勝手に最遊記

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HAPPY BIRTHDAY!―6


加えて自分と同室である人間の姿が無い・・・・「あのっ・・くそバカ女ああぁ!!」
三蔵が(も)、窓から飛び降りた。

「いい加減にしやがれ!!」男が苛立ちの声を上げた。「アンタ達こそ!返してよ!!金冠!!」
桃花と男達が雨の最中―――――対峙している。

2階から飛び降りた衝撃で、捻挫した。その痛みを堪え、追って来たのだ。無我夢中で。

「大体ね。その金冠を持ってると不幸を呼ぶのよ?
鬼畜な坊主が、拳銃を乱射させながら追いかけて来るんだから!!」・・あながち、嘘ではない。
「ひっ・・やっぱり!バチが当たるんだ!!」男の一人が怯えた声を上げた。
「バカ野郎!そんな訳あるかっ!おい、殺されたくなかったら大人しく帰りな!!」凄む男に、
「はんっ!殺れるモンなら殺れば?そんな度胸が有ればね!!」そう挑発して。・・マズイ。

そっと手首を触る。『忘れてた・・バングル。』風呂から出て――身に付けるのを忘れていたのだ。
バングルが無ければ、多勢に無勢では勝ち目がない。『・・・しかも怒らせちゃったし。』

次々にナイフを取り出す男達―――――『でも。金冠は渡せないし・・・。』逃げ出す事もせず
握り拳を固め、『メリケンサックも無いけど・・諦めない!!』キュッと唇を噛み締めた時・・・

ガウンガウンガウンッ―――――――連射された銃弾が、男達の脇を掠めた。

「うっわあ!!?」「銃弾!?」驚き、ナイフを取り落とす男達。「・・・三蔵。」座り込んだ。

「何やってやがんだ。てめぇは。」明らかに怒気を帯びた三蔵の声。振り向けば阿修羅の如き表情で。
「う・・うへへ。」別の殺意を感じて怯える桃花。そんな桃花を一瞥し、鋭く男達を睨みながら、
「貴様ら。金冠を置いていけば命だけは助けてやる。・・それが嫌なら・・。」ピタリと銃口を向けた。
「たっ助けてくれ~!!」「やっぱりバチが当たったんだぁ!!」一目散に男達が逃げ出して行った。

「――――フンッ。」放り出された金冠を、大事に懐へしまい・・スッパーンッッ!!
特大の(?)ハリセンを桃花に喰らわせた。
「いっ・・痛いっ・・「てめぇ!!こんな危険な真似しやがって!死にてぇのかっ!!」怒鳴り散らした。
「だっ・・だって三蔵・・「だってもクソもねぇ!命張ってンじゃねぇよっ!!」

ちょっと涙目で俯いていた桃花が、「・・ったって・・っじゃん・・。」小声で呟く。「ああ?」
三蔵をキッと睨んで、
「命張ったっていいじゃない!!大事な形見でしょ?誕生日に無くしてどーすんのよっ!!?」
「てめっ・・「あたしはね!あたしには何にも無いの!だからっ・・形見の品がある三蔵が、
すっごい羨ましいよ!?大事に・・してるの知ってるからっ・・だからっ!!」必死の桃花の顔。

そうか・・・コイツ・・・“・・・焼け野原。もぉ、なーーーんも無いよ、きっと”以前聞いた、桃花の村。

桃源郷の異変が訪れて――――いや、桃花の村が焼けたのはもっと前の事だろう。

家族の話など、殆ど聞いた事がない・・・『形見の品も、無いって訳か。』頷ける。
この、バカ正直なお人好しが『三蔵の形見の品は渡さない!!』・・そうやって体を張る事ぐらい。


「・・・ったく、バカ女。」微かな苦笑と共に吐き出された言葉。「さんぞ~。しみじみ言わないでよぅ。」
怒りが解けた空気を感じて、桃花は笑いながら三蔵を見ると・・・「ナニしてるんすか?三蔵サン。」
見れば三蔵が背を向けてしゃがみ込んでいる。

「・・てめぇは。歩けねぇんだろうが。」「はぅ!!」そう言われれば。足首が痛々しく膨らんでいる。
「ででででででも!あたし・・「でももヘッタクレも無ぇ。俺は一人で帰ってもいいんだがな。」
「酷ぇよ三蔵・・。」項垂れた桃花は恐る恐る、三蔵におんぶをされた。




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