勝手に最遊記

勝手に最遊記

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 狭い山道  視界のきかない夜  降り出した雨

                       最悪とも言える状況下で、刺客に襲われた。

三蔵達が必死に応戦する。    

しかし、いかに三蔵達が強いとは言え――――――――苦戦を強いられていた。


『みんなっ・・・!』桃花は一人、木の陰に隠れているしか出来ない。側にジープが寄り添う。

自分目当ての刺客も多い。何故、自分が?・・その理由が判らないが、捕まってしまえば
皆の負担になるだけ。
その思いから、じっと木陰にしゃがみ込み・・・身を潜めている。


悟空が受け流した剣が、木の幹に突き刺さる。すかさず相手の鳩尾(みぞおち)に如意棒を叩き込む。

悟浄が狭い山道で錫杖の代わりに鉄拳を振るい、迫ってきた妖怪の顎に一撃を喰らわせ、沈める。  

三蔵が的確に昇霊銃で妖怪を消滅させていく。弾切れの場合を考えて、八戒が三蔵の側に付く。
体術で妖怪を叩き伏せながら。


それでも。 それでもなお、妖怪達は数にモノを言わせて―――――三蔵達に突っ込んでくる。

桃花は苛立つ・・焦り。  タダ、隠れている事しか出来ない自分が・・・情けなくて。
食い入るように、三蔵達の戦っている様を眺めていた。


『あっ・・・・!』弾かれたように、思わず立ち上がる。

悟空に叩き伏せられたはずの妖怪が、起き上がった―――――三蔵の背後で。

三蔵は気付いていない。 八戒の死角にあたる位置は、一番後方にいる桃花からしか見えなかった。

妖怪が――――――・・・・三蔵に迫る。  桃花は走り出していた。必死に。

後ろでジープが叫ぶように鳴いたが・・・耳に届かない。

何も。   何も、考えていなかった。


「三蔵っ・・・・・!!」 妖怪が振り上げた剣の前に、桃花が躍り出た―――――――刹那、



―――――――ザシュッ・・・・桃花の視界が、真っ赤に染まった。   三蔵の血で。


「・・・・あ・・・?・・・さん・・・。」  三蔵を庇った筈なのに。 代わりに剣を受けた筈なのに。

桃花の体へと、ゆっくりと倒れ込んでくる三蔵。   背中に手を回すと、ぬるりと濡れた感触。

恐る恐る・・・三蔵の体を抱き留めたまま、自分の手を眺めた―――「・・・きゃああああっっ!!」

桃花の、悲鳴が響き渡った―――――「・・・三蔵っ!!?」悲痛な声で、三蔵を呼ぶ。

三蔵を襲った妖怪が、再度、剣を振り上げたが――――「てっめぇぇっ!!」激高した悟空に殴り倒された。

「三蔵!大丈夫かっ!?」「悟空っ!コイツら片づけるのが先決だっ!」
三蔵を心配する気持ちは、悟浄とて一緒だが先ずは刺客を退けないことには始まらない。

爆発したかのような勢いで、悟空と悟浄が刺客の妖怪達を薙ぎ倒していく。

その戦闘を余所に、桃花は呆然と三蔵を抱えたまま・・・しゃがみ込んだ。「三蔵・・さん・・ぞ・・。」

慌てて八戒が駆け寄ってくる。「・・三蔵!?桃花、大丈夫です!すぐに傷を塞ぎますっ!!」

気を集中し、傷口へ治癒を施す八戒。

倒れて息の荒かった三蔵が、次第に血の気を取り戻しつつある―――――ホッと八戒が安堵の息を漏らす。

「・・もう、大丈夫です。見た目の出血より、傷が浅かったので・・・。」八戒の言葉に頷く桃花。
「うん・・。良かった。三蔵?痛くない?三蔵・・・。」桃花は抱えていた三蔵へ声を掛けたが、

バシッ――――――いきなり、三蔵が桃花の手を振り払った。

「さっ・・・。」  息を呑む。三蔵が、今まで見た事もない冷たい視線で桃花を見ている。


全てを拒絶するかのような、冷たい視線を。   桃花に浴びせながら。


             「てめぇ・・・俺達に付いてくるな。」

そう、言い放った。


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