勝手に最遊記

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HAPPY BIRTHDAY!―4



「・・・で?桃花はさ、なーんで男装してあんなトコに居たワケ?」尤もな悟浄の質問。
「えと・・。お金が無いと、ナンパも上手くいかないって言われて・・。」項垂れる桃花。

「はっ?ナンパって・・お前、その格好で女をナンパしてたの??」ポロリと口からハイライトを落とし、
「や、やっぱ桃花って女が好き・・・「違うわボケッ!!」【ゴンッ】と、悟浄の頭を殴り
「悟浄君に女を紹介しようと思ってっ・・!」思わず本当のことを口走る。しまったと口を押さえても
後の祭り。

「はは~ん。今日が俺の誕生日だから?」と、真っ赤な桃花の顔を覗き込む。大体、判る。
以前、“愛なんて判んねぇ”と、自分が桃花に漏らした言葉。お人好しの桃花の事だ。
なら自分が相手を見付けてやると、意気込んで行動しても可笑しくない。

「でさ・・どんなオンナを俺に紹介しようと思ってたワケ?」
「えっとぉ。美人で、派手で、色っぽくて、ナイスバディで、フェロモン体質なんだけど、
実は古風で浮気もせず、ただ一人の男を待ち続けてくれるような・・「んなヤツ居ねーっつーの!」
ツッコミながらも可笑しくて堪らないと言う表情(かお)の悟浄。

『俺も色んなプレゼントってヤツを貰ったケドよ・・・。』女性には事欠かない悟浄。
特に、八戒と同居するまでは・・・・カナリ派手な暮らしをしていたのだ。
別にめでたいとも思わない自分の誕生日を、女達は好き勝手にお祝いと称して
プレゼントを寄越したモノだ。(中には自分の身体にリボンを巻いたオンナまで居たとか)
しかし・・・・まさか、オンナを紹介しようとした女(一応)は初めてだ。

大真面目で「居ない・・?そうかなぁ?う~・・どうしよう・・。」悩む桃花の顔に、堪えきれず
「クックックッ・・・あっはっはっはっはっ・・・!!」とうとう大声で笑い出す。
「なっ!?もうっ!あたしは真剣に悩んでいるのにっ!悟浄君にプレゼントあげたいからっ。」
ブフゥとむくれる桃花に、
「悪りぃ悪りぃ。桃花チャンが可愛くてサv」と、頭を撫でて「止めんかいっ!デキの悪い弟のクセにっ。」
アッパーを喰らう悟浄。

「イテテ・・・。俺って弟扱いなワケ?」悟浄としても、悟空と同等の立場では納得いかない。
「なら、デキの悪い子供って事で!」フンッと腕組みポーズの桃花。
「子供って・・たははっ・・。」ガックリ肩を落とす悟浄。

『どっちにしろ、ロクなもんじゃねーっての。ま、でも。』

桃花が自分の幸せを考えてくれたことに・・・・『ヤッパ、嬉しいかも。』顔が綻ぶ。

「んじゃーさ?お祝いにつき合ってヨ。さっきオンナと別れちまって・・。」「別れて?アッ!」
合点した―――――あの裏通り!モーテルやら連れ込み旅館やら・・・連立していた。
悟浄は(当然)オンナを連れて、真昼間っからホテルへとしけ込もうとしていたのだろう。

「道理で・・・。あたしを見かけたって訳だ・・。」チロリ~ンと悟浄を睨む桃花。
「うっ!い、いいじゃねーかよっ!?せっかく引っ掛けたオンナと別れてまで
桃花を助けに来たわけダシ?」そう言われてしまえば・・・・桃花としても何も言えない訳で。

「・・判ったわよ!で?何につき合えばイイの?」『それがプレゼントの替わりになればいいケド。』
桃花としては―――――悟浄が喜んでくれればいいのだ。・・・変な要求でなければ。
「そうこなくっちゃ!まずは服から何とかしねーとな。」ウキウキと嬉しそうな悟浄。

・・・・その悟浄の顔を眺めつつ・・・・思わず身震い(?)した桃花であった。


「・・・・遅いですね。悟浄も桃花も。」八戒の静かな言葉に、たっぷりと怒りを感じる悟空。

時刻は既に―――――11時を過ぎようとしている。
昼間、桃花が消えてから何の音沙汰もない。悟浄もしかり。

「・・一緒に居るんじゃ・・。」悟空が消え入りそうな声で呟く。「それも、可能性の一つでしょうね。」
棘が含まれた八戒の言葉が痛い。
別の可能性―――――桃花が危ない目に遭っている可能性も有る・・と言う事を暗に言っているのだ。
それは“探しに行くのを止めた三蔵”の所為と言う、無言の非難を含めて。

当の三蔵と言えば、静かに新聞を(何度も)読んでいるだけで、八戒の遠回しの嫌味にも反応しない。

『桃花っ!!早く・・早く帰って来てくれよっ!!』そう願っているのは、実は悟空だけでなかったりする。


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