勝手に最遊記

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HAPPY BIRTHDAY!―4




「お嬢さん!お安くしておくよ!!」「・・・あたしに?ですか?」 「桃花っ!」

「ソコの可愛いオネーサンv買ってくんない?」「買っちゃおうかなぁv」 「桃花っっ!!」

「可愛い子ちゃん!イイ仕事が有るんだけど・・・。」「どんなのですかぁ?」 「桃花ぁっっ!!!」




――――――――「・・・・八戒ちゃん?大丈夫?」「ちょっ・・ちょっと疲れました・・・。」
脱力して路地で肩を落とす八戒。

ナンパ目当ての男だけでなく、物売りや、怪しいスカウトの男にまで反応する桃花に八戒は目が離せない。
『こ、これでは買い物もままなりませんね。』せめてジープも連れて来るべきだったと、後悔しても先に立たず。

「・・・休憩しましょうか。」そう言って、若者は入りそうもない(古びた)茶店へと足を向けた。


その茶店のドアを開くと同時に、「危ないんじゃっ!!」飛んできた怒声。


恐る恐る覗き込めば、老人が狭い店の中を「あの子に何かあったらワシは・・・。」ブツブツ呟きながら歩き回っている。
『嫌な予感が・・・・』回れ右で店から出ようとした途端、「おおっ!そこの方っ!!天の助けじゃっ!」ガシッと両肩を掴まれてしまった。




「・・はぁ。お孫さんが。」

兎に角、話を聞いてくれと。その老人―――――茶店の店主・魯王(ロワン)に拝み倒された八戒と桃花。

「お祖父ちゃんに、美味しい物を食べさせてあげるからと言っての・・・もう2時間も帰って来ん。」苦渋の表情を浮かべつつ、
「足腰の立たんワシに代わって、孫を捜して来ては下さらんか!?この通りじゃ!」
深々と頭を下げた魯玉の頼みを無下にも出来ず――――――――・・・・・「判りました。」山へと入る事になったのである。




町からほど近い山・・・・・・・続く山道は一本道で、迷う事はない。
小さな小川や、彩り美しい紅葉。ちょっとしたハイキングがてら、遊びに来るには持ってこいのロケーションだろう。

「僕から離れないで下さいね?」「やだなぁ。こんな一本道で迷子にならないよ。」
周囲の景色を楽しんでいる桃花に、そう言う事じゃないんですけどね、と。小さく溜め息を付いた。

町で妖怪の被害に遭ったと言う人の話は聞かなかったが、妖怪が出ないと言う確証はない。
無防備な桃花を伴って山に入る事も避けたがったが、あの老人に対してまで反応した桃花を置いておくわけにもいかず、
『まぁ・・お孫さんが。それで心配して・・・優しいお祖父ちゃんなんですねv』

かと言って、一人で宿屋へ戻らせる事も出来ず(町中を一人で歩かせられない!)こうして山に入る事になってしまったのだ。


『いっそ、暗示を解きましょうか・・・。』幾度も考えたのだ。だが、『・・・二度と掛けさせてくれないでしょうしねぇ。』
悟浄達にも行った通り、暗示に掛かっていても記憶は全て残っている。
あの桃花 が、暗示に掛かってから、今までの行動を良しと思っているはずがない。

滅多にない機会なのだ。ココで戻しては勿体ない。それに・・『恐いですねぇ・・・素に戻った時の反応が。』苦笑が浮かんだ。





―――――――――秋の夕暮れは早い。暖かい空気が夜の冷たさを帯びてきて、山々の姿まで暗く、静かな物へと変化し始めた。

「なんか・・涼しくなってきたね?もうすぐ夕方・・・「助けてぇっ!」ハッと桃花と八戒が振り返れば、
ザザザザザァッ―――――山の斜面を転がり落ちて来た女の子。

「大丈夫っ?!」駆け寄って抱き起こした。
「・・・助け・・て。妖怪達が・・・」「あなた萌珠(ホゥワン)さんでしょ?魯王さんのお孫さんだよね?
大丈夫!助けに来たんだよ、あたし達は。」
桃花が彼女に話し掛けている間に、八戒が彼女の足に負ったケガの治癒を施す。

「さ、コレで走れますよ。先にお逃げなさい。」「えっ?私・・・あ、立てる・・。」
「桃花も彼女と一緒に逃げて下さい。イイですね?」「え?あたしも?」「ええ、彼女を宜しくお願いします。」柔和な笑顔で背中を押した。

実の所――――――『・・・妖気が確実に近付いて来ましたね・・・。』ヒタヒタと迫ってくる大量の妖気に、少々焦り気味なのだ。


「じゃぁ、行くね。」桃花が萌珠を促し、八戒に背を向けた途端、「見付けたぜぇ!!」ザザザァッ―――妖怪達が斜面を滑り降りて来た。


その数、数十人。
しかも自分と桃花達の間に割り込み、退路まで断っている状況に八戒は心の中で舌打ちした。

「やぁっと捕まえたぜ、お嬢ちゃん。まっ、苦労した分、餌も増えて町までの道も判ったから報われたけどな?」
「やっ・・嫌ぁあっ!!」慌てて逃げようとした萌珠の髪を鷲掴み、「きゃああっ!」ダァンッと地面に叩き付けた。

「お前も余計なケガしたくなかったら、大人しく・・・ 【ガツンッ】 ・・・『あはははは・・・・マジ、ですか?』
八戒が苦笑いを浮かべ――――――――――――妖怪達が目を剥いた。


「こんな可愛い女の子に乱暴してっ・・・ てめぇらぶっ殺すっ!!

メリケンサックをはめ、仁王立ちに立っている桃花。その背後からは怒りの炎がメラメラと燃えまくっている。


『自力で暗示を解いたんですか・・・・。』

やはり、 並の人間 ・・・一般女性とは違うんですねぇ、と。改めて再確認した八戒であった・・・・


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