勝手に最遊記

勝手に最遊記

A Rose Prison ―11―


悟空が扉を蹴破った。

「野蛮な人達ですね・・・やはり、貴方が一緒に居るべきじゃない。」

「聚楓っ!?・・・三蔵っ!!」

部屋の奥に、薔薇で体の自由を奪われ、磔にされている三蔵と
妖しく微笑んでいる聚楓の姿が見えた。

「・・コレは、どう言う事なんですか?」
目の前にいる沁紗を見つめながら、八戒が言った。

「三蔵様は、ご主人様と永遠にこの館で暮らすのです。
薔薇を愛でながら・・・。どうか、このまま大人しくお引き取り下さい。」

「ハイ、そーですかってワケにはいかねーのよ、オジョーさん。」
油断無く、沁紗を見ながら悟浄が牽制する。
『妖怪?・・ってワケじゃなそーだけど・・マジ、ヤバイって。』

「三蔵を返せよっ!なんで三蔵がココに居なきゃダメなんだよっ!?」
悟空が如意棒を具現化させる。

「・・・本当に野蛮な人達ね。あの三蔵様は、美しく高貴なお方。
私のご主人様と一緒にいるのが相応しいのよ。あなた方のような下品で、野蛮な人達とは違うわ。
正に、薔薇のようなお方・・「あっはっはっはっはっ!!」

場違いな笑い声に、沁紗が呆気にとられる。

「さっ・・三蔵が、美しく・・高貴ぃ!?」
桃花がゲラゲラと笑う。
「あの鬼畜生臭坊主がっ!!?」悟浄も吹き出す。
「・・・薔薇っ・・薔薇だってさっ!!」
悟空が床をバンバン踏みながら、笑う。
「薔薇と言うより・・・“棘だけ”のような気がしますけどねぇ。」
にこやかに毒舌を吐く。

『・・・アイツらぁ・・・』
怒りの余り、朦朧としていた意識が覚醒してくる三蔵。

涙を流しながら、笑い続ける桃花達に
「おっ・・お止めなさいっ!三蔵様を侮辱することは許しません!」
と、叫んだ。

「侮辱~?本当の事だっつーの。」悟浄が後ろ手に錫杖を具現化する。
「夢見ンのは勝手だけどさ~。巻き込まないで欲しいよなー。」
悟空が如意棒を構える。
「そーそー!坊主のクセに、飲酒・喫煙・博打・暴力・・何でもござれよ?
しかも無闇に発砲するわ、可愛いあたしにハリセン喰らわせるわ・・。」

「誰がっ・・・可愛い・・・んだよっ!」
必死に顔を上げて、ツッコミを入れる三蔵。

「ホラね?殊勝な男性じゃありませんから・・此処に置いていても、
迷惑になりますよ?」八戒が一歩前に出て、
「ですから・・・三蔵を此方に返して頂きます。」
沁紗に詰め寄った。


「・・・沁紗。その方達に、ピアノを弾いて上げなさい。」
微笑みを崩すことなく、聚楓が沁紗に言った。

「ハァ?ナニ言ってンの、お前・・・。」悟浄が呆れたように言う。

それに構うことなく、
「ハイ、ご主人様。」沁紗が八戒達へ、左右の腕を真っ直ぐ伸ばす。

「・・どうぞ、ご堪能下さい。」沁紗の眼が、緑色に変化した。

瞬間、ズゾオオォォッ――――沁紗の白い腕が、太い緑の蔦へと変わり―――――

もの凄い勢いで、八戒達に巻き付く。

「っっつあっ・・!!」
蔦から生えている棘が、体中を蝕み、血を噴き出させる。

「・・・良い肥料、になれるんですから・・・幸せですね。」
聚楓が笑った。


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: