勝手に最遊記

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HAPPY BIRTHDAY!悟浄







「悟浄君の・・・誕生日、かぁ。」 桃花は、軽くため息を付いた。


昨夜遅くに――――――町へと辿り着いた。一人部屋も取れ、グッスリ眠った朝、気が付いたのだ。

11月9日。悟浄の誕生日である。「何、あげよう?」ずーっと悩み続けている。

悟浄と言えば・・・酒か煙草。「絶対、ダメ。」
特に朝帰りした日なんてスゴイ!アルコールとハイライトと・・・香水の(何種類も!)移り香。
朝一番で悟浄に会うと、そのまま殴り倒したくなる。(何回かヤッタけど。)

あんなモノ(酒・煙草)をプレゼントなんてしたくない!止めさせたいぐらいだ。とは言え、
禁酒・禁煙等、するはずもないし・・・・・甘い物も苦手な悟浄。(悟空ちゃんなら巨大ケーキとか)

「お金も無いしね~・・。」幸い、町に滞在中とは言え・・・先立つモノもない。それに・・・・。

天竺が近くなって来た為か、桃源郷の荒廃ぶりには目を見張るモノがある。荒野は文字通り荒れ果て、
小さな村などは人が逃げ出し、廃村と化しているのも珍しくは無い。

この町は、様子が少々違う。傭兵まがいの荒くれ共が、ゾロゾロといる。
話を聞いたところ町の近くに鉱山があり、
桃源郷の異変が起こって働けなくなった鉱夫達が傭兵になったとか。

「一人で行動しないで下さいね。」一行一番のしっかり者に、“しっかり”と釘を差されている。
元々、力自慢の男達である。ならず者と変わらない素行が宿屋でも噂されていた。
「てめぇは黙っていてもトラブルを招くんだろうが。」一行一番の“物騒な仏僧”にまで言われてしまった。

『そりゃまーね・・。』“柄の悪い町”一言で言えば、そんなカンジだ。町を歩く女の人達も、
いわゆる飲み屋のオネーサンみたいな方達が多い。『悟浄君はウキウキと出掛けて行ったけど。』

賭場や酒場が多いこの町は、悟浄にとって格好の息抜きだろう。
『んで、朝帰り・・・。』その辺のオネーサンを引っ掛けて、適当に・・・「そっか!!」大声を上げた。

悟浄君の誕生日にっ・・・お金で買えない“大事なモノ”を、あたしがプレゼントしてやるわっ!!

―――――――――部屋の真ん中で、ガッツポーズを決めた桃花。その眼には炎が燃えていたとか。


「八戒?桃花は??」三蔵と八戒の部屋に悟空が顔を出した。
「自分の部屋じゃないですか?」そう答えながらも首を傾げる。既に時刻は昼前だ。
いつもなら一人部屋でも
「お腹空いたよ~。」悟空バリに空腹を訴えて来る頃だ。

「居ないんだよな。俺がちょっと出て行っている間に来たらしいんだけど・・。」
「悟空と悟浄の部屋に・・ですか?」何となく、嫌な予感を感じる。
「・・・なぜ、判る?」我関せずとばかりに新聞を読んでいた三蔵が、初めて口を開いた。
「なんでって・・。書き置きがあったから。」「「書き置き?」」思わず声が揃う三蔵と八戒。

悟空が読み出した紙には、
☆悟空ちゃんへvチョコッと服を借りちゃうからねvv桃花より。

「・・コレが?・・で、服が無いんだな?」ビシッと眉間に皺の寄った三蔵。
「う、うん。悟浄の服も借りたらしいんだよな。荷物が解かれていたから・・。」
「悟浄の服も・・・ですか。」大きくため息を付いた八戒。笑顔だが、その眼が笑っていない。

「でさ・・部屋にも居ないし。三蔵と八戒なら知ってるかと・・。」言いながら後ずさる悟空。
三蔵の不機嫌オーラーと、八戒のどす黒いオーラーが部屋中に蔓延しているのだ。

「悟空・・・。その書き置きの裏側、見ました?」「へっ?」悟空が裏側にひっくり返すと、
★ぜーったい!!八戒ちゃんと三蔵には内緒だよっ!!

サーッと血の気が引く悟空。
『もっ・・桃花ぁ!!ゴメンっ・・!!!』悟空の脳裏に、復讐に燃える恐ろしい桃花の顔が浮かんだ。


テコテコと町を歩く少年が一人。
時折、立ち止まっては人の往来を眺めている。「・・・ぁ。キレーな女(ヒト)ジャン!」
めぼしい美人を見付けては、「キレーなオネーサンvね、恋人とかって居るの?」ナンパに励んでいる。

「なーに?僕。相手を探してるの?」クスクス悪戯っぽく笑う美女に、
「俺じゃないんだけどぉ。でも、いい男が居るんだぜ?真面目な交際を切実希望中vなんだけど。」
「悪いけど、また今度ねv」手を振って美女が人混みに消えていく。それを見送って、
「・・ちぇっ。なかなか難しいよなぁ。」小声で呟いた。


――――――――――――・・・既にお判りの通り、ナンパ少年は
「ナンパって大変なんだぁ。悟浄君を尊敬しちゃうよ。」・・・・桃花である。

ふーっと軽く息を付いて、道の端っこで座り込む。
化粧も落とし、悟空と悟浄の服に身を包んだ桃花は見た目、女とは思えない。
女人禁制の寺に泊まるため・・・・八戒の提案で、男装させられた時と同じ出で立ちである。
『まさか男装の経験が役に立つとはね。』自らに苦笑する。

女性の姿では柄の悪い男に絡まれ無いとも限らない。万が一、刺客が雑踏に紛れ込んでいたとしても
“男”の姿ならば、見つかることも無い。

本当なら、悟空や八戒にでもつき合ってもらえばいいのだが・・『理由が理由なだけに、ね。』
気が引けた。
マサカ、“悟浄君に恋人をプレゼントしたい!!”・・・・なんて、言えやしない。言えやしないヨ。


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