勝手に最遊記

勝手に最遊記

Boys Meets Girl


―――――――――――――――三蔵一行は、大きな町へと近づいていた。


「なかなかニギヤカじゃん!・・・美味いモン食えそぉ~!!」嬉々とする悟空に、
「お前の頭ン中は食い物のことしかねぇのか!」悟浄がつっこむ。
「エロ河童の頭ン中は女の事しかねぇだろっ!」後部座席でいつものように大騒ぎを始めた
悟空と悟浄に青筋を立てた三蔵が、
「町の中に入る前に、ココで終わらせてやろうか!!」と銃をぶっ放した。

「「・・・遠慮しときますぅ~・・・。」」小さくなる悟空と悟浄を尻目に、

「ジープはここで変化を解いて下さい。町に入るには目立ちすぎますから。」
何事も無かったかのように八戒が言った。


「よぉ~し!喰うぞぉ~!!」意気揚々と町に入っていく三蔵達。 


町は大勢の人々が行き交い、露店や店が建ち並んでいた。活気にあふれ、人々の顔も明るい。

こんなに賑やかな町は、三蔵達もしばらく見ていなかった。

悟浄が嬉しそうに「本当にニギヤカだよな~。こりゃ美人も多そうだ♪」
八戒が苦笑しつつ、
「美人が多いかどうかは分かりませんが、宿は期待できそうですね。
食料も補充しないといけないですし、しばらく滞在しましょう・・・三蔵?」
「・・・いや、何だか変な雰囲気だ。・・・見てみろ。」

路地の一角に人垣が出来ている。

「何?何~?何??」
露店の肉まんを物欲しそうに見ていた悟空が、興味津々に人垣に近づいた。

人垣は2重3重となっており、身長の低い悟空はなかなか見る事が出来なかったが、
何とか人の間から人垣の中心を覗いて見ると、そこには子供が二人立ちつくしていた。

その子供達はとがった耳、文様状の痣を持っていた。
一瞥して分かる人間外の生物・・・妖怪の子供であった。

その子供達は、取り囲んでいる人間から罵声を浴びせられていた。
「どっから入り込んできやがった!」
「妖怪ごときにオレらの町を滅ぼされてたまるか!!」

妖怪の子供達は涙を浮かべて震えていた。
体のあちこちに擦り傷や打ち身の跡があり、迫害を受け続けていたことが一目で分かった。

「こいつら生かしといちゃコッチが危ねぇ!殺っちまうぞ!!」
一人の声をきっかけに、人々が石を投げ始めた。

「止めて・・止めてよ・・・。」子供達は弱々しくしゃがみ込んだ。

「何だよ!止めろよ!!」悟空が叫んだ。
しかし興奮し始めた人々に声はかき消された。そのうち一人がどこからか木材を持ち出した。

「おらぁ~!死ねぇ~!!」
振り下ろされる木材。悟空が人混みをかき分けて子供を救おうと飛び出すが
『・・・!ダメだ・・間に合わない!!』

子供達に木材が振り下ろされる瞬間、飛び出す陰があった。
ドンッ・・・!鈍い音が響く。

「~~~っ!子供相手に、何すんのよぉ!!」

悟空は目をパチクリさせた。

子供を庇って背中に木材を受けたのは、女だった。

――――――――20歳頃だろうか。
長い黒髪、大きい瞳、形の良い唇・・一見して美人とも言えそうなのだが、顔の真ん中にチョンと付いた
やや上向き加減の鼻が顔全体を美人と言うより、可愛らしい感じにしていた。

「何だぁ?馬鹿なこと言ってんじゃねぇ!そいつらは妖怪だぞ!?
このままにしちゃ、人間のためにならねぇ!殺しておいた方が・・・」
「馬鹿はアンタよ!このバカ男!!」

バカ呼ばわりされた男が真っ赤になり、木材を振り上げた。

「~~っだとぉ!?このアマ、言わしておけば・・・」

「妖怪だってね、みんなが悪い訳じゃない!人間だって、人間を騙したり殺したりするような悪いヤツ、
いっぱいいるじゃない!この子達だって、自我を無くしてる訳じゃないでしょう!?」

「お前、よそ者だろ?」別の男が前に進み出てきた。

「この町はな、徹底的に妖怪を排除する事によって栄えてきたんだ。何にも悪い事していないからって、
今見逃すと後々大変なのはコッチなんだよ!一緒に殺されたくなきゃ、どいてろ!」





© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: