勝手に最遊記

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Boys Meets Girl ―6―



「女に用はないよ!死ねぇっ!!」陽欄の体から、もの凄い勢いでチューブが飛び出した。
串刺しにされるぞ!三蔵は昇霊銃を構えた・・・クソッ!駄目かっ・・

刹那―――――ズパアァァッ―――――

桃花に襲いかかったチューブと、悟空・八戒を苦しめていたチューブがバラバラになって落ちる。

「おのれっ・・死に損ないがっ!」陽欄が毒づく。

「このまんま殺られたんじゃ、いい男台無しだろ♪」錫杖を抱えた悟浄が居た。

「悟浄!!」4人が異口同音に叫んだ。

「大丈夫なんですか、悟浄・・。」少しふらつく悟浄の側に八戒が駆け寄った。
「大丈夫だって。ま、貧血気味みたいだケドよ?お前らも、相当ヒドイ顔してんゾ。」
「誰のせいだよー誰の~!!」少しヘタリながらも悟空が喚いた。
「女を見る目がない俺のせいだって言いたいんでしょ?ねー、チェリーちゃんっ♪」
「・・・殺すぞ。」剣呑な眼で、三蔵が悟浄を睨んだ。

一呼吸置いて、つっと三蔵が桃花に近寄った。「?」と桃花が思った瞬間、
スパーンッ!爽快な音が地下室の中に広がった。
「っっったぁ~~いっ!!何すんのよう!?」頭を抱える桃花。
ハリセンを持った三蔵が
「いきなりバカなことしてんじゃねぇ!バカはサルだけで充分だ!!」怒鳴り散らす。

「ふぇっ・・。」目をウルウルさせてる桃花に「三蔵なりの心配の仕方なんで♪」と八戒がフォローする。

フンッ!と背を向けた三蔵に悟浄が苦笑した。

「桃花も巻き込んじまって悪かったな。・・借りはキッチリあの化け物に返してやっからよ。」
「倍返しでなぁっ!」「ま、自業自得ですね。」「・・・殺るぞ。」三蔵・悟空・八戒・悟浄
―――――――――――――――4人が陽欄の前に対峙した。


「フンッ・・・まとめて喰ってあげるわ!」陽欄が叫ぶと、体からもの凄い勢いで妖力が放出された。

「コレは・・。」八戒が目を見開いた。「形態変異(メタモルフォーゼ)!!」「マジかよぉ~!」

陽欄の体が紫色に変色し、どんどん形態を変えていく。

「うわっ・・・気持ち悪ぅ~。」桃花が目を見張る。「感想を言ってる場合か!?退がれっ!」

いまや陽欄の体は地下室の中に収まりきれなくなっている程・・・巨大化している。

「三蔵!一旦、家から出ましょう!このままでは家が潰れます!!」八戒が叫んだ。

言われるまでもない。崩れていく天井の瓦礫が、ドンドン落ちてきているのだ。

「桃花!?何やってんだ!階段を登るぞっ!」「ま、待って!この子達、置いていけない・・!」
桃花が必死に子供達の亡骸を抱えている。

「しょうがねーなっ!」子供を抱えている桃花ごと悟空が抱え上げ、階段を一気に駆け上がる。

「や~っぱ、サルの馬鹿力ってスゴイよな~。」「感心してるな!俺達も出ぞ!」

間一髪・・・・・三蔵達が階段を駆け上がったところで、地下室が崩れ落ちた。
しかし、足下がドンドン揺れだしている。

「ヤバイ・・・早く家から出ないと・・。」なにぶん広い家のため、玄関が遠いのだ。

「・・・壁から離れて下さいっーーーーっはあっ!!」八戒が気功で壁をぶち破った。

一斉に飛び出す三蔵達――――外に出た途端、ドズズゥゥー・・・ン・・。大きな屋敷が崩れた。

「間一髪でしたねぇ。」「アイツ死んだかなぁ?」
「アレで死んだら笑い話だろ。悟空、いつまで抱えてるんだ?」
「エッ。」桃花を抱きかかえたままの悟空は、思わず赤くなった。

「あはは・・ゴメンゴメン。」「あ、あたしこそ・・。」

「何だよ猿!色気づいたのか?」「エロ河童にゃ言われたかねーよ!」
「二人とも喧嘩をしているヒマは無いようですよ。・・来ます。」

屋敷の瓦礫から紫の物体が飛び出す。その姿は・・。

「紫の・・・巨大蟷螂(カマキリ)!?」悟浄が素っ頓狂な声を上げた。
「まさに“男を喰らう”って事ですか」「気持ち悪い・・。あたし虫って嫌いなのよね。」
「・・・だから感想を言ってる場合じゃないって言ってんだろ!?」
「ホント、不味そうだなぁ!」「悟空も呑気に感想言うな!!」


「お遊びはソコまでよ・・・。」本性を現した陽欄がゆっくりと鎌を上げた。

「死ねぃっ!!」両の鎌から繰り出されるのは・・・・・無数の真空波だった。

避けるのは無理だと判断した八戒が、気で防御壁を作る。
「っぁあ!!」防御壁の向こうで光がスパークした。流石に妖力を吸い取られた後では苦しいらしく、
八戒が膝をつく。「八戒さん!」八戒に駆け寄る桃花。

「如意棒ぉぉっ!!」悟空が蟷螂に突進する。ガキイイィィンッ!!鎌と如意棒が交差し、火花が散る。

ジンジンしびれる手を振りつつ「痛ってぇ~!何だよ・・鉄かよ!?」
「しゃやああぁっ!!」悟浄が錫杖を放つ。ガキイィンッ!!あっさりと跳ね返される。
「チッ、喰えそうにもねぇな。」赤い髪を掻き上げながらつぶやいた。

「悟空・悟浄、時間稼ぎをしろ。」肩に掛けている魔天経文を手に取り、三蔵が言った。

魔天経文に効果があるか分からない・・が、やってみる価値はあるだろう。

悟空と悟浄が蟷螂に攻撃を仕掛けているのを見つめ、三蔵が経を読み始める。

「八戒さん、大丈夫!?」
「はい・・大丈夫です。僕も攻撃に加わらないと・・。」よろけながら立ち上がる八戒を支えつつ、
「そんな体で?あたしも何か手伝えればいいんだけど・・。」手頃な武器はないかと辺りを見回す。

「お気持ちだけで十分ですよ。・・桃花さん?」「八戒さんアレ・・利用できるんじゃないかな。」

桃花が指さしたのは台所があったであろうと思われる場所だった。
「・・・!コレは・・・。」八戒の片眼鏡(モノクル)がキラリと光った。


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