勝手に最遊記

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Darling ―14―


おぞましい  声がした。

肉塊が。  肉塊の一部が盛り上がり ヒトの顔を形成する。

桃花の背に、悪寒が走った。
「・・・あの男・・・。」次々と自分の仲間を喰らった、リーダー格の男である。

「気色悪りぃ!なんなんだよアレッ!」悟空が如意棒を具現化させる。
「妖気は、ありますが・・何処か不自然ですね。」八戒が真顔だ。
「・・・・・・・・・。」三蔵は無言で凝視する。

『なんだ?オーラーが・・・確か、以前にも・・・。』三蔵が思い当たった。
「サクラと同じだ!あの化け物、式神と科学の融合体・・禁呪で出来てやがる!」

―――悟空達は緊張に包まれた―――禁呪が施されているのならば、一筋縄ではいかない。

「違っ・・あのヒトは人間・・・。」自信のなさに、言葉を切る。確かに人間だった。あの人達。
でも――――――様子が変になって?まるで人間から妖怪に“変化”したみたいに・・・。

「オオオオオ・・オレハ・・ニン、ゲン・・ダアアアッ!!」肉塊が一気に三蔵達へと押し寄せる。

悟空が如意棒を振るい―――八戒が気を放ち―――三蔵が昇霊銃を全弾撃ち込む・・・・それでも。
それでも肉塊は、勢いを弱まらせることなく―――――――――――――三蔵達を飲み込んだ。

「さ・・・さん・・ぞぉ。」桃花がガックリと土に手をつく。冷たい土の感触が、妙にリアルだ。

グジュグジュと肉塊が蠢き・・まるで三蔵達を消化しようとしているように見える。

「・・・あの、生臭坊主が・・簡単に消化されるかっつーの。」皮肉めいた明るい口調が聞こえた。
「・・・・・・・ごじょ・・。」悟浄が言った通り――――肉塊が弾け飛んだ。

―――三蔵達が転がり出る。「・・八戒・・てめぇ、加減しやがれっ。」不機嫌度最高潮だ。
「アハハ。スミマセン。あのまま消化されたくないですし。」笑顔に深みが増している。
「・・・うわっ!俺のマントが溶けてる~っ!!あんの野郎ぉ~っ。」悟空が慌ててマントを外す。

「肉なんだから、小猿ちゃんが喰っちまえばイイんでないの?」本調子を取り戻して来た悟浄に、
「肉は肉でも、あんな気色悪りーの喰えるかよっ!!」反撃しながらも嬉しそうな悟空。

「・・・脅かさないでよぅ。」小声で呟く。――もし、みんなに何かあったら・・あたしは?

『あたしは、どうやって死ねばいいの?』勝手だけど・・・誰かを救って死にたい。自分の為に。

「三蔵っ!・・アイツ・・・。」悟空が驚愕の声を上げた。
内部から気で吹き飛ばしたのに・・・また肉塊が集まり始め、増殖を始めた―――――。

「―――チッ。キリがねぇ。」忌々しそうに肉塊を睨み付ける。
「三蔵。お手を煩わすようですが・・・。」ニッコリと微笑む八戒に、
「止めろ。そのわざとらしい言い方は。」一瞥して、経文を手に取る。

『禁断の汚呪―――――魔戒天浄も効果が薄い・・・が。何らかの道は開けるだろう。』

「・・キヒィ・・オレヲ・・コロコロコロス?ムダ・・ムダアアアッ!」肉塊の顔が、叫ぶ。

「ムダかどうか、殺ってみねーと判んねーじゃん?」すっかり元気を取り戻した悟浄。

―――――肉塊が、嗤い声を上げた―――――「ヒイイッヒヒヒヒヒ!!シラナイノカッ!!」
その言葉に怪訝な顔を向ける。
「ああ?ナニを言ってやがんだ?てめー。」

「ハンパモノッ!ナゼ、キンジラレテルト・・オモウッ!?」嬉しそうに、揶揄する。

悟浄の顔色が変わった――――「禁忌の妖怪だから・・なんだってんだぁ!?」

「トウケイ!トウケイトッタ!・・ハカセ・・イッテタ。ハカセ!!ケンキュウケッカ!」

                 「コドモ、ツクレナイ  タネナシメ」


「・・・・・は。」   悟浄が 止まった。


「・・ンな訳あるかよぉ!!腐れ肉っ!!」悟空が肉塊の顔に目がけて、突進する。
ズブジュウゥ・・・如意棒がめり込み、そのまま肉塊へと取り込まれていく――悟空の体ごと。

「悟空っ!!」――ドオンッドオンッと八戒が気を連発する。
しかし、肉塊に放たれた気が―――――「吸い込まれたっ!?」気を吸収し、さらに増殖をする。
唖然とする八戒に、肉塊の波が押し寄せる。

「・・・・っっあ!!」あがらう術もなく、八戒が飲み込まれた。「八戒ちゃんっ!!」
「チィッ!!」三蔵が昇霊弾に素早く弾を込める。「・・悟浄っ!援護しろっ悟浄!」
「悟浄君!?悟浄君!!」三蔵と桃花の声は、        悟浄に届かない。


―――――――――コレが、禁じられたモノへの   罰 ってワケ――――――――


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