勝手に最遊記

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HAPPY BIRTHDAY!―完―


「あんだよ?じゃありませんっ!あの者達に余計な干渉をするとはっ・・!!」頭から湯気を出して怒る次郎神に、
「いーじゃねーか。別にどうってコト、無ぇだろう?」しれっとした顔でのたまう。

「なななななっ・・・」そのまま蒸発しそうな次郎神に、「・・どーせ、覚えて無ぇんだ。」スッと真顔になって、

「封印されちまう記憶に・・・もう一つぐらい、“幸せな記憶”が増えたって、良いだろうが。」「菩薩様・・・。」
しんみりと。肩を落とした次郎神に、
「・・・なかなか面白かったしな。」あ~っイイ退屈しのぎになったぜ~・・言いながら自室に向かった。

「・・・菩薩様っ・・・。」先程とは違う意味で。 次郎神が更に肩を落とした。



―――――――――「・・・・・ん・・?」ゆっくりと、目を開けた桃花。


草の柔らかな感触、風の薫り・・・『そっか・・あのまま寝ちゃったんだ・・。』桜の花が綺麗すぎて。

はたっと横に目をやると、「悟空・・ちゃん?」自分の横で、悟空がすうすうと寝息を立てている。
『・・・可愛いv』サラサラと前髪を梳いてやれば、悟空の金精眼が見開いた。

「・・・桃花・・んあっ。」ガバッと跳ね起きた。「いっけねー!三蔵に桃花を探して来いって言われて、探しに来たのに・・。」
「悟空ちゃん?」 「・・・気持ち良さそうだったから・・一緒に寝ちまったぁ。」

悟空の情けなさそうな顔に――――「っ・・くっくっ・・あっはっはっ・・!」桃花が笑い出してしまった。
「何だよ~っ!桃花が悪いんだぜ?昼寝なんてしてっから!」「だぁって桜が綺麗で・・。」「桜?桜なんて咲いてないだろ?」
―――――えっ・・・確かに。桃花が見上げた大木には・・・桜の花など咲いていない。今にも枯れそうな、古い大木。

「あ・・・れ?」首を傾げた桃花に、「寝ぼけたんじゃねぇの?早く行こっ。また三蔵にどやされる・・。」そそくさと悟空が歩き出す。

うん、と頷いて・・・『・・・夢・・かなぁ。 そう言えば、とっても良い夢見たような気がする・・。』
何となく、幸せな気分。

「―――桃花ぁ?」立ち上がらない桃花に悟空が振り向いた。「どうし・・「抱っこv」「はい?」

「悟空ちゃん、抱っこしてvv」「なっ・・何、言ってんだよ桃花っ!?」口をあんぐり開けた悟空に、
「だってー!いい気分なんだもん。抱っこダメならオンブで良いからv」

「はああぁぁ・・・っ・・」悟空が大げさに溜め息を付いた。長年の経験で(?)桃花がこういう風に言いだした時には、
テコでも譲らないのを身をもって知っているから。

『・・て言うかさ、ケガなんかした時にはオンブだって嫌がるクセに・・。』必要な時には甘えないで、何でも無い時に甘える。
「ソレが桃花チャンの面白いトコなのよん?」・・エロ河童もそう言うけど。

「あー・・判ったよ!ホラ、早く行かないとヤべーから。」渋々と言う風に、しゃがんで背中を見せる悟空。
「わーいっv悟空ちゃん大好き~っ♪」嬉々として背中に乗ってきた桃花に、悟空が苦笑した。

―――――――――フワァ・・・・『・・・アレ?』

「な、桃花。甘いモンでも持ってる?」「え~?持ってないし、食べてないよ~?」「・・・そっか。」

いま、確かに・・・甘くって、良い匂いがしたんだ。桃花の体から。


昔・・・にも、こんな甘くって、良い匂いを嗅いだような気がする・・・・幸せな、甘い匂いを・・・



「遅せぇぞバカ女っ!!」既にハリセンを握り締めている三蔵。(すかさず悟空が距離を取る)
「桃花?ケガでもしたんですか?」サッと顔色を変えた八戒。それに首を横に振れば、
「じゃ、ナニしてんの?」興味津々と言う顔で、悟浄が桃花の顔を覗き込む。
「甘えてんのvv」ニッコリと。笑って見せた桃花と、「・・・甘えられてんの。」微妙な顔の悟空。


「~~~~~出発するぞっ!!」相手にしてられない、とばかりに三蔵が歩き出す。


「・・ね、悟空ちゃん。町に着いたら、誕生日パーティしよ?」
内緒にするつもりだったが、『一緒に準備したほうが楽しそう!』・・そう思ったのだ。

「俺の?」「誰の、すんのよ~?」ケラケラ笑いながら、「大っきなケーキ!作ろうね!!」
その話を聞いていた悟浄が、「桃花?ケーキなんて作れんのかよ?」意地悪そうに桃花を見た。

「大丈夫!!作れそうな・・予感がするよっ!!」なぜか自信満々の桃花に、「てめっ・・予感で物を作るんじゃねぇっ!!」
結局、三蔵のハリセンが飛んだ。


「・・・・うんっ。一緒に、作ろうなっ。」

      甘くって  

               幸せな匂い

                      いっぱい・・・・いっぱい・・・・な。








                                完


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