勝手に最遊記

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海賊気分でア○ア○サー!―5


ハートの目をしたサンジが、ラブラブ光線を発しつつ叫んだ。

「ゴメンね~サンジ君。手伝わなくて・・」
「そんな!レディに手伝わせるなんて・・モモカさんに喜んで頂けるなら・・」グッとサンジが手を握った所で、
「このエロコック!万年発情してんじゃねーよ。オレらの分なんか用意しねぇクセに・・」背後からゾロの罵声。

「ああ?なんでテメェみたいなガサツな男に、オレの繊細なデザートを喰わせなきゃならねぇんだ?」
「甘いモンが喰いてぇワケじゃねぇ。テメェの根性が気にいらねーんだよ。」
・・今まで、砂糖菓子のように甘い雰囲気を発散していたサンジが、どんどんゾロとの会話で凶悪な空気に変えていく。

「おろすぞテメェッ?!」「うっせぇエロコック!!」

バチバチバチィッ―――――― 発火しそうな火花を散らし、睨み合うゾロとサンジ―――そこへ、

「ねっサンジ君!早くデザートが食べたいなぁ~」割って入った桃花の声。「ハーイ!モモカすわぁ~んv」ゾロとの険悪な空気から一変、
ラブコックへと変身し、くるくる回りながらキッチンへと駆け込んで行った。

「…ケッアホらしい。」未だ怒気の冷めないゾロに、「まぁまぁ。あんまり怒るとハゲちゃうよー?ゾロロンv」茶目っ気タップリに桃花がつっこんだ。
「誰がゾロロンだ、誰がっ!」「じゃあゾロリン?それともゾロピーv」「止めろっ!気色悪いっ!」
いつの間にか桃花のペースに巻き込まれ、サンジへの怒りが消失してしまうゾロ。


「…あの人面白いわね」「なんか慣れてるって感じよね~」ロビンとナミが顔を見合わせた。
サンジとゾロの喧嘩を止め、尚且つゾロの怒りも消してしまった桃花。
女の子に弱いサンジならともかく、強面のゾロに初対面からつっこめる人間は多くない。
…まぁ桃花にしてみれば、日常と何ら変わりは無いのだが(三蔵で日々慣らされている)











――――――夕闇がゴーイングメリー号を包む…「う、わぁ…」感嘆の声を上げたまま、桃花は固まってしまった。


幾重にも重なり打ち寄せる波の一つ一つに夕日が煌めき美しい。桃源郷では見る事のなかった景色…「いー夕日だろ~?」得意げな声がかけられた。

「ルフィ君!」船首に跨がって、夕日を真っ正面から受けている。「うん!こんなの初めて見た。」素直な桃花の感想に笑い、「特等席で見せてやる!」「…へ?」

特等席の意味を考える暇も無く、ビョビョビョーンと伸びてきた腕に掴まれ「ギャアッ?!」


視界が回転し――――――――次の瞬間、ストンと降ろされていた。ルフィの前―――――船首の先に。
「わ…」目の前に広がる大海原。遮る物は何も無く、遥か彼方の水平線と沈み行く太陽のみ。
真っ正面から受ける夕日に、自分も染まってしまうような気持ちになる…
「スゲーだろ?オレの特等席だ!」「うん。ここで見る方が何倍もスゴイ!」実際、足元から響く波の音と体に吹き付ける潮風は、船上に居るよりも直に感じる。

「海って大きいねぇ。果てって有るの?」「果て?サァ…オレも見た事ねぇなぁ~」難しい話は苦手だとポリポリ頭を掻きながら、
「果てが有るのか分からねぇけど、オレはこの海で海賊王になる!」どどーんとルフィがいつもの様に胸を張ったが
「…カイゾクオウって何?」聞き返されてカックンとクビを折った。「海賊王ってのは海賊の中で1番強いヤツだっ!」…大分説明をはしょった感は有るが、「成る程!」
ルフィと同じく(?)感覚派の桃花には何となく通じたらしい。



「海賊王か…良いねぇ~若人は。」「何だぁ?お前にだって夢とか有るだろ?」
「夢…」―――――――自分の夢?

「ぇえっと、桃源郷に平和を取り戻す事、かなぁ。」「フーン。つまんねぇの」事もなげに吐き出され、「もっと自分だけの夢って無いのかぁ?」「…って…」

そうは言われても。
元々、自分のような人間に、夢を見る事なんて許されるはずもないのだと―――
「厳しい事言うなぁ~ルフィ君は。」
思わず俯いて苦笑い。

こんな自分が・・・未だに生きていられるのは、三蔵達がいてくれるから。


「厳しい?そーかぁ?誰だって夢ぐらい持ってんだろ?悪いヤツだって良いヤツだって!」
「誰だって・・・かぁ~。」

――――――――あたしだって、人並みに夢を持っても・・・良いんだろうか?



「お前・・・・」ルフィが何か言いかけた、その時。


「キューッ!」



空を見上げれば、ジープが頭上を旋回している。



「ジープ…散歩から帰ったの?」「キューッ!キューッ!」鋭い鳴き声を上げ続ける様子に、「何?…」この反応は妖怪達が側まで来てる時とか・・

桃花が訝しげに空を見上げていると、 ドーンッ と腹に響く音。同時に、「キャ…?!」 ザッバーンッ と目の前で波飛沫が上がった。

「麦藁の一味!このオレ様が捕まえてくれるわ!」「なっ…!」メリー号の後方に、何倍も大きい海軍の船が付けられていた。

バタバタと尋常ではない音を聞き付けてナミ達が甲板に飛び出して来た。
「ちょっとー!いつの間に海軍が来たのよ?」「んな事より早く逃げねーと…!」「無理ね。」

焦るナミとウソップを余所に、
「周りは浅瀬。唯一の逃げ道は海軍に押さえられているわ。」冷静なロビンの言葉。


「ってー事は戦うしかネェって訳だ」ゾロがバンダナを頭に巻いた。
「クソうるせぇ海軍どもが!夕飯の支度の邪魔しやがって・・・」不機嫌さ丸出しで煙草に火を付けるサンジ。
双方、戦闘準備は整っているようだ。


「海軍…って?」揺れが大きくなった船首にしがみ付く桃花を尻目に、「オレら海賊を捕まえようとする奴らだ。…ゴムゴムの~っ…」
ルフィが両腕をぐるぐると回し始めた。「あぶねぇからそこに居ろよ。」

ビョーンと勢い良く伸びた腕が海軍の帆柱を掴む。「弾丸っ!!」バシュっと弾けた音と共に跳んで行く。「ふ…来たな麦藁め。データー通りだ。」皮肉げな笑みを浮かべ、
「捕縛っ!」その掛け声と共に、バァッと張られたのは――――――――「なんだぁっ?」



「…あ?」 べちゃあ 「ルフィ!!」白くネバネバした網がルフィに絡み付く。
「うおおっ!」満身の力を込めて暴れようとするが、逆に全身を搦め捕られてしまった。
「ルフィ!」焦るサンジ達を尻目に、「うわっははは!もがけもがけ!対ゴム能力者用、つまり・・・」


「つまり、お前を捕まえる為だけに用意した代物だ!!」


ふんぞり返った人物――――――背中に正義を背負った、海軍大佐。



身長は2メートルは超えると思われる程の巨漢―――――風貌は同じ大佐、スモーカーを彷彿させるが、
その口にはパイプを銜え、人を小馬鹿にしたような煙が環っかとなって出ている。
そして何よりも、

「・・・・ま、眩しい・・・・」


煌めく夕日をガンガン反射する、ツルッパゲにはあともう少しな見事なハゲ頭が特徴的であった・・・・






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