勝手に最遊記

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HAPPY BIRTHDAY!―4




―――――――レシピ本を探すのに3時間。
本の雪崩に遭い、遭難しかけ・・・・息も絶え絶えに本を探し出したのだ。

「・・・天蓬の野郎は何処だっ・・・。」金糸の髪もボサボサで、すっかり疲れ切った金蝉。
「さっき・・厨房借りてくるって・・悟空ちゃんと出て行った・・。」コチラも倒れている桃花。
頭のアチコチにコブが出来ているのは、落下してきた本の直撃に遭ったモノだ。「死ななくって良かった・・。」妙に実感がこもっている。

「皆さん、お疲れさまですv」爽やかな笑顔で、天蓬が入って来た。「天蓬っ・・貴様、部屋ぐらい片づけておけっ・・!」
剣呑な眼つきの金蝉に「心がけておきますね。」さらりと交わし、
「厨房を借り切って来ました。さ、皆さん急ぎましょう。」有無を言わせず部屋の外へと皆を追い出した。


便所ゲタの音を、軽やかに鳴らしながら 先に進む天蓬の背中を見つめ、『・・・あの辺は、八戒ちゃんにソックリだよ・・。』
あの性格の人間が、同時に二人存在して居なくって良かった・・・心から感謝(?)したのだった。


―――――――――「ケーキって、こんなに材料要んのかよっ!?」捲簾が驚愕の声を上げた。


「材料は・・ 卵黄3個、砂糖100g、薄力粉80g、バニラエッセンス少々、バター30g、牛乳・・「ヤメッ!ワケ判んねーよっ!」
厨房の棚から次々と材料を取り出す天蓬に、もうギブアップだと捲簾が投げ出した。

「今さら何、言ってるんですか?まだ、生クリーム200cc、砂糖大さじ2、いちご1パックも要るんですよ?」
半ば強制的に捲廉に材料を手渡していく。

「捲ちゃん、お願いvあたしだけじゃ作れないし。」ウフッと桃花が微笑みながら、包丁をチラつかせた。
「わっ・・わーったっ!ったく、金蝉!てめぇも道連れだかんなっ!!」涙目で捲簾が金蝉に向き直れば、すでに三角巾姿の金蝉が居た。
「・・・文句、有るか?」「無いです・・・。」何気に、『お互いツライよな・・。』
目と目で交わした金蝉と捲簾であった。


「お姉ちゃん!俺、似合ってる??」悟空も張り切ってエプロンとバンダナを着けている。「うわぁ。悟空ちゃん可愛い~v」
三角巾替わりの赤いバンダナが、良く似合っている。エプロンは何処から調達したのか、子供用のデニムエプロンだった。
「お姉ちゃんはエプロンしないの?」悟空がクイクイっと、桃花のチュニックを引っ張る。

「ん・・・ま、汚れて困る服でもないし。」正直な所。妖怪の襲撃に遭ったり、ジープで疾走したり。
そんな毎日を送っていれば、おのずと自分の洋服にも構わなくなる。
『・・・だから色気が足りないって、言われるのよね・・・。』思わず苦笑が浮かんだ。

「桃花ぁ!下界じゃ、お約束なんだろ?」ホレッと捲簾が手渡したのは・・・「コレっ?ドコで手に入れたのよ!?」
桃花が呆れるのも当然で――――――手渡されたのは、白いレースがあしらわれた、いわゆる“フリフリエプロン”

「なんで下界のお約束なのよ?」呆れかえって捲廉を睨み付ければ、「下界じゃ“裸にエプロン”なんだろ?」
妙に眼を輝かせてる捲廉に、「・・・官能小説の読み過ぎじゃああぁっ!!」【ドッカアァンッ―――鉄拳が、炸裂した。


結局、桃花は悟空とお揃いのデニムのエプロンを身に着けた。(で、落ち着いたらしい)

「・・・っつか、パワーアップしてんなぁ。」頭をさすりながら(コブが出来たらしい)捲簾がトホホと桃花を眺めた。
桃花と言えば「・・・て、グワァーッと混ぜんのねっ!?グワアアーッと!!」必死にクリームを泡立たせようと、頑張ってる。

「いつまでも呆けてないで、捲廉もバニラエッセンス入れて、かき混ぜて下さいよ?」天蓬がレシピ本を眺めながら的確に指示を出す。
・・・余談ではあるが、天蓬は“白い割烹着”を着込んでいる。(しかも似合う)

「天ちゃーんっ!この白い粉を振れば良いんだよな?」薄力粉の入った袋を掴んでいる悟空に、
「そうですよ。あ、秤に計って・・」振り向いた天蓬の眼に映ったのは、【ドザアアアアッ】30キロの薄力粉が、床に舞った瞬間であった。

「きゃあーっ!!・・粉がっ粉がっ・・クリームのボウルにいいぃっ!!」「悟空うぅっ!!てめえっ・・!」
「ぅおっ!?金蝉っ!卵液が固まってるぜっ!!?」「わあっ!目が見えないよぉっ・・!」
「卵液は40度前後のお湯で湯煎するんですっ。直接、湯に入れないで下さいっ!しかも熱湯じゃないですかっ!」




・・・・・・・・・・結局、オーブンにケーキの土台が入ったのは・・・・・5時間後のことであった。




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