勝手に最遊記

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Promise ―7―



天蓬がどこから用意したのか、女官の服装をひと揃い持ってきた。

「コレが・・。」受け取った物の、気が進まない。

淡い桜色の華美な服・・・。透ける布で幾重にも重ねられている。
着丈も長く、裾を引きずるようなスタイルである。

「・・なんか・・動きにくそう。」
いつもの服装は――――チュニックの上着に、短めのスパッツ。足下はヒールが
低めのロングブーツを履いている。動き易さを考えている格好なのに・・・・・。

「天界(ここ)ではこの服装が一般的なんですよ。
慣れると思いますから・・。」申し訳なさそうに天蓬が言った。

「あっ・・良いんです!ちょっと戸惑っただけなんで・・。」
只でさえ、迷惑を掛けているのに・・我が侭なんか言えないっ!

着替えてきますと、桃花が寝室に入った後
「金蝉?・・いい加減、諦めてもらませんかねぇ?」
仏頂面の金蝉を見て、天蓬が言った。
「・・・諦めてる。っったく、お前らが面白がってるだけじゃねぇか。」
まーまーと捲簾が割り込み、
「退屈なんか、吹っ飛ぶだろ?」ニヤリと笑う。
「・・・悟空だけで沢山だ。」ウンザリしている金蝉に、

「良いじゃありませんか。悟空も懐いていますし。悟空の面倒を見てくれれば
金蝉の仕事もはかどりますよ?」言い含める様に天蓬が言う。

「うんっ!お姉ちゃんと一緒に遊ぶんだっ!お姉ちゃんね、俺とそっくりな友達が
居るんだって。だから、きっと仲良く遊んでくれるよっ。」

「・・・お前と、そっくりな?」金蝉が訝しげに聞く。

「うん。俺より年上らしいけど・・名前も悟空って言うんだって!
すっごい偶然だよな~っ!」嬉々として言う悟空。

その悟空とは反対に、重苦しい空気が部屋を包む。


捲簾も、天蓬も、金蝉も――――――・・・「金蝉。」天蓬が口を開いた。

金蝉を見据えて、
「金蝉。・・未来の・・これから先のことを、彼女に聞いてはいけませんよ。
彼女にとっては過去の出来事。何をどう聞いても・・未来は変えられません。」

「・・・・・・・・・・。」金蝉は考え込んだまま・・それに構わず、

「僕らに出来る事は・・“今”を、一生懸命に生きる事だけですから。」
その言葉に金蝉が顔を上げた。

「判っている・・。」そう言って、悟空を見る。

捲簾が悟空に話が聞こえないよう、何やら笑わせている。

その笑顔が――――自分の傍から消える日が来るのだろうか―――
今まで感じたことのない“感情”に戸惑いを隠せない。

「あっ!おねーちゃーんっ!」悟空の声に我に返った。

「おーっ!馬子にも衣装じゃねーか。」ニヤニヤと捲簾が眺める。

「ケンちゃん・・ソレってホメ言葉になってないし。」ウンザリと返す桃花。

淡い桜色の衣装は、黒髪に映え―――いつもより、格段に女らしく見せている。
とはいえ、桃花の好みにはあわず・・本人的には『てやんでぇ』状態なのだ。

「いいですねぇ。・・と、帯が解けそうですよ?」
天蓬が指摘した通り、腰に結んだ藍色の帯が解けそうである。

「えっ?あはは・・慣れなくて。んと、こうでいいの?」
慣れない衣装に、悪戦苦闘する桃花に
「んじゃ、俺が結んでヤッから。」捲簾が背後に回ろうとしたが、
「駄目ですよ、捲簾。貴方は解くのが専門じゃないですか。」
天蓬が阻止する。
「天蓬~・・。」力無く、天蓬を恨みがましく見る捲簾。

『ホント、悟浄君達にソックリ。』クスクスと笑う桃花を、
金蝉が複雑な顔で見ていた。


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