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勝手に最遊記
HAPPY BIRTHDAY!―5
桃花が木の根に足を取られ・・・・転んだ拍子に捻挫したのである。八戒が助け起こしている間に、
すっかり周りを蚯蚓に取り囲まれてしまった。
「・・ゴメン、八戒ちゃん。」俯く桃花に、
「良いんですよ。どっちにしろ、戦う事になったでしょうし。」言いながら気功を放つ八戒。
ドオンッ・・・蚯蚓達が消し飛ぶ・・・が。次々と地中から這い出てくる。その数は限りなくて。
「これは・・・キリがありませんねぇ。」「笑わないでよっ!この状況でっ!」思いっきり突っ込む桃花。
「でも、桃花はどうやって助かったんですか?」桃花を見付けた時。残骸しか見当たらなかった。
「紅君に貰ったバングル。コレが蚯蚓達からあたしを守ってくれたんだけど。」バングルを外し、
「でも・・こんなに木が多くちゃ、山火事を引き起こしかねないし。」ポケットに入れた。
「そうですねぇ。」察しが付く・・紅孩児が桃花の為に、妖力を吹き込んだのだろう、バングルへ。
正確にはバングルに使われている石・・・ターコイズへと。
元来、ターコイズには“魔除け”の意味がある。『ピッタリですね、桃花には。』
黙ってるだけでも、トラブルを招きそうな――――この“困ったお姉さん”に。
「とにかく・・・一気にやっつけてしまわないと。どうやら分裂しているみたいですから。」
八戒の言葉に目を凝らす桃花――――確かに。
吹き飛んでは肉片が地中に潜っている。土の栄養分を吸収して、巨大蚯蚓へと成長しているようだ。
つまり・・・・やっつければやっつける程・・・数が増すと言う事で。「いやああっ!無限地獄だぁ!!」
頭を抱え、叫びまくる桃花。 そこへ、
「何処に居ても・・・煩せぇ女だな。」背後の草むらから――――三蔵が現れた。
「三蔵っ!」流石の八戒も驚きを隠せない。
「三蔵!?・・うわーいっ!地獄に鬼畜坊主だぁ~っ!!」喜ぶ桃花に一発ハリセンを喰らわせ、
「八戒!話は後だ。時間稼ぎをしろ。」そう言いつつ、経を唱え始める。
八戒が頷き、近づけないよう気功を放つ・・・・・・・・・・・「・・・魔戒天浄っ!!」
一気に。
三蔵から放たれた経文が、蚯蚓達を無に帰していく――――
残ったのは、静けさを取り戻した山の空気で。
桃花が安心して息を吐き出すと同時に、「「何してたんだ(です)?」」咎めるような二人の声。
「いや・・何って・・。」見れば紫暗と翡翠の眼が、桃花を睨んでいて。
「ふっ、二人とも・・喧嘩中なのに息がピッタリねv」エヘヘと笑った見せたが、
「誤魔化すな。」「一人で出歩かないでって・・言ってありますよね?」
不機嫌顔と、眼が笑っていない笑顔を向けられて―――――――桃花は凍り付いた。
「夜まで・・・内緒にしようと思ったんだけど。」ハイ、と八戒に向けて差し出したのは・・・
「桃花?何ですか、コレは?」「・・・・薬草。」
その言葉に三蔵が眉間に皺を寄せた。同じく八戒も。
「何故、薬草なんか・・・。僕が居れば気功で治癒出来ますから、薬草なんて必要ないでしょう?」
「でもぉ・・・気功は、八戒ちゃん自身の怪我は治せないじゃん。」口ごもりながら
「薬草なら・・・八戒ちゃんへのプレゼントになるかなって思って。」訴えかけた桃花。
「・・・プレゼント?」やっと思い当たった。9月21日――――自分の誕生日だと言う事を。
「・・それで。こんな危険な真似を・・・。」ガックリ肩を落とす八戒。理由が理由なだけに、気が抜けた。
「だ、だって!この山なら妖怪が出ないっていうし!!大丈夫だって思ったんだもん!」
「・・・結局、襲われてたがな。」しれっとキツイ言葉を吐く三蔵。ウッと桃花が詰まった。
「んんんんっ・・とにかく~っ!お誕生日、おめでとうっ!!」八戒の眼前に薬草を突き出す桃花。
「あ・・・ありがとう、ございます・・・。」苦笑しつつ、受け取る八戒。
「色気の無ぇプレゼントだな。」「いいじゃないっ!役に立つ物なんだしっ!」痛い所を突かれ、喚く。
「じゃ、山を下りよ?」一歩踏みだし・・・「痛っ!!」座り込んだ。捻挫しているのを忘れていた。
腫れ上がった足首が痛々しい――――――
「しょうがないですねぇ。」てっきり八戒が治癒してくれるのかと思ったら、差し出されたのは背中で。
「・・・八戒ちゃん?」「流石にお姫様抱っこはキツイので・・・おんぶ、ですねv」
「んなっ!?やっ・・えっと、治してくれたら早い・・「僕に気功を使わせるんですか?」
そう言った八戒の笑みは、極上に深く――――「お願いします・・。」桃花は大人しくおんぶされた。
阿呆らしい――――三蔵は一人でさっさと歩き出す。
その背中を見つつ、八戒が桃花をおんぶしてゆっくりと歩き出した。
「八戒ちゃん・・・重くない?」体を強張らせながら、桃花がオズオズと聞く。
「そうですねぇ。桃花が標準の女性の体重より重くても・・・僕は平気ですよv」平然と言われ、
「八戒ちゃあ~ん・・・・怒ってるんだぁ~・・・。」背中で桃花が撃沈した。
その様子が目に見えるようで、クスクスと笑みを零す八戒。きっと背中の桃花は真っ赤な顔だろう。
「あ・・と。コレも、プレゼントなんだけど・・・。」何やらゴソゴソと動き、背中から差し出したのは、
「秋桜(コスモス)・・・・?」少し茎の折れた秋桜を、一輪握っていた。
「ちょっと折れちゃったけど・・・花喃さんに、あたしから。」朗らかな声が、背中から聞こえた。
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