勝手に最遊記

勝手に最遊記

HAPPY BIRTHDAY!―6




「・・・・・いつっ・・・。」ゆっくり起き上がれば、僅かに痛みが走る。
鳩尾に手をあてつつ、薄暗くなってきた周囲を見回した。


「八戒ちゃん?」思わず目を見張った。

八戒が川に入っているのだ。
小さな川の為、膝を折り曲げバシャバシャと頭から水をかぶっていた――――――「八戒ちゃんっ!!」

慌てて駆け寄り、「なにしてんのっ!風邪引くじゃないっ!!」後ろから八戒を引き起こそうと試みたが、無言のまま水をかけ続けている。

「八戒ちゃんっ・・・!」頭にしがみついて離さない桃花へ、「放っておいて下さいっ!僕に触れたら・・・汚れてしまうっ!!」
八戒が手を振り解こうと暴れる。

「なっ?!何が汚れんのよっ!?・・っつうか、このっ・・・ 馬鹿チンがあああぁっ!!

【バコォッ】 ――――桃花の右フックが八戒の顔面へと炸裂――――勢い余って、バッシャアアアンッ・・・
八戒と共に、盛大に川へと体を投げ込む羽目になった。

「もっ・・桃花っ?!だいじょ・・・「うるさあああいっ!!」ザバーッと、体から流れ落ちる水をものともせず、
「あたしは怒ってんのよっ!何に怒ってるか判ってんの?八戒ちゃんっ!!」グイッと八戒の胸ぐらを掴んだ。


「え・・えっと・・・僕の所為で川に落ちたから?」「違うっ!」

「僕が、汚れている・・とか言ったから?」「違うっっ!!」

「・・・僕が、桃花を殴ったから?」「ちょっと惜しいっ!!」


――――――はあぁ、と盛大な溜め息を付いて、「・・・八戒ちゃんが、あたしを信頼してくれてないからでしょ?」
「・・・それは、どういう・・・・」「ああ、もう!そんなの後後!とにかく川から上がろう?」
ザブザブと水をかき分け、川から上がった桃花と八戒。既に陽は落ち、夕闇が辺りを包んでいる。


日中は温かいが、日の落ちた今では夜気が染み渡るように体温を奪っていく。


「へっくしょんっ!!」・・・些か(?)女性らしからぬクシャミをしつつ、「脱ぐに脱げないしなぁ。早く町まで帰ろうよ、八戒ちゃん。」
取り敢えず、と。グシュグシュ不快な水音を立てるブーツを脱いで八戒を促す。
「あ、はい・・・・」八戒は上半身の服を脱ぎ、少しでも水分を減らそうと服を絞った。

「・・・桃花、さっきの話ですけど・・・」聞きたいような、聞きたくないような。

微妙な顔つきの八戒にチラリと目線を送り、バサッと濡れた髪を一纏めにして、
「だってさ。八戒ちゃんの考えは判るよ?あの人数であたしを守りながら戦うなんて無理だモンね。」
でも、さ。
「・・・・だから、制御装置のカフスを外したんだよね。ソレも判る。あたしが納得してないのは・・・」キッと八戒を睨み付け、

「なんで気絶させる必要があるの?あたしが妖怪になった八戒ちゃんを見て、引くと思ったから?怖がるとでも思ってんの!?」

「・・・・・・・・・桃花。」
「悟空ちゃんに聞いたことあるよ。妖怪になった八戒は、ハンパじゃなく恐ぇって。でも、だから何?あたしには見せられないの?」


「そ、それは・・・・」―――――――貴女は、知らないから


「あたしは、そんなに頼りない?そりゃ戦力にならないけど・・・」


――――――――――制御装置を、外した僕が


「あたしは、八戒ちゃんのどんな姿だって受け入れられるよ?」


――――――――――どんなに残忍で、凶暴で、・・・・・・・・醜悪な、存在か。


八戒の脳裏に、制御装置を外して戦闘した時の感情が甦る――――――肉を切り裂き、内蔵を引きずり出し、のたうち回る妖怪を・・・


・・・・・・楽しんで、殺していた自分を―――――――「・・・・恐いんです。」「八戒ちゃん?」


「タガが、外れてしまったみたいで。ソレこそ、あの時の僕の目の前に、貴女が居たら・・・・殺してしまうかも知れない。」
翡翠の瞳が、揺らぐ。
「血塗れは・・・判っているんですが。ソレでも、貴女にあんな姿は見せたくない・・見せられない。」
己の手を見つめ、爪が食い込むほどに握り締めた。

そんな姿の八戒に眉を顰(ひそ)め、無造作に近付いて
「・・・・っとに、信用無いなぁ。」ピシッと八戒の額にデコピンを喰らわした。


「あたしが酔狂で暗示に掛かってあげたと思うの?信頼してなきゃ、あんな事させない。
それに、妖怪の姿になった八戒ちゃんが・・・あたしを殺すなんて、ぜーんぜん心配してない。っつか、有り得ないし!」
「ですがっ・・・!桃源郷の負のパワーが、僕に影響し始めているかも知れないんですよ?」
「それこそ心配ないって言ってんの!第一、あたしが信頼してるのは誰だと思ってんの?人間じゃない、妖怪の八戒ちゃんなんだよ!」

桃花の手が―――――――八戒の傷に触れる。 そっと、暖めるように。


「悟能じゃない・・・妖怪の、八戒ちゃんを信頼してるから・・・・・」穏やかな目で、八戒を見上げる。
傷に触れている桃花の手を取り、
「もし、僕が暴走したら・・・・?」――――――三蔵が、殺してくれるんでしょうけど、貴女は?


「・・・夕方が良いなぁ。」「・・・は?」

のんびりした口調で、
「シュチュエーション的には、断崖絶壁ね!下はゴウゴウと濁流が流れてるのがいいねぇ。バックは大きな夕日でさ。」
あっけらかんな調子で喋る桃花の意図を図りかねて、「えっと・・桃花?」首を傾げた。

「そーゆートコで暴走して?そしたら・・・「そうしたら?」




「三蔵に殺される前に、一緒に飛んであげる。」


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: