勝手に最遊記

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SURPRISE―4


「お陰でえらい迷惑だ。」ブスッと不機嫌極まりない表情で、マルボロを取り出した三蔵。

「そりゃあ・・・悪ぅござんした!」コチラもまだまだ不機嫌な桃花。「だけど痴話喧嘩ってなによ!?あの説明は無いんじゃない?」

悟浄が桃花に制裁を加えられて・・・・その間に紅羽が入って・・・・大変な騒ぎとなった。(罵声と怒声と悲鳴で←悲鳴は主に悟浄)
宿の主人が何事かと入って来たのを、「悟浄が女を連れ込んで、恋人の桃花がキレた。」と説明して、
何とか宿から追い出されずにすんだのだ。

「妖怪とか何とかって、説明するのも大変じゃないですか。そんなもめ事を持ち込んで欲しくないって追い出されますよ?」
穏やかに諭されて、桃花も黙り込んだ。

「でも紅羽も納得出来なーい!だって悟浄の恋人役って紅羽でも良かったんでしょ?」
「・・・その格好ではちょっと・・・。」八戒が苦笑を浮かべ、「悟浄の趣味、って言えば通ったかも知れませんねぇ。」
「って、おい!俺はノーマルだぞ?SMの趣味は無ぇかんなっ!」・・今の今まで死んでいた悟浄が復活した。

「悟浄っ!良かったぁv紅羽、とぉっても心配したのよ!」途端に飛びつく紅羽。悟浄もヘラッと鼻の下が伸びたのだが、
「じいいぃぃぃ~~~~~っ!!」効果音付きで(?)桃花に睨まれ、慌てて引き締めた。

「・・で?貴様、何の目的で近付いた?」回りくどい事は無用、とばかりに三蔵が睨み付ける。
「目的って・・紅羽、悟浄に一目惚れしちゃったの!」ニコッと微笑みながら、「もちろん、三蔵様や八戒も好きよ?」
だって皆、美形だもーんっvvハートマークを飛ばしまくる紅羽からは、殺気も悪意も感じられない。

「・・・あのねぇ・・・。」はぁ~っと溜め息を付いた桃花に、「こんな色気の無い女を同行させてるより、紅羽の方がイイってば!」
俄然、敵意を露わにした。

「・・・なぬ?」思わず目を丸くさせた桃花。

「だって紅羽は可愛いし!美人だし!色気もある上に、若いのよっ!」若干、二十歳だと胸を張り、
「オマケに、強いのよ?低級な妖怪とはワケが違うんだからv」フンッと鼻息も荒く、桃花を見下すように視線を送る。
「特別、美人でもなければ色気もない。その上足手まといの人間の女より、よーっぽどマシよっ!?」


「っ・・・あ、の、ねええぇぇっ!」テーブルの上に身を乗り出した桃花に、「いやーっ。紅羽、怖いぃっv」怯えて見せて、
ギュギュウッと悟浄に頬をスリ寄せた。

悟浄としては素直に受け入れたいのだが―――ふしゅうぅぅっ・・不穏な雰囲気を醸し出している桃花が怖すぎて、固まったままである。

バチバシッ―――――と、紅羽と桃花の間で火花が散った――――その間、悟浄はおろか、三蔵と八戒も口を挟む隙がない。


―――――――――1分が経過。


「・・放蕩息子を更生させようとしていた、あたしの苦労っていったい・・。」ふぅっと息を吐き、
「・・・・お風呂・・・行って来る・・・・。」影を背負って、フラフラと桃花が部屋から出て行った。

「なんなの、アレ?」目をパチクリさせた紅羽に、「出来の悪い息子を持った、哀しい母親の苦労。みたいなモノですねぇ。」
クスクスと笑いながら八戒が答え、「紅羽さん、誰の命令で僕らを抹殺しに来たんです?」爽やか笑顔で問いただした。

「えっ?どう言うことぉ?」小首を傾げた紅羽に、「部屋に落ちてましたよ。僕らの手配書。」八戒の手にあるのは、
閣下が紅羽に見せた玉面公主の書状―――――「っっっ!!?おっ・・落ちてたぁ!?」サアッと顔色が変わる。

「・・・八戒。判ってんなら、最初から言え・・・。」渋い顔で三蔵が紫煙を吐き出した。
「あはは。スミマセン・・桃花の前で女性を、って言うのもなんですし。」じょじょじょ女性をっ!?女性をどうするのよ!?
『うあーっ!キレーな顔して黒いっ!黒いよ~!!』もはや、紅羽の頭はパニック状態である。

「・・・死ね。」ガチャリ、と。銃口を紅羽に向けた三蔵。「・・・きゃっ・・。」後ずさった紅羽の前に、
「ちょ、ちょーっと待てよ、三蔵!別に危害を加えたワケでもねーし!ソコまでやんなくったってイイだろーがっ。」紅羽を悟浄が庇った。

「お人好しだな、貴様も。」剣呑な目つきで悟浄を睨んだ――――――と、その時・・「たっだいまー!」

バアンッと悟空が思いっ切りドアを開けた・・皆の注意が一瞬、ドアへと向けられた。
その機を逃がさず、「またね!悟浄っ!!」シュッと影が部屋を横切った。


「・・・どうやら逃げられたようですね。」「えっ?何々??」両手一杯に温泉饅頭を抱え、悟空がキョロキョロと見回す。
「別にいーじゃん!何も悪い事しなかったんだしよ。」ヤレヤレとハイライトを銜える悟浄。
「・・・・おい、本当にそう思うか?」手配書を眺めていた三蔵が、おもむろに指さした箇所に書かれていた事は


――――――――――③一行に同行している人間の女“桃花”の拉致。  


「・・・拉致?」悟空が呟いた。




「やっ・・べぇ!!」    全員が、立ち上がった。


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