勝手に最遊記

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A Rose Prison ―19―



「ナニやってんの?桃花。」悟浄が不審そうに見る。

「あ・・ははは。いや~薔薇ばっかりだったでしょ?
匂いとかさ・・染みついてるんじゃないかと思って。」

「へー?薔薇って嫌いなのかよ?珍しいな。
女って、薔薇の花束とか好きなんじゃねーの?」
ぷかーっと紫煙を吐く。

「そりゃ、花を嫌う女の子って居ないでしょ?
薔薇も嫌いじゃないけど・・一番は向日葵かなっ!」

「向日葵ぃ?・・・そりゃ、桃花らしいな。」悟浄が思わず笑う。

「えー?なんで~?」小首を傾げると、

「お前には“騒々しい花”がピッタリだ。」
横からしれっと、三蔵がのたまった。

「三蔵!・・そりゃね、確かに向日葵は賑やかな花だけどさ・・。」
思わず戦闘態勢を構える桃花に、
「なぁ、桃花!なんで向日葵が好きなんだっ?」
相変わらず場の空気を読まない、悟空が介入した。

「・・えっとね、あたしが育った村に、沢山の向日葵が咲いていたんだよ?」
嬉しそうに桃花が言った。

「桃花の村に?」悟空が目を輝かす。

「うん!・・別名“向日葵の村”って言われていたぐらい、沢山の向日葵が
植えてあってね・・良く、お姉ちゃん達とかくれんぼしてたんだっ。」

「へぇーっ!俺行ってみたいっ!桃花の姉ちゃんにも、逢ってみたい!!」
素直に言う悟空に苦笑しつつ、

「もう、無いの。村も、向日葵も・・たった一人の家族だった、お姉ちゃんも。」

一気に悟空の顔色が変わる。
「ゴメンっ!!ゴメン、桃花・・俺・・・。」
口ごもり、俯く悟空に、
「いいって!隠す事でも無いけど、言ってなかったんだし?
今どき、珍しい話じゃないでしょ?」
ポムポムと頭を叩く。

「・・・焼け野原。もぉ、なーーーんも無いよ、きっと。」そう言って、笑う。


あたしには、帰る場所も、愛しい人も、待っていてくれる人も、なにも 無い


「・・悟空ちゃん?」
悟空が俯いたまま震えている――――――ガシッ!!桃花の肩を掴んだ。

「桃花っ!旅が終わったらさ、長安に来いよっ!
三蔵や悟浄や八戒も居るぞ!淋しく何か無いぞっ!!」

桃花は言葉もなく、ガクガクと悟空に揺さぶられている。

「だからっ・・そんな淋しそうな顔して、笑うなよっ・・・・!!」

『悟空ちゃん・・・。』胸が熱くなる。
聞きようによっては、もの凄い“口説き文句”になるんですけど・・思わず笑った



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