勝手に最遊記

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A Rose Prison ―14―



薔薇の香りが濃厚に漂っているこの庭では、恐らく悟空でさえ、
誰が何処にいるか判らないであろう。

「悟空ちゃ~ん、悟浄く~ん・・。」心細げに呼びかけた。

耳を澄ますと、・・・・・微かに悟空の怒声が聞こえる。

「よしっ・・!」覚悟を決めて、走り出した。


八戒が顔を上げた。
「・・もう、行くんですか?」

――ジャキッ――
「・・・・・・・・。」無言で、銃の安全装置を外す。

体の感覚も徐々にではあるが、戻って来ている。いつまでも休んでいられない。
「あの馬鹿共を探しに行く。」

「・・・判りました。」八戒が微笑んだ。


――――――――ザアシシュッッザシュッ・・・錫杖が宙を舞い、蔓を引き裂く。


「・・・悟浄君!!」悟浄の背中に桃花が呼びかけた。

「・・桃花、出て来んじゃねーぞ。」
背後(うしろ)を振り向きもせず、悟浄が低い声で言った。

足を止めた。
戦闘能力のない自分が出ていっては、悟浄達の負担にしかならない。

そっと回り込み、木の陰から様子を窺う・・・・・・・『っ!?』


異様だった。

ゾワッと肌が粟だった。

大きな・・巨大な・・・『・・薔薇っ?』自分の目を疑う。

深紅の薔薇の花弁の中に、聚楓の姿が見える・・裸の上半身のみだが。

薔薇の周りには棘だらけの蔓が膨大な数で這い回り、鞭のように悟浄に襲いかかる

まるで・・・『まるで、薔薇に取り込まれているみたい・・。』


「うおおおっ!!」
悟浄とは逆方向から、悟空が飛び込んできた。
高いジャンプで、薔薇の中心――聚楓めがけて、如意棒を振り下ろすっ・・・

ザアァグッ・・「かっ・・!」悟空の背中に蔓が突き刺さる。

「悟空ちゃんっ・・!!」思わず叫び声を上げる。

何本もの蔓が、悟空の体をその鋭い棘で、切り刻む。

悟空の血が、蔓を伝って流れていく。

「ナメてんじゃねーぞコラァ!!」悟浄の錫杖を振るいつつ、
薔薇に向かって突進する。

ザシッザシュッ・・・やっと蔓から解放された悟空は、青ざめている。

「ご・・じょ、わり・・。」
「んな事、言ってんじゃねーよ。」悟空の体を抱え、笑って見せる。

「・・・ふふ。もう、観念したらどうなの・・?」
沁紗の声が、響いてきた。



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