勝手に最遊記

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HAPPY BIRTHDAY!悟空



季節は、春。

この山を越えれば、町に辿り着く。

「そしたら、悟空ちゃんの誕生日、皆でお祝いしよーねっ!」そう、八戒と相談して。(悟浄は、なし崩し的に。三蔵には聞かず。)
あれやこれや・・・休息中に考えてはニヤけ。悟空に怪訝な顔で問われ。(相当、怪しかったらしい。)
トイレと称してブラリと横道に分け入って来たのだが・・・・「・・まだ、早いような・・。」それ以降、言葉が続かない。

はらり

    はらり  


        ゆっくりと 舞い落ちてくる 花びら

―――――――――――桜・・・・桜の大きな木が。満開に咲き誇っている。

他に咲いている桜の木は、一本も無い。 只、この大木だけが・・・風に花びらを散らしながら、咲いているのだ。
さながら夢の中にいるような・・・・・そんな雰囲気の中。

ゴロン、と寝転がった。『花見にはコレが一番v』

花は下を向いて咲く。だから、花を愛でるには下から見上げるのが一番良い・・・そんな誰かの言葉が脳裏を過(よ)ぎる。

『誰だっけ・・・ま、どうでもイイや・・・。』  目の前には一杯の桜。まるで視界が桜色に染まる様な錯覚。 


頬に・・・・  髪に・・・・・  指先に・・・・花びらの感触を感じて。


スウッと意識が遠のく。夢の世界へと足を踏み入れる時と同じ――――――・・眠い・・・。

桃花はそのまま瞳を閉じた。




・・・・・・・・・・・・・・・ゆっくりと、意識が浮上する。

まるで

     誰かに

           引っ張り上げられているような・・・・・・「こら。いい加減、起きやがれ。」グイッと体を引き起こされた。


「・・・さんぞ~・・・せっかく、いい気持ちで寝てたの・・「誰が三蔵だって?」・・・・へ?


桃花が目を見開けば。


長い、金糸の髪に―――――真っ白な服。 そして、三蔵とそっくりな不機嫌な顔をした・・・「こん・・金蝉・・?」

その名を呟くと同時に―――――――天界での記憶が一瞬で甦る・・・「マサカ・・天界?」

ぐるりと辺りを見回せば・・・桜の木々が立ち並び、気持ちの良い風が吹き吹き抜けていく・・紛れもない、天界。
「なんで・・・来ちゃったの?」首を傾げれば、「コッチが聞きてぇよ。」思わず握り拳を固める金蝉が居た。

「あは・・あはははは。」何だか殴られそうな予感に後ずさる。
「・・チッ。悟空を探しに出て来たが・・お前が“また”居ようとは・・。」金蝉が額を押さえた。


―――――――暫し、沈黙。

「あのさぁ金蝉。こうしてても、どーしようもないって思うのよね。」しょうがなく桃花が切り出す。
「お前な・・軽く言うな、軽く。」ジロリと睨み付け、「大体、どうやって来たんだ。また妖怪絡みか?」
そう言われて。「そう言えば。別に妖怪なんて・・・。」時空鬼なんて居なかった。妖怪なんて・・・

「ぁあ゛~~~っ!!お姉ちゃんっ!!」馬鹿デカイ声が響き渡った。「悟空っ・・ちゃ・・【どおすこぉおいっ】
悟空が桃花に体当たりをカマした。

いくら悟空が小柄でも・・・・その力は半端では無く。しかも重い枷(推定80キロ)を付けたまま突進されて。
桃花が華奢な体格でないにしろ――――――――――「・・・ぐ・・にゅぅ・・・。」潰されるのは、必然であろう。

「お姉ちゃん!お姉ちゃんっ!俺、淋しくって・・・お姉ちゃん?金蝉っ!お姉ちゃんがっ・・!!?」
潰されて意識不明の桃花に、パニックを起こした悟空。その騒がしさに溜め息を付きつつ、
「・・また、厄介なヤツが来たもんだ・・・。」これから何度、溜め息を付く事になるのだろうと。金蝉が苦い笑みを浮かべた。


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