勝手に最遊記

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Position ―10―



「ああ、そうだ。あんな女を連れていたら、弱い貴様達の致命傷になりかねないからな。
此処に置いていくがいい。」そう言って嗤う紅孩児。

「てめぇ・・・!」三蔵が殺気を迸らせる。

『なっ・・なんか、様子が危ないんですけど・・・。』嫌な汗を掻きながら、桃花が様子を伺う。

紅孩児に“お前は出て来るな”・・そう言われて。離れた場所で、様子を見ているのだが。

桃花の位置からは、話し声は聞こえず―――――ただ、紅孩児と三蔵達との間に
険悪な雰囲気が流れているのが判る・・・ソレは、周りの小動物が逃げ出すほどの雰囲気で。

『まさか・・喧嘩になんか、ならないよね?』元々、敵同士なのだが・・基本的に脳天気思考の桃花。
ハラハラしながら、紅孩児と三蔵達の様子を見ている。


「・・しっかし・・なーんで紅孩児が出張るワケ?桃花に興味でもあんの?」悟浄が横から口を出す。
あくまで戦闘態勢を取りながら。
「別に。人間の女に興味など無い。俺の方こそ聞きたい。捨てた女を取り戻したいのか?」

「だからっ!捨てたんじゃねーって!!」悟空が激高し、
「捨てた捨てたって言うなってーのっ。」悟浄が嫌な顔を向け、
「全く・・心外ですよねぇ、その言われ方。」八戒が三蔵へ視線を送った。

三蔵は無表情で「・・・・俺は、あんなバカ女、どうでも良いんだがな。」マルボロを口に銜えながら、
「――――――――だが。貴様にハンデをくれてやる事もねぇ。
・・・第一、足のジープがアイツにくっついって行ったら旅が出来ねぇしな。」そう言って火を付けた。

その言葉に、悟空・悟浄・八戒の顔に、笑みが浮かんだ。

「三蔵!それじゃっ・・!!」悟空は飛び上がらんばかりに、三蔵へ笑顔を向けた。
「煩せぇな・・・。ジープが居ねぇと旅が続けられねぇっつってんだろうが。・・・勝手にしろ。」
だるそうに紫煙を吐き出す。其れが三蔵流の言い回しである事は、皆、判っていて。
喜ぶ悟空達――――――。その、三蔵達の様子を紅孩児は見ていたが、
「・・・簡単に、俺があの女を渡すと思うのか?」挑戦的に紅孩児が三蔵へ言い放った。

「・・殺るのか?」――――ガチャリッ――――素早く三蔵が、紅孩児へと銃を突きつける。

「――――――そんなモノで俺は殺せんと・・・何度言ったら判るんだ?」怯むこともなく、紅孩児が言う。

「さぁな。・・・貴様が死ぬまでだろ。」当然、悟空達も臨戦状態に入った。


―――――――――――渦巻く殺気と妖気が膨れ上がっいく・・・・・・・「まっ・・待ってよ~っ!」


「「「桃花っ!!」」」ジープと共に駆けて来る桃花。皆、一様に安堵の息を漏らす。

「お願いだから・・・喧嘩はダメだよ!?」慌てて紅孩児と三蔵達の間に割り込む。
流石に脳天気な桃花も、余りの殺気と妖気に危機を感じたらしい。

「また、紅君に助けてもらって・・・。お願いだから、今回は戦ったりしないで!」

―――――そう、言われてしまえば。悟空達も退かざるおえない。

「ねっ?紅君もっ・・・。」背後で悟空達を庇うように両手を広げ、紅孩児を見つめる桃花。

真っ直ぐな桃花の眼を見つめていた紅孩児がフッと笑い、「・・やはりな。お前は其方側の人間だ。」
・・・・・・・・・三蔵達側の人間。その場所が、お前の居るべき場所。

へっ?きょとん、としている桃花に、
「俺の生き方はお前とは平行線だ。交わる事は無いが・・・また、逢うだろう。」

結局は、敵同士・・・。三蔵の所持する魔天経文が牛魔王蘇生の為に必要な物であり、
三蔵達の目的が蘇生の阻止で有る以上―――――――・・・また逢うことになる・・戦うために。

       友と呼ぶ、お前の前で。

「お前に渡したい物がある・・・。」 紅孩児は、ポケットからバングルを取り出した。

「あ、紅君にもらった・・。」昨日、お風呂に入った時・・・外したままだった。

「コレが、お前を“守護”してくれるだろう・・・其奴らでは心許ないからな。」桃花にバングルをはめ、
紅孩児は悟空達に不躾な視線を送った。

「っ!!紅孩児ぃ~っ!!」カッとした悟空が、紅孩児へと突っ込むが・・・
ビュオオォォッッ――――・・・赤い風が視界を奪い、土煙が収まった時には紅孩児の姿は消えていた。


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