勝手に最遊記

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キリ作―SURPRISE



人はおろか。動物さえ、行き通わぬ程の―――――――――・・・・洞窟に。    今、正に。

闇に潜み、復活の息吹を上げんとする者達が蠢いていた。



洞窟の中に燭台が飾られている。揺らめく炎が、僅かに洞窟の中を照らしていた。
「――――――閣下。お呼びで御座いますか?」

炎の光が届かぬ闇から女が一人、抜け出して来た。

髪は長い。濃い藍色の髪はストレートに腰まで届き、毛先の方は緋色に染まっている。瞳も藍色で、やや吊り上がってはいるが
文様状の緋色の痣がまるでアイラインのように目の縁から頬に浮き出ており、彼女の美形の様をより、印象強くしていた。

そして―――――・・・・何より彼女の出で立ちは。 白い肌を惜しげも無く晒すような黒いボンテージファッションで包まれており、
背中には小さめの翼。そして頭にも翼と同じ様な羽が二本、生えている。それらも緋色に縁取られているのが良く似合っていた。


「・・・紅羽(くれは)、か。」

燭台の前に祭壇が置かれている。その祭壇の前で佇んでいた、黒いマントの男が呟くように答えた。


「紅羽しか、居ないんですけどぉ?閣下v」底抜けに明るい声の返答に、思わずガクッとコケながら、
「じゃかましいっ!!お前は雰囲気というモノが判らんのかっ!雰囲気がっ!!」バサアッと長いマントを靡かせつつ、“閣下”が喚いた。
この閣下もビョウ付きのブーツに皮パン・・・黒いボンテージファッションを身に纏っている。

金の短髪を天に向かって立たせており、その顔は・・・・白い。白塗りで、文様を黒い墨で描いていた。

故に――――――――美形かどうか。 それは紅羽でさえ(本人以外)判らないのだ。

「・・まぁ良い。お前を呼んだのは他でもない。我が“闇鴉一族”を復興させる手段が見つかったのだ!」
ふんぞり返りながら閣下が一枚の紙を紅羽に差し出した。その紙には、

[①三蔵一行を抹殺 ②玄奘三蔵法師が所持している“魔天経文”の奪取 ③一行に同行している人間の女“桃花”の拉致。
以上の三項目の一つを達成出来た者に“金・1000万”の賞金。尚、三項目全て達成出来た者には・・

「・・・達成出来た者には、5000万を報奨金として与える・・・。吠登城・城主夫人。た・・たまづら公主・・?」
「たまづらでは無いっ!ぎょくめんだっ!玉面公主っ!!」ペシッと紅羽の頭を閣下がどついた。いわゆるツッコミだ。

「えぇーんっ!閣下がイヂメル~。」「吾輩にウソ泣きは通用せんぞ、紅羽。」ギロッと閣下に睨まれて、紅羽が舌を出した。

「コレが・・・三蔵一行どもの顔写真だ。女は写っとらんがな。」閣下がもう一枚紙を差し出した。
何気無く、受け取った紅羽が、「なっ・・ななっ・・・!!?」紙を握り締め、ぷるぷると震えだした。

「・・・どうした紅羽。ほぉ。写真を見ただけで奴らの力量が判るか?用心しろ。何百という妖怪達をせん滅させて来たと言う。
正面から勝負を挑んだのでは分が悪い。絡め手で奴らを・・「・・・かっ・・かっ・・!!」紅羽がおもむろに顔を上げ、

「カッコイイ~っ!!すんごい美形揃いぃっ!!やだっvどうしよう!?特に~・・この赤毛のロング!!モロ、好みぃ♪」
「・・・紅羽・・・・「彼って超ぉステキvでもぉ、この金髪のヒトも捨てがたいわぁ!ううん、この片眼鏡のヒトも知的なカンジで・・」

「紅羽っ・・「ってゆーかぁ!この可愛い男の子だって将来性を考えるとお買い得よね!でも、・・「ええ加減にせんかあぁいっ!!」
【すぱこーんっ】・・・・紅羽の頭に“トラきちメガホン”が炸裂した。

「酷っ・・道具を使うなんて卑怯じゃありませんかぁ~閣下~っ!!」本気で涙目の紅羽に、
「こうでもせんにゃ、話が進まんだろーがっ!!」メガホンを振り回しつつ、「ソイツらを始末しろって言っとるんだ!吾輩はっ!」
「美形なのに?」「美形でも関係ないっ!話を戻せっ!!」

「・・・つまりぃ、紅羽が三蔵一行とやらを倒せば良いんですよね?」(何だか嬉しそうな)紅羽に、
「そう言うことだ。三蔵一行を倒し、経文と女をたまづ・・玉面公主の元に届ける。そうすれば金・5000万が手に入る。」
ココで閣下が大きく息を吸い込み、

「金・5000万も手に入れば!我が、闇鴉一族の復興も容易い!!散り散りになってしまったメンバー・・いや、
同胞達を探し出し、吾輩の元に集わせる事も出来よう!!うわっははははは!!」
「ACEのお兄様や、ダミアン様とも再会・・・出来るんですよね?閣下!」頬を赤らめて喜ぶ紅羽にウムッと頷き、

「コレを持て。紅羽。」閣下が黒い勾玉を取り出した。「勾玉?綺麗ですけど・・。」黒光りしているソレは、
紅羽の顔を鏡のように映しだしている。

「その勾玉を身に付けておけ。万が一の時、お前を守ってくれるだろう。」そう言って背を向けた閣下。 心なしか・・・・耳が赤い。

「・・・はぁい!閣下vv」勾玉に革ひもを通し、チョーカーのように首に結ぶ。
そして、
「閣下って優しい~vソレで白塗りメークを止めれば、イケ面なのに・・・。」「よっ余計な事を言っとらんで・・!」
白い顔を紅潮させながら振り向いた時には・・・・既に紅羽は姿を消していた。


「・・・・全く、今時の若い娘は・・・・・。」 一人、洞窟に残された閣下の姿が。 やけに、淋しそうであった。  



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