勝手に最遊記

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HAPPY BIRTHDAY!―完―




「ほら。三蔵だってイヤじゃない?自分の仲間を殺すの。あたしだってイヤだよ、そんなの見るのは。」
だから、その前に。三蔵に、余計な枷を負わせる前に――――――――


「一緒に飛んであげるから。大丈夫だよ、ね?」屈託なく、笑う桃花。


その揺るぎない、黒曜石の瞳を見つめ・・・・「じゃ、悟空や悟浄はどうします?飛んだ後で、暴走するかも知れませんよ?」

「うっ?・・うーん・・・・じゃ、条件追加!暴走するなら三人一緒にってコトで!」命は一つしか無いしねー♪なんて。
余りに脳天気な返答に、とうとう八戒が吹き出した。
「・・ぷっ・・くっくっくっ・・そ、そんな都合の良いコト・・・」

「えー?妥協はしないからね!この条件以外は、暴走なんてしちゃダメ!許さないから。」
ぷんすか怒って見せる桃花の顔を見ながら、『・・・結局、暴走なんて出来そうにないですねぇ・・・。』


―――――――――自分達が暴走すれば、惜しげもなく・・・・命を一緒に絶つ。

そんな桃花の覚悟を、八戒は痛い想いで感じていた。



「ふぇっくしょんっ!!・・・・あー寒っ・・・早く帰ろうよぉ。鬼畜坊主が怒り出すんじゃない?」
「・・・誰が鬼畜坊主だって?」

「「三蔵っ!」」暗がりから、三蔵の白い法衣が見えた。続いて、「八戒~!桃花~!大丈夫かぁ~!?」「おっ、居た居た。」
悟空と悟浄の姿が現れた。

「皆・・・なんで?」ポカーンとしている桃花に、「なんでって町中大騒ぎだぜ?妖怪達が攻めて来るっつってな。」
「つーか、風邪引くっての!なんで二人してずぶ濡れなんだよ?」悟浄がシャツを脱いで、桃花の頭に掛けてやった。

「萌珠って女の子と爺さんが、宿屋に来てくれたんだよ。きっと二人で妖怪達を食い止めてるに違いないって。」悟空が八戒を見上げ、
「八戒はともかく、桃花は危ないだろ?ま、悟浄なんかより、よっぽど頼りになるけどな!」ニシシと笑った。

「あっ。猿、テメー!何気に悪口言ってんじゃねーよっ!」「てめーだって猿って言ってんだろっ!」
ぎゃあぎゃあと始まる口喧嘩に、「二人ともぉ!止めてっ・・へっ、へっ、へぇっくしょんっっ!!」派手なクシャミが割って入った。

「バカは風邪引かねぇって言うがな・・・とっとと帰るぞ!」スザッと踵を返して、早々に立ち去ろうとする三蔵へ、


「いやん、三蔵ったらvあたしの体を心配してくれてるのねぇv」


小首を傾げ、(微妙に)挑発する桃花の姿が・・・・・


ビシッビシッ ―――――――こめかみに、怒りマークが血管と共に浮き上がる。


「・・てめぇ・・俺に喧嘩売ってんのか?」
「ひどーい! 愛しい三蔵 に喧嘩を売るわけないでしょう??」悪魔・・あくまで笑顔を崩さず、うふっと微笑んでみせる桃花。


「八戒!貴様、まだコイツの暗示を解いてねぇのかっ!?」「えっ?いや、僕は・・・」言いかけた八戒へ、『しーっ。』
三蔵には見えないように、唇に指をあてる桃花の姿が・・「僕は、解いてませんけどね。」――自力で解いたんでしたよね。


「なっ?!・・・な・・・・」思わず青ざめた三蔵へ、「三蔵~v町まで仲良く帰りましょ?」 不気味な ・・・可愛い笑顔を振りまく。

「煩いっ!寄るなっ!寄るんじゃねぇっ!!」ハリセンを振り回しながら、登ってきた道を慌てて戻る三蔵へ、
「待って~ん!待ってたらぁ~ん♪」ここぞとばかりに追い掛ける桃花。

「俺らも帰ろうぜ!八戒の誕生日だもんな。すんげぇ、ご馳走、頼んで来たから!」
「お前は自分の為だろうよ?」「うるへー!」

悟浄には取り合わないとばかりに、悟空が三蔵を追って駆け出す。


「やれやれ・・・。食欲満載の秋ってか。八戒?どうした?」黙ったままの八戒を、訝しげに見る悟浄。
「いえ・・・何だか無性に嬉しくて。・・・・誕生日をこんなにお祝いして貰って、いいんでしょうかね。」

両手を組んで、地面を見つめる。ソレは、


――――――――悟浄への問いかけと言うよりも、自分への問いかけ。




悟浄の深紅の双眸が、穏やかに八戒を見つめた。「・・・・贅沢なコト、言ってらぁ。」「・・・スミマセン。」




ニヤリと笑った悟浄と、苦笑を漏らした八戒。



『ねぇ、花南。僕は・・・・』脳裏を掠めるのは、花南の優しい笑顔。『僕は、“八戒”として信頼できる友を持ちました。』




いつか、貴女の処に逝けたら―――――――――――――・・・・・沢山、話がしたいですねぇ。




満天の星が、輝き始めた秋の夜に―――――――――「ふぇーっくしょいっ!!」




【風邪引きは間違いなし】・・・有り難くないお墨付きを頂いたような、クシャミが響いた。










                  HAPPY BIRTHDAY!八戒Ⅱ  完


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