勝手に最遊記

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HAPPY BIRTHDAY!三蔵



この小さな町に到着してからと言うもの・・・雨は3日間降り続いている。
当然、ジープでの移動は敵わず足止めを喰っている状態だ。

取れた部屋は、八戒・悟空・桃花の三人部屋と、悟浄と三蔵の二人部屋。
なぜ、このメンツで別れたかというと
「窓も開けられないような状態で、煙草を吸われちゃかなわん!!」尤もな、桃花の意見が優先した。

実は他にも訳がある。
『雨が苦手なモン同士で・・・暗くなられちゃたまらないっての。』雨が苦手な三蔵と八戒。

八戒ならまだ良い。どことなく塞ぎ込みがちにはなるが、他人(ヒト)に害を及ぼすような事は無い。
話し掛ければ笑ってくれるし、表面上は穏やかだ。(有る意味、恐い気もするが)

三蔵は・・・最悪だ。
元々の不機嫌さが――――――200パーセント増量中v と言う感じだろうか。
加えて短気に拍車がかかる。悟空なぞ、捕らえられた小動物のように怯えている。

その両名を、同じ部屋に宿泊させるなんてとんでもない!
数時間のウチに部屋どころか宿が破壊され、運が悪ければ死人が出るかも知れない(マジで)

よって――――三蔵と八戒は別の部屋で。そして同室には(哀れ)悟浄を人身御供に差し出したのだ。


「悟浄君・・・生きてるかな。」桃花が(恐ろしい事を)ポツリと呟く。
「何か言いました?桃花。」椅子に腰掛け、本を読んでいた八戒が顔を上げた。
「うん?何でもないよ。コーヒーでも入れよっか。」僕が、と、立ち上がりかける八戒を制して
「いーのいーの。座ってて。悟空ちゃんも飲むでしょ?」「おうっ!ミルクと砂糖たっぷりでっ!」
いーよね、悟空ちゃんは・・・・体重、気にしないで・・・秘かにため息を付きつつ、手早く湯を沸かす。

「後は、お菓子でも・・・。」クルッと桃花が振り返った時、
【バタンッ】―――――もの凄い勢いでドアが開き、何故か追いつめられた様子の悟浄が居た。

「悟浄君?どう・・「桃花ぁ!!助けてくれっ!!」ワッと桃花に縋る悟浄。
身長180センチ以上も有る大の男が、女に縋っている姿というのは・・・カナリ、情けない。

「も・・もうっ、限界だ!あんな鬼畜坊主と同室なんて、ガマン出来ねーよっ!!」
・・・・その眼は涙ぐんでいて。
ガクガクと体を揺さぶられながら、『そりゃそーだろーなぁ。3日間も一緒だもんねぇ。』苦笑いしてみる。

「笑ってる場合じゃねーっての!こんなショボイ町じゃ遊びに行くトコねーし!
ちょっとでも話し掛けりゃ銃口向けるし!!雰囲気も最悪なんだってばよ~。」
確かに、寂れたこの小さな町では賭場はおろか酒場も無く。雨が降りしきる最中を出歩くことも無い。

小さな宿の部屋で、超絶不機嫌の三蔵と二人っきりで押し込められた悟浄は、身も細る思いだろう。
「・・・判ったってば。あたしが悟浄君と替わるから。」

「「「えっ!?!」」」悟空と八戒と、そして頼んだ悟浄までが驚きの声を上げた。

「だってさ、八戒ちゃんも雨苦手だし?悟空ちゃんも怯えてるし、悟浄君はリタイアだし・・。」
グルッと皆を見回し、
「残りはあたししか居ないっしょ?」「それはそうですが、僕が三蔵と同室でも構わないんですよ?」
『イヤ、それが一番恐いのよ・・。』勿論言えないが、「いーよっ!無理しないで。大丈夫だからv」

『ナニが大丈夫なんだろう・・・・。』そう思ったのは、桃花以外の面々で。

「ダメだっ!桃花を危険な目に遭わせらんねー!猿っ!お前が行けっ!」「ごっ悟浄がガマンしてりゃ
いーんだろうっ!?何で俺が・・「ウルセー!俺は3日間も辛抱したんだよっ。」

二人の言い争いを尻目に、桃花は出してあった自分の荷物をまとめていく。

「んじゃーねっv仲良くしてんのよっ。」その声で我に返った時には、桃花はドアを閉じていた。

「アッチャー・・・。結局、行かせちまったな~。」ドサリと悟浄がベッドに腰掛ける。
「桃花・・三蔵と同室は初めてなんだよな。大丈夫かな・・・。」悟空が不安げに顔を曇らせる。
冷めてしまったコーヒーを口に運びながら、
「大丈夫だと思いますよ。三蔵は、ああ見えても桃花には銃口を向けませんから。」ニッコリ微笑む。

「ヘェ?ナニ、ソレ。そーだっけ?俺と同じぐらい銃口向けられてるかと思ってたけどヨ?」
「俺も俺も!三蔵って女相手でも情け容赦しねージャン!」なぁっ!?と頷き合う二人に、
「“あたしは、悟空ちゃんや悟浄君みたいに避けられないから。”って言ってましたし、」八戒はそう言って
「万が一の事があったとしたら・・例え、三蔵と言えども容赦しませんけどねv」(黒く)微笑んだ。

『ヤベェ・・ココも危ないかもっ。』部屋を渦巻くどす黒いオーラーに、二人は逃げ出したくなっていた。


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