勝手に最遊記

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HAPPY BIRTHDAY!八戒Ⅱ



『今日は秋晴れですねぇ・・・。』窓の外を眺めれば、鱗雲が微かに浮かぶ、秋の空。


爽やかな風が頬を撫でていく心地よさに、八戒は読んでいた本を閉じ、顔を上げた。

「っっっからぁ!!俺の事をサルサル言うなって言ってんだろ!?このクソ河童!!」
「サルをサルって言って、ナニが悪いんだよ!?っつか、俺の事だって河童呼ばわりしてんじゃねぇかっ!!」

・・・・いつも通りの言い争い。 加えて、


「煩いなぁ!あたしを挟んで喧嘩すんなってつってんでしょお!?」
「てめぇだって十分、煩いじゃねぇかっ!!」


狭いのに(何故か)大部屋という名前の付いた宿の部屋で。
旅の疲れを癒す為、それぞれが休息に専念する・・・・・・事に、なっていたのだが。


「三蔵だって煩いじゃない!ハリセンを振り回して銃を乱射する!そんなボーズがドコに居んのよっ!?」
「此処に居るだろうが・・此処にっっ!!」  スッパーン!! ・・・と。いつものようにハリセンが、桃花の頭に落ちたと思われたのだが。


「へっへーんっ!!そう毎度毎度、ハリセン喰らってたまるかってのよっ!!」「・・・貴様っ・・・!!」
余程、ハリセンをかわしたのが嬉しいのか【ベロベロバー】しながらベッドの上でピョンピョン飛び跳ねる桃花に、
ぶちぶちぶちいいぃっ ・・・・こめかみに浮かんだ、青い血管の切れる音が聞こえてくる・・と錯覚するような三蔵の(修羅のよう)な表情。


――――――――後は、もう。

狭い部屋に繰り出される(?)大騒ぎ。悟浄、悟空も便乗(と言うより巻き込まれ)した上に、三蔵の怒声と桃花の悪態を吐く声。




『・・・・・・・・・・・・・頭が痛いですねぇ。』


はああぁ・・・と。眼を瞑り、片手を額にあてながら溜め息を付く。


『確か、去年の今頃・・・・そう、僕の誕生日でしたよね。』


“桃花を立派に嫁に出す”――――――――そう、決意したのに。・・・実際は。

バカ騒ぎを横目に、八戒が窓を開けた。そしてスタスタと部屋の出入り口まで歩いて行き―――息を吸い込み、精神を集中させる。

「てめぇは女のクセに、女らしくするって事が出来ねぇのかよ!!?」
「じゃあ最高僧のアンタは、なーんで戒律を守ってないのよっ!!大体っ・・・ 【どっかああんっ】


目も眩むような光が、衝撃と共に部屋の中央を駆け抜けた―――――――ピタッ、と。凍り付いた桃花達・・・・「は、八戒・・・ちゃん?」


扉の前で、いかにも 気孔をぶっ放しましたv と言うポーズで立っている八戒。
やや俯き加減で、表情が見えないのが(非常に)恐い。


「八戒ちゃーん・・?」怖々問いかければ、当の本人は涼しい顔で「・・ちょっと、話があるんです。桃花。」ニッコリと。


「・・ぇ・・え?あ、あたしに??」自分の顔を指差し、後ずさりする桃花へ「遠慮するな、行って来い。」三蔵に肩を掴まれ、
「俺達は大丈夫だ!仲良くやってるから!!」悟空が握り拳を固めて見せ、「桃花・・冥福を祈ってるぜ。」悟浄が目頭を押さえた。


「ちょ・・・ちょーっと!みんなぁ・・「さ。行きましょうか、桃花。」あくまでも爽やかに、穏やかに。
しかし、 絶対逃がさない とばかりに手を握り締められて・・・・桃花は、外へと連れ出されて行った。

遠ざかっていく足音を確認して、「・・・いやぁ~・・八戒のキレかたってマジで恐ぇ。」
助かったとばかりにハイライトを取り出した悟浄と、
「けど、なんで桃花なんだろう?」疑問だが、助ける事は出来ないからと苦笑いした悟空と、
「・・・・関わり合いになるな。・・・・・・命が惜しかったらな。」我関せずと、新聞を広げた三蔵。

何はともあれ、己の身が大事―――――(と言うか八戒に逆らわない)と言う意見が一致した、三蔵達であった。


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