちだ??」
目の前に出された2枚のカードに、悟空が苦悶の表情を浮かべる。

「さーてね。小猿ちゃんは、ドッチを選ぶのかな?」
ワザと一枚だけを突きだし、悟浄が挑発する。

流石というか、八戒が一番に上がり、次いで桃花。
悟浄と悟空が残り一組で鬩(せめ)ぎ合っているのだ。

負けたヤツが、“荷物持ち”・・それだけは避けたい。

「~~~~くっ。」
悟空の顔から、汗が噴き出す。妖怪と対峙した時でさえ、こんなに緊張しない。
正に“生きるか・死ぬか”・・・。

『“本気”と書いて、“マジ”と呼ぶ・・・』
半ば呆れつつ、八戒と見守る桃花。

「ホーラ・・男だろ?早く決めろよ。」
賭博で生活費を稼いでいただけの事はある。
余裕を見せびらかしながら、悟浄がカードをヒラヒラさせる。

「うっ・・・うおりゃああぁぁ!!」
目に炎を宿らせながら、悟空がカードを引いたっ――――「はぅあっ!!」

ビシッ・・と悟空が硬直する。

悟空が取ったカードは、「ババ」だった。

悟空がババを、右手に握り締めて固まっているウチに
「んじゃコレね。・・ハイ、上がり~っ♪」

悟浄が悟空の左手からカードを取り、さっさと終わらせた。

「・・・ンガッ!!って、てめーざけんなよっ!?
俺、未だカード切っちゃいないだろ?」

食ってかかる悟空に
「ンなもん知るかって。さっさと決めないお前が悪い。だろ?」
せせら笑って、悟空を見る悟浄に、悟空の怒りが――――――爆発した。


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