勝手に最遊記

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HAPPY BIRTHDAY!八戒


「どうにかって・・・さぁ~。」困り気味の桃花に、
「頼むよ!・・桃花ぐらいだろ?三蔵と八戒に強いのはっ。」悟空も拝まんばかりに手を合わせた。


『・・・・そりゃ、いつもなら・・ね。』二人に両脇からお願いされて、桃花はため息を付いた。

後部座席で、三人がヒソヒソと囁き合う――――ガタガタと乗り心地が良いとは言えない座席の上だが、
今は乗り心地がどうとか言っている場合ではなかった。


運転席と、助手席・・・八戒と三蔵が“冷戦状態”なのだ。

残暑も過ぎて、涼やかな秋風が心地良いこの季節に・・・・ジープの上はブリザード状態である。

何も喋らなくても、ピリピリとした雰囲気がまるで静電気のように八戒と三蔵の間に溜まっている。
そのうち引火して、大爆発を起こしそうな予感が後部座席の三人を(珍しく)無口にさせていた。

『自分が原因でなければ・・・・・仲を取り持つんだけど。』桃花は思い出していた。ソレは昨日の事・・・




―――――まずまず、賑やかな町だった。旅人が珍しいのか、町の人間達が気軽に声を掛けてきた。

それに愛想良く答えるのが、八戒と桃花。悟浄は美人サン中心に愛想を振りまき、悟空は屋台に夢中。
そして三蔵は・・・面倒くさそうに、不機嫌顔で無視を決め込んでいた。

ソレはいつものことで。八戒と共に評判の良い宿を聞き出して、足を進める桃花達。
悟空と悟浄は宿の名前だけ聞いて、町へと繰り出して行った。(悟浄→女性 悟空→町の名物食物)


「あっ。この宿だよ・・三蔵?」振り返れば――――――若い娘達に取り囲まれている三蔵の姿が。

「すごっ!!美形よね~っv」「彼女とか居るんですか?」「あ!私、立候補する~!」「ズルイ!私!!」
キャアキャアと黄色い声に包まれて・・・・みるみる、眉間の皺が増えていく三蔵。

『・・・・発砲しなきゃいいんだけど・・・。」思わず汗が額に浮く桃花。

見れば10代後半とおぼしき女の子達は、もう夏は過ぎましたよ?と、注意したくなる程のきわどい姿で。
胸が半分出ているようなトップスに、太股まで丸出しのミニスカ・・・おまけに化粧まで厚い。

三蔵は(一応)坊主な所為か、露出の多い服装や、派手な化粧をしている女性が大嫌いである。
だから・・・・「煩せぇ!!いい加減にしろっ!てめぇらっ!!」三蔵が銃を取り出し、威嚇した。

『ヤバッ・・・。』思わず青くなる桃花。慌てて八戒が止めに入ろうとしたが、
「キャーッ!かっこいい!!」・・・その声に、ズッコケた。

「本物っ?本物っ?」「うわーっ!撃ってみて!」「私にも触らせて~っ!」・・五月蠅さに拍車がかかった。


『コリャ、三蔵もかたなしだなぁ。』苦笑を漏らす桃花。悟浄君が居れば、引き受けてくれるだろうけど。
三蔵の睨みも威嚇も、エネルギー溢れる女の子(しかも多数)には敵わないらしい。

八戒と視線で『どうしよっか?』と、交わしていると・・・「おいっ!桃花っ!!」三蔵に呼ばれた。

「・・・はい?」珍しい。ちゃんと名前で呼ぶなんて。三蔵を見ると、もの凄い(この世の物とは思えない程)
顔で、此方へ来いと手招きしている。

三蔵を取り巻いている女の子達は『ナニ?あのオンナ!?』・・・敵意丸出しの視線を桃花に注いでいて。
『ううっ!・・行きたくない・・行きたくないよぉ・・』そう思いつつ、三蔵の顔が恐すぎて近づく桃花。

三蔵の側まで行くと、
「さっさと宿に行くぞ!」桃花の手を取り、歩き出す三蔵―――――周りから悲鳴のような罵声が飛ぶ。

「なによーっ!?あのオンナっ!!」「あの程度で、彼女なワケ!?」「ムカツク~ッ!!」
罵詈雑言が背中へと容赦なく浴びせられる桃花。
『なっ・・なんでぇ!?』訳が判らないまま、宿へと向かう。
―――その姿は“恋人同士”というより、“警官と泥棒”のようで。(手首を掴まれている為)

宿へ入るなり、「―――フンッ。」桃花の手首を離し、「八戒、さっさと部屋を取れ。」仏頂面で言い放つ。
『はあぁ~・・・ヒトを利用したワケね・・・ま、イイけどさ。』
チラッと桃花に申し訳なさそうな視線を送った八戒に、肩を竦めて見せた。


三蔵のその態度が、後の事件を引き起こすとも知らず・・・宿にチェックインしたのだった。


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