勝手に最遊記

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海賊気分でア○ア○サー!―10


激しく船が揺り動く中、ナミの怒声が響く。

「おいっ!ルフィ!喜んで見物してんじゃねぇ!さっさとロープ持って来い!
レディ達は危ないから・・・ってぇえ?!モモカさんっ?!!」


右に左にと足を取られながらも、船首へと進んで行く桃花。

「だってゲートが開いたんでしょ?あたし帰るから~。」
「キューッ!」
バイバーイ、とサンジらに手を振って背を向けようとした桃花の手を、ロビンが掴んだ。

「待って!ゲートが開いたからといって、帰れるとは限らないのよ。」
「・・・な、なんで?だってゲートが開いたから元の世界に帰れるんじゃ・・・」

「あの本の解読を進めて分かったのよ。ゲートから通じる世界は目まぐるしく変わる・・・。
タイミング次第でどの世界に行くか、誰にも分からないわ。」
「世界が変わるって・・ココと桃源郷以外にも有るの?。」

「・・・無数にね。」

ロビンの唐突とも言える言葉に、桃花は押し黙った。


「んじゃー何か?コイツがココに来たってのは、ただの偶然かぁ?」ルフィが首を傾げ、
「そうね。たまたまのタイミングよ。」
「じゃぁ、うっかりゲートに入った日にゃ・・・」ウソップがブルブル震え、
「元の世界に戻れるどころか、生きていける世界じゃないかもしれない・・最悪の場合だけれど。」
「モモカさんを危険な目に遭わせる訳にはイカーン!ココは一つ・・」キラリとサンジが目を光らせ、
「置いときゃ良いじゃねぇか。アイツ、使えるし。」ゾロが腕組みをし、
「そーよねぇ!人手は幾らあっても足りないわ!」ナミが(そしたらバングルを手に入れる機会も・・)グッと拳を握り、

「わあああああああ!!モモカ~!!!?」 ・・・・・・チョッパーが目玉を飛び出させながら叫んだ。

えっ?!――――――――と、皆が振り返れば、船首によじ登ろうとしている桃花の姿が在った。

ビミョヨヨヨーン、と。誰よりも早くルフィが桃花に巻き付く。

「なぁ、モモカ、ロビンの話聞いてただろ?ココに居ろよ~。オレらと一緒に航海しよーぜ!」
「むー!無理無理無理だって~!離してよ~!」
前に進もうと暴れるが、いかんせんルフィの巻き付きに体が自由にならない。
「いーじゃねーか!皆、オマエの事、気に入ってるし!元の世界に帰れるか分かんねぇんだぞ?」
だからなっ?ニシシと満開の笑顔のルフィに
「・・・確かに、あたしだってルフィ君達のこと好きだけど・・・でも、さ。ルフィ君は諦められる?
海賊王になれないって言われたら諦めるの?
あたしは・・・あたしは諦めないよ。例え、違う世界にまた行ったとしても。桃源郷に戻れるまで、絶対に諦めない。
桃源郷に、三蔵達と共に在る事が、あたしの夢だから。」


――――――――――そう、こんな状況で・・やっと判った。









あたしは、桃源郷の世界で仲間と共に在ること・・在り続けたい、それが夢。







「・・・そっか。分かった。」
「キャッ?」
体を離したと思ったら、反動をつけてモモカの体を船首の先に乗せた。



「ル、ルフィ君・・・」
「オマエの夢ー!ちゃんと叶えろよ~!!」




大きく軋む、船体。天を揺らがすかの如く、響く轟音。



そんな状況の中で、笑顔で手を振るゴーイングメリー号の仲間達。



「・・みんなっ・・・・・ありがとう!!」




――――――白い竜と共に・・・・桃花も笑顔で海へと飛び込んでいった・・・












































激しい渦に、体の自由が利かない。息も続かない、意識も混濁としてきた・・・それでも、桃花の胸中に不安は無かった。

絶対、帰る。

自分は帰るんだと、ひたすら信じて・・・・・















桃花の体と白い竜を吸い込んだ大渦が、呆気なくその姿を消した。

穏やかに打ち寄せる波と、頬を撫でる潮風。

誰もが微動だにせず、光が消え失せてしまった海面を見つめていた。








「・・・アイツ、大丈夫かなぁ・・・」

ポツリとウソップが零した。



「大丈夫だろ。あの女、肝が据わってる。」
「有る意味、ゾロ以上よねぇ。」
「また違う世界に行ったりしたら・・怪我とかしなきゃ良いんだけど・・」
「あああオレが守ってあげたいぜ~!モモカすわーん!」
「・・・・興味深い人物だったわ。もっと時間が有れば・・・」
「今度聞けばいいじゃねーか。」

「ああ?何言ってんだルフィ?あのゲートは何百年に一回しか・・」
「ゲートはココだけなんて決まってないだろ?ロビン?」

思わぬルフィの言葉に一同が固まった。

「ぇ・・そうね・・・ゲートがココだけとは限らないわ。歴史の陰に埋もれてしまった伝説だって・・」

「だろー?可能性はゼロじゃねぇんだ!なんてったってココはグランドライン、“偉大なる航路”なんだからな!」

「そうよねー!別れの言葉だって言ってないし。また逢えるかも・・」
「その前向きな考え方が素敵だ~!ナミすわーんv」
「縁がありゃどっかで逢うだろ。・・・また逢ったら船に乗せりゃ良い。」
「ウンウン!・・・そっかーサヨナラじゃなかったんだー!」

呑み直すか!等と賑やかにキャビンへと入るメンバー。
後ろ手にドアを閉めようと、ウソップが背後を振り返るといつもより強く輝く星空。


「今度、逢ったら・・・オレも、アイツみたいに・・・」


――――――――その呟きが、流星と共に流れていった。









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