勝手に最遊記

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キリ作―BUD




「・・たまには良いですねぇ。こんなにゆっくりした日も。」八戒が微笑みながら皆にお茶を手渡していく。
「そうだね。買い物も済ませたし・・明日までゆっくり過ごせるね。」コチラも上機嫌な桃花。
―――――――せわしい日々に、ポッカリと空いた休日。と言った所か。

悟空もムシャムシャと菓子を頬張り・・・悟浄は娯楽雑誌を読み耽っている。そして、三蔵は茶を受け取りながら新聞に目を通している・・


「あっ。八戒ちゃん、あの本貸して?」「ええ、良いですよ。・・悟空、ぽろぽろ口から落としてますよ。」「んふっ!?・・悪ぃっ!」
「や~だね、小猿ちゃんてば。お行儀が悪いんでない?」「赤ゴキブリに行儀がうんぬんなんて、言われたかねーよ!」
「・・んだと、コラァ!?」「やるかっ!?」「もうっ!止めてよ・・折角、のんびりしてるのに・・。」
「ああ、全くだ。お前らと来たら・・いつも賑やかしいな。」――――――・・へっ!?


「「「「菩薩っ!!??」」」」・・・・・・・・・全員が、固まった・・・・・・。

「貴様・・何の用で現れやがった。」・・・ちゃっかりと。自分も呑気にお茶を啜っている菩薩に、三蔵が剣呑な目つきで威嚇する。
「ダベッて茶ぁシバキに・・ってコト、有るわけ無ぇだろ。お前らに、預かって貰いたいモンが有るんだよ。」
「預かりモノ・・・ですか?」何だか嫌な予感がして、八戒が身構える。

「警戒すんなよ・・まっ。少々、厄介なモンだが・・。」菩薩がポリポリと頭を掻きながら、「出来ちまったから、よ。」
―――――――――『出来た・・・・?』・・・・・その場に居る、5人に嫌な映像が過ぎる・・・

「お前・・・子供作ったのか!?」悟浄が指を差し、「ココは託児所じゃ有りませんよ?」八戒が真顔で諭し、
「おっ、オカマが子供を!?」産んだのか、産ませたのか・・桃花が悩みの渦に引き込まれ、
「なんでココに預けるんだ?」悟空が尤もな質問を返し、「貴様っ・・・・死にやがれっ!!」三蔵が愛用の銃を取りだした。


「誰が、ガキを作ったって言ったんだ?・・おい、出て来いよ。」菩薩が扉へと声を掛けた。

―――――ガチャ・・・遠慮がちに開いた扉から・・・顔を覗かせたのは。

年の頃は12~3歳前後の少女。長い髪は一つに纏めてあるが・・薄い、藤色で。
切れ長の瞳は濃い、紫。眼が悪いのか眼鏡を掛けている。ほっそりとした手足は白く、小坊主の様な装束を身に付けていた。

眼を伏せながら、そっと扉の前に立った。「可愛いコだろ?俺んトコの、舞姫だ。」ニヤリと菩薩が笑った。
「舞姫・・・?」桃花が少女の顔を覗き込んだが、顔を赤らめ、俯いてしまった。
「成る程・・貴方の血は引いて無さそうですね。」八戒がウンウンと頷く。「そりゃどーいう意味だっ。」そう言って、

「ソイツはな・・・・蓮の花の化身だ。」 その言葉に、 皆が凝視した。 


「蓮の・・花ぁ?」悟浄の声が裏返った。「いや、それにしちゃ色気が・・・【ゴンッ】何気に桃花の鉄拳が飛ぶ。
「蓮の花・・・・。で?なんで俺達が預かるんだ。」チラッと舞姫を一瞥し、厳しい視線を菩薩へと流す。
「んな恐い顔すんなよ。一日でいいんだ。・・西王母んトコで育てて貰おうかと思ったんだが、生憎、所用で今日は居ねぇ。
俺んトコに置いてても面白く無ぇから、暇そうなお前らに預けに来たって訳だ。」

「西王母?」首を傾げた悟空に、「ああ、桃を育ててるヒトでしょ?」そう答えた桃花。
「良く知ってんなぁ~桃花!」悟空が感嘆の顔で。八戒達も不思議そうに桃花の顔を眺めた。
「まっ。雑学王ってヤツ?」へっへーんと威張って見せたが、『・・アレ。なんで知ってるの?あたし。』
思わずハテ?と、首を傾げた。そんな桃花の様子を意味深に見ながら、「ま、そーゆーコトだ。じゃー明日な。」

「ちょっ・・待っ・・・」八戒の呼びかけも虚しく、――――――――ザアァンッ・・菩薩の姿がかき消えた。


後に残されたのは・・・・・皆の沈黙と。 泣き出すのではないかと思うほど、 緊張しきっている舞姫だけであった。


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