ＨＡＰＰＹ ＢＩＲＴＨＤＡＹ！桃花
盛夏・猛暑・・・そんな言葉では現せないほどの――――――夏日。
折しも今日は大部屋。
一つの部屋に、５人が押し込まれ暑さ倍増、不快指数２００パーセントを振り切っている。
「猿・・うるせーって・・の。」悟浄がダラダラと汗を掻きながら、睨む。
窓を開けても風は入ってこず（入っても熱風）もう夕方になると言うのに
一向に気温が下がらない。
こんな気温では悟浄も出掛ける気にはなれず、皆と一緒に部屋で過ごしている。
「だぁって・・あぢぃんだもんよ～・・。」流石に言い争う元気もなく、力無く悟空が答える。
「・・・・・・・・・・そんなの判ってるって、ごく～ちゃん・・。」
悟空に負けず劣らずの力無い声で、床に座り込んでいる桃花が話に加わる。
「桃花？大丈夫ですか？」
「ハハハ・・・。ぜ～んぜん、だいじょ～ぶじゃないって・・ばぁ。」
八戒に弱々しく答えた。
悟浄と悟空と桃花は――――――椅子に座る元気も無く、床に座り込んでいる。
八戒と三蔵は椅子で・・・他の三人と比べて汗を余り掻いて居らず、涼しげに見える。
「・・・八戒ちゃんと三蔵って・・暑くないのぉ？」恨めしげに桃花が見上げた。
「心頭滅却すれば・・ってヤツですかねぇ？」
「・・・お前らとはデキが違うんだよ。」もはや三蔵の憎まれ口に答える力も無い。
「～～～あたし、お風呂入る・・。」桃花がフラフラと立ち上がった。
「桃花ぁ？何回、水風呂に入る気なんだよ？」悟浄が汗を拭きながら、心配そうに見た。
先程から何回となく、風呂場を行ったり来たりしている。
「だ～って・・汗掻いて気持ち悪い～～。」もう、化粧がどうとか言ってる余裕も無い。
ココが一人部屋なら、風呂の後は真っ裸で涼んでやるのだが・・『んなワケにもいかないッス。』
――――――――――――・・・一応、（まだ）理性を保っている。
「汗は沢山掻いた方が、涼しくなるんだぜ？・・ホラｖ」
「ぎやあああっっっ！！あ～づ～いいぃ～っ！！」
悟浄に背後から羽交い締めにされ、桃花が断末魔の叫び声を上げた。ソコへ悟空が止めに入り、
三人でドタバタと部屋で暴れ回る・・・ソレを三蔵が黙認するハズもなく
「煩せぇ、てめぇらっ！余計に暑くなるだろーがぁ！！」銃を構えたが、
「三蔵？この宿を追い出されると、炎天下の最中・・歩き回る羽目になりますよ？」
「・・・チッ。」三蔵を沈黙させ、悟浄達に深い微笑みを与えた。
少しばかり、涼しくなった（恐くなった）悟浄達は大人しく座り込んだ。
「あ～っ・・夏生まれだからって、暑さに強いワケじゃないのよね～・・。」桃花が呟く。
「桃花って、夏生まれなのか？」悟空が興味深そうに聞いた。
「へ？あ、そうだよ。８月８日なんだけど・・。」
――――――悟浄達の目が点になる―――――――『８月８日？』
「ソレって今日じゃんっ！！」悟空が飛び上がる。
「あ・・そうかもね？」
「そうかもね・・って、何で言わないんだよ？桃花っ。」悟浄が勢い込んで聞く。
「だって～聞かれてないし？別にナニするわけでも・・。」困惑気味な顔を向ける。
「そんな事無いですよ？桃花。何か欲しいモノでもあります？」八戒が優しく問いかける。
「え～？無いよー。お祝いなんてしなくてイイって。涼しくしてくれるなら別だけど。」
「それだけは・・無理ですねぇ。」苦笑する。
悟浄が何やら考え込んでいたが、
「・・ちょっくら出掛けてくるわ。猿、一緒に来い。」
「え～！？・・ちえっ、判ったよぉ。」悟空と連れだって部屋を出ていく。
「・・気ぃ、使わせちゃったかなぁ。」申し訳なさそうな顔の桃花に、
「暑苦しさが減って大助かりだ。・・・尤も、また一つ年増になる女のために、
出掛けるなんて気がしれんがな」
「・・・三蔵。アンタの背中に張り付いてやりたいよ、あたしゃ。」
「やってみろ。・・ぶっ殺す。」
予期せず、殺気渦巻く部屋の中で『・・涼しい、というより・・寒い、ですね。』
八戒が苦笑した。
―――――――とっぷり日が暮れると・・・流石に気温が下がり、過ごしやすくなって来た。
「ただいま～っ！！」悟空と悟浄が荷物を抱えて帰ってきた。
「お帰りー。どうしたの、その紙袋。」
悟空と悟浄が顔を見合わせて笑った。
「ホラよっ！」悟浄がテーブルに紙袋の中身を開けると、
「・・うわっ！すごーい！たっくさん買って来たんだね～花火っ！！」
中身は全て花火。線香花火から、打ち上げ花火まで色んな種類の花火が揃っている。
「桃花がモノは要らないって言うし？花なんて持ち歩けねーし枯れちゃうだろ？」ニンマリと悟浄が笑った。
「花火ならみんなで楽しめるし！イイだろ、桃花っ！？」
「・・うん。すっごく、嬉しいよ。ありがとう。」・・誕生日を誰かに祝って貰えるなんて。
「それじゃあ、涼しくなって来た事ですし出掛けましょうか、三蔵。」
「・・・なんで俺が。」剣呑な眼で、八戒を睨み付ける。
「行きますよねぇ？三蔵？？」
三蔵が自分の周りを見回すと、悟空・悟浄・八戒が囲んでいる。
行かないと言い張れば、自分を担いでも連れていくのに違いない・・・三蔵がシブシブ立ち上がった。
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