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勝手に最遊記
Position ―9―
三蔵に引っ張られるように進んできた山道で・・・暴走した妖怪と鉢合わせした。
刺客とは違い、統率も取れず勢いだけで突っ込んでくる妖怪達。
悟空達の敵では無いが、急いでいる今、煩わしいことには変わりがない。
「さっさと終わらせて・・迷子のお姫様探さねーとなぁ!!」悟浄が怒鳴りながら妖怪に蹴りを喰らわす。
「全くです。いい加減にして欲しいですよねぇ。」少々、いつもより深い笑みを顔に浮かべながら、
「・・・害虫駆除っ!!」木々もろとも、妖怪達を気功で吹き飛ばした。
―――――三蔵は木に凭(もた)れて・・・一人マルボロなぞ吸っている。
「・・・っ、三蔵っ!!てめー楽してんじゃねぇよっ!!」悟浄が妖怪を叩き伏せながら喚いた。
「仕方ないですよ、悟浄。三蔵は余計な労力を使いたくないんですから。・・時間が余計にかかっても。」
――――――八戒の言葉に、三蔵の眉がピクリと動いた。
「・・・・チッ。」マルボロを投げ捨て、経を唱え始める・・・魔戒天浄を発動させる為に。
ヤレヤレと三蔵に気取られぬように、八戒が苦笑を漏らす。『・・全く、素直じゃありませんね。』
其れが三蔵なのだから、仕方ない・・と、諦めてはいるが。
『――――巻き込まれる僕らの身にも、なって欲しいモノです。』・・・心の中で、ため息を付いた。
「――――――命を・・賭けて?」紅孩児が、桃花を見つめる。
「そう。そりゃ、強くもないし?人間の女に何が出来る?って言われたら、困っちゃうんだけど・・。」
自分の言葉に苦笑しつつ、
「でも、人任せにして、自分だけ安全な所に隠れて居るなんて出来ないから。
あたしは精一杯、出来る事をやりたいよ。後悔しない為に、生きている証の為に。」
「・・・そう、か・・・。」紅孩児は脱力した。
『俺が何とかしてやりたい・・などと。無意味だったな、この女には。』・・弱くて、俺より強い。
例え、非力でも―――――自分の“精一杯”を成し遂げようとする女。こんな女だからこそ、三蔵達が・・。
突然、紅孩児が立ち上がった。「・・?どうしたの、紅君・・「キューッ!!」ジープが飛び込んで来た。
「・・どうやら、お迎えが来たようだ。」紅孩児が、桃花に微笑んだ。
「―――なんっつーデカイ屋敷・・・。」悟浄が見上げた。
何とか紅孩児の別荘を探し当てて――――――結界の前に、皆が立ちつくしている。
「入れませんねぇ。何とかなりませんか?三蔵。」術系の結界とは違い、妖力で守られている。
幾度と無く、進入を試みたのだが・・・その度に跳ね返されるのである。
「・・術系じゃねぇしな。力ずくでやるしかねぇだろ・・出来ればの話だが。」そう、余りにも強力な妖力。
このパワーに対して、真っ向から立ち向かうのは分が悪い。
「力ずくなんだな!?・・よぉ~~~っしっ!!」悟空が助走の距離を取る。腕をグルグル回しながら。
「!?・・ちょっ、悟空!?お前、何スンだよっ!?」
「力ずく・・なんだから・・・遠慮なくっ・・・ぶちかますっ!!」
うおおおおぉぉ!!―――――――雄叫びを上げながら、結界に向かって突進する悟空。
「・・バッ、止めろっ・・!」悟浄の制止も間に合わない。
唖然と見守る三蔵と八戒の脳裏に、ひしゃげた悟空の映像が掠めた。
「・・・うおりゃああっ!!」思いっきり、結界へと突っ込む悟空――――悟浄は思わず目を閉じた・・が。
「アッ!?・・うああっ!?」ドザァンッ・・・悟空は結界に当たる事もなく、地面に滑り込んだ。
「・・どう言う事だ?」三蔵が訝しげに見る。 屋敷を守っていた結界が、消えているのである。
「理由なら・・・屋敷の主人に話を聞いた方が。」八戒が緊張を走らせる。
「・・・紅孩児っ!!」悟空の目の前に――――赤褐色の髪をなびかせた紅孩児が立って居た。
「お前達・・・何か用か。」油断無く身構えながら、紅孩児が睨み付けた。
「何か用かって・・なぁ!」悟空が跳ね起きながら、「桃花を返せよっ!!」紅孩児を睨み返した。
「返す?・・ああ、あの人間の女か。返せとは人聞きが悪い。お前達が“捨てた”んだろ?」
ニヤリと笑って、
「俺は只、拾っただけだ。“捨てた”お前達に言いがかりを付けられる筋合いは無いが。」言い捨てる。
その言葉に悟空もグッと詰まった。・・・俺達が・・・違う、俺も・・三蔵だって・・!
「“捨てた”なんて其方こそ、人聞きが悪いんじゃ有りませんか?」八戒が歩み出て、
「ぜひ、桃花本人と話がしたいのですが。」眼が笑っていない笑顔で、紅孩児に詰め寄る。
「・・・フン。逢ってどうするんだ?足手まといなだけの人間の女を、同行させたくはないのだろう?」
「っっ!それはっ・・そんな事はっ・・!」紅孩児は悟空を一瞥し、
「非力なお前達に、ハンデがあっては可哀想だからな。」クッと嘲りの笑いを浮かべた。
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