勝手に最遊記

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A Rose Prison ―8―


ソファで本を読んでいた聚楓が、顔を上げた。

「・・・邪魔か。」
面白くも無さそうな顔で、三蔵が言った。

「まさか!貴方が来てくれたのに・・邪魔なんてとんでもない。」
聚楓が微笑んで、三蔵に席を勧めた。

部屋の中は薄暗い。

この部屋にはグランドピアノまで置かれている。

電灯の代わりに、キャンドルが部屋の片隅に置かれていた。

そして・・『この匂いは?』

三蔵が顔を巡らせる。


「あ・・気になります?アロマです。出窓に置いているキャンドルが
アロマキャンドルで、薔薇の香りがするんです。」

聚楓が細い指で、出窓を指さした。

「こんなに薔薇に囲まれているのに、アロマキャンドルか?」
少し、皮肉めいた口調で言う。

「えぇ。精神が休まるんです。もちろん、本物の薔薇には敵いませんが。」
美しい顔で苦笑しながら、聚楓が三蔵の前に腰掛けた。


テーブルの上のキャンドルが揺れ、浮かび上がった聚楓の顔に艶やかな影を作る。


「・・・その本物の薔薇も、貴方の前では霞(かす)んでしまいますが。」


三蔵を上目遣いに見た―――――その眼にキャンドルの炎が映り、妖しく揺れる。

「―――――――失礼する。」三蔵が、立ち上がった。・・・・が、

ガターンッ・・椅子から転がり落ちてしまう。

『なっ・・なんだと!?』
足が・・下半身が・・・体全体が・・・動かない。

「てっ・・・てめぇ・・!?」
必死に顔を上げる―――――――声も出せなくなってきた。


聚楓がゆっくり近づいてくる。

その美しい顔に微笑みを讃えながら・・・。

「・・あんな野蛮で、下品で、獰猛な人達と、貴方が一緒に居る事はありません。
此処で暮らせば良いんです。美しい薔薇を愛でながら・・ずっと・・・。」

聚楓が、三蔵の顔に手を沿わせる。

『・・このっ・・クソ野郎!!』
抵抗を試みても、体は自由にならない。

「この僕と・・ずっと・・・永遠に・・。」

聚楓が、三蔵に唇を寄せた――――――――




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