勝手に最遊記

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Promise ―9―


桃花の言葉に、たははっと笑いながら
「桜があって、酒があって、美人が居りゃ・・・飲むしかないってな。」

桃花の横に腰を下ろし、おもむろに酒瓶を渡す。
「・・ハイハイ。お酌しろってんでしょ?お世辞言われちゃねぇ~。」
ブツクサ言いながら、捲簾の盃に酒を満たす。

「――――で?何がふざけるなって?」クイッと一気に流し込みながら聞く。

「・・別にぃ。」プイッと顔を逸らす。
確かに捲簾達は・・他の天界人とは違う。それでも話せる問題ではない。

「・・そっ。」捲簾も無理に聞こうとはしない。

無言で酒を接ぎ・・・酒を飲み・・・桜の花びらが舞い散る様を、二人で眺めた。


「何かあったら、俺に言え。」唐突な捲簾の言葉に、振り向いた。

「・・・独り寝が淋しいときは、一緒に寝てやるし。」ニィッと笑う。
「もっ・・ケンちゃん!」ポカッと頭を小突く。

桃花は微笑んだ。こんな所が、悟浄君に似ている・・・。
人一倍、心配して。照れ隠しに、冗談で紛らわす。

「添い寝して欲しい時には、天ちゃんの許可を取ってもらわないと。」
「なっ、なんで天蓬の許可が要るんだよっ!?」
「一応、あたしの保護者になっておりますのでv」そう言って、

「うああああっ!!?天ちゃんの資料探し、手伝うんだったっ!!」
思わず叫んで立ち上がった。

「ケンちゃん!悟空ちゃんを、お願いっ!すぐに行かないと・・。」
走り出そうとする桃花の手を、捲簾が掴んで引き寄せた。

「ケっ・・ケンちゃんっ?」いきなり胸の中に引き込まれて、焦る桃花。
「ヤバイって・・お前、珍しすぎ。」
「なっなっなっ・・!?」『あたしは珍獣なのかっ!?』

スッと捲簾が桃花の顎を捕らえ――――顔を近づけた・・・・【ぶちんっ】

「一人で逝きやがれええっっ!!」ガツーーーッンとアッパーが炸裂した。
倒れた捲簾を睨み、真っ赤な顔で立ち上がった。
「冗談が過ぎると、ろくな事になんないからねっ!!」言い捨てて走り出す。

『・・・全然っ!似てないよぉ~っ!!』やっぱり他人。
悟浄なら、例え冗談でもしない。“女”ではなく、仲間と認めてくれてるから。
悪ふざけもするけど・・大事な悪友で、仲間。
『悟浄くーんっ!!』心の中で叫んだ。


「痛っ・・マジかよぉ~・・・。」捲簾が顎をさすりつつ、起き上がった。
まさかアッパーを喰らうとは・・苦笑する。
本気で手を出そうとは思ってはいなかった。冗談半分だったのだ。
「珍しいからなぁ~。」呟く。

特別、見目麗しい訳でもなく、特別な力が有るわけでもない人間の女・・・・・
かりにも天界人の上に、西方軍の軍大将である自分の頭を小突くような女・・・

「・・・カナリ珍しいんだけど。」言いながら、また手酌で飲み始めた。





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