勝手に最遊記

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A Rose Prison ―18―


沁紗がその白薔薇を見て、目を剥いた。

「駄目っ・・止めてっ!!その薔薇を・・!!」

沁紗の枯れていく様を、一瞥し、
「説明は後だ。」三蔵が白薔薇を握り潰した。

「ぎゃああぁぁーっ!!」沁紗の悲鳴が上がった。

花弁の中心に居た、聚楓の体が、一瞬にして枯れ果てた。

そして――――――――――――薔薇は跡形もなく、散り消えた・・・・・・・。


「なぁ、アレってなんだったんだよ?」すっかり元気を取り戻した悟空。


あの後・・・庭の薔薇は全て枯れ果て、洋館も何年も人の出入りが、
無かったような様相を呈していた―――――あんなに綺麗に見えたのに。

今は、すっかり霧も晴れ、森の中で休息を取っている。

「狂気に取り付かれた幻・・・。」マルボロを懐から取り出しながら、
面倒くさそうに、言った。

「はぁ?全然っ、話が見えないっスよ?三蔵サマ?」
悟浄は既にハイライトを吸っている。

「・・・・チッ。」不機嫌な顔をしつつ、

「あの白薔薇から、映像(ビジョン)が見えたんだ。」話し始めた。

あの洋館に咲いていたのは・・元々白薔薇のみ。

聚楓は体が弱く、その薔薇を愛でる事だけを、生き甲斐にしていた。

両親が亡くなり・・・桃源郷の異変が訪れたとき、妖怪に襲われた聚楓は

庭でその命が尽きた――――――己の血で、薔薇を真っ赤に染めながら―――――

『・・・もっと生きたかった・・もっと薔薇を愛でたかった・・・。』

聚楓の血を吸った薔薇が、変化した。

聚楓を殺した妖怪を殺し、その血で力を蓄え、聚楓の体を取り込み、仮初めの命を

聚楓に与え、生き続けていた・・・他人の命を養分としながら。


「しかし、聚楓は耐えられなかった。本当に永遠に生きたかった訳じゃない。
・・・止めて欲しいと、白薔薇が俺に訴えてきやがった。」

三蔵は紫煙を吐き出しながら、

「・・・主軸を失った、薔薇は枯れた・・・聚楓の望み通りにな。」

「人形でも、大切にしすぎると、念が込もるって言いますね。」
八戒が頷きながら、
「僕、人形にまつわる恐い話を知ってるんですけど・・・。」

「ぎゃあー!止めろー八戒!!」
「お前が言うと、シャレにならねーんだよっ!」
「・・夜、トイレに行けなくなるぅ・・。」

いつも通りに、騒ぎが始まった。



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