勝手に最遊記

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Position ―7―




「すんご・・良いお天気ぃ。」恨めしげに桃花は空を見つめた。
気分は最悪・・せめて雨でも降ってて欲しい。

バスローブ姿のまま、大きなベッドに横たわる。スプリングの軋みさえ感じられない高級なベッド。
―――野宿が続いてたから・・・みんなベッドで眠りたいって言ってたよね~・・ソコまで考えて。

「バッカみたい、あたし。」呟く。 
もう一緒に旅は出来ない。あたしは一人。でも、それで良い。今までもそうだった。最初に戻っただけ。


コンコン――――「・・起きてるよ、紅君。」紅孩児が、トレーに朝食を乗せて来た。

「簡単な物しか作れないが。」焼きたてのトーストにハムエッグ。オレンジジュースにサラダまで。

「うわっ・・良いの?こんなの作ってもらっちゃってv」・・案外、イイお婿さんに・・。
「気にするな。それより・・酷い顔だな。」「ッッグッッッ!!?」慌てて顔を隠す桃花。
見なくても判っている。泣き腫らした眼が、どんな事になっているかという事ぐらい・・・。

「食べてろ。タオルを冷やしてきてやる。」そう言って、部屋を出ていく紅孩児。

・・・紅君って、なんでこんなに良くしてくれるんだろう?思わず心に浮かんだ疑問。
恋愛対象とかでないのは明か。そんなのは見ていれば判る。どこか・・たまに、とても切なそうだ。

モグモグ食べながら考えていると、紅孩児がタオルを持って帰って来た。
ソレを受け取り、暫し食事に専念する。紅孩児はその間に乾いた洋服を持って来たりと世話を焼く。

「食べ終わったら、着替えてリビングに来い。」それだけ言って再び部屋を出て行った。
「っ・・んー。」・・・とにかく、いつまでも紅君の世話になれない。自分一人で生きてかなきゃ!
パンを目一杯、口に頬張りながら・・・桃花は気合いを入れた。





「・・・・何時まで寝てやがんだっっ!!」―――――――岩穴に、三蔵の怒声が響いた。

モソモソと悟空が起き出す。 八戒と悟浄は既に起きていたが、何もせず座り込んでいた。

別に悟空も熟睡していた訳ではない。紅孩児の元に居ると判ってからも・・・・
やはり心配で寝付けなかったのだ。

悟空が三蔵を見ると、既に出発の準備は万端のようで。

「・・・三蔵。やっぱり探しに・・「―――――探しに行くぞ。」 凛、とした三蔵の声。

「へっ?」聞き間違い?ポカンとする悟空。 其れは悟浄と八戒も同様で。
「何、間抜けな面してやがるんだ。・・・ジープが居ねぇと旅が出来ないだろうが。」

・・・ジープは桃花に付いて居る・・・だから、ジープを探すと言うのは・・・桃花を・・・

「三蔵!ありがとうっ!さ・・バシイーッン!――三蔵に飛び付いた悟空の頭にハリセンが落とされた。
「煩せぇっ!!湧いてんじゃねーよっ!バカ猿がっ!!」一喝して、

「――――行くぞ。」チラリと八戒達を一瞥し、さっさと歩き出す三蔵。

「・・三蔵!待って・・待ってくれよっ!!」満面の笑みで、三蔵を追いかける悟空。

「・・・・それでは。僕たちも行きましょうか。」立ち上がった八戒。
「よ~やく。三蔵サマもその気になったコトだし?」ニヤリと笑いながら、悟浄も後に続く。

歩きながら、
「でもよ、八戒。三蔵が言い出さなくても、ジープを盾に桃花を探しに行くつもり・・だったんだろ?」
「・・・判ります?ま、三蔵が四の五の言ったところで
桃花の意志を無視して、追い出すような真似はさせませんけど。」・・・爽やか笑顔が眩しい。

『・・コレだよ。だから八戒には敵わねぇっつーの。』ちょっと背筋が寒い悟浄。


歩き出した山道は、昨日の大雨が幸いだったかのように、木々や草花が生き生きと潤っている。
ぬかるんだ道は歩きづらいが、自然と早足になる。

昨夜の強力な妖気が放出された場所へ。  早く桃花の無事な姿を確認したいが為に。


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