勝手に最遊記

勝手に最遊記

Stay ―4―


ただ大きさは他の家よりも広く、がっしりした造りになっていた。

二人が土間に腰を下ろしたところで、
「オレの名は晴掩(セイエン)この町を仕切っている。村の皆は“頭領”って呼んでる。」

「オレは“玄奘三蔵法師”訳あって旅をしている。」
「あたしは桃花!一緒に旅をさせてもらってます。」
「・・・迷惑な話だがな。」
「あのねぇ~・・。」

「痴話喧嘩はそれぐらいにして、どういう訳か聞かせてもらおうか?
話を聞かないウチには、ボウヤ達を解放できないからな。」

「・・かいつまんで話すぞ。」
今までの経緯を簡単に晴掩に話し始めた三蔵を見ながら
『痴話喧嘩って・・・どう考えてもイヂメられてるんだけど?』桃花は納得出来ずにいた。

「・・・なるほど。では妖怪達の暴走には理由があると?」
「そうだ。我々はその理由を突き止め、桃源郷を元に戻すという使命がある。」
「“三蔵法師”様ならではのか・・?」晴掩が皮肉な笑顔を浮かべた。

「お前がどう思おうと関係ない。この町にも用はない。さっさと出て行くから悟空達を解放しろ。」
「・・・・・・。」晴掩がふっと息をつき、

「信じられねぇな。悪いがしばらく拘束させてもらう。」
「!?何だと・・。」三蔵が険しい目つきになる。

二人の間に険悪な雰囲気を感じた桃花が、慌てて割って入った。

「信じて下さい、晴掩さん!悟空ちゃん達は悪いこと何かしません!」
「信じろって言われてもな・・。」晴掩がバリバリと頭を掻く。

「オレはこの町を預かる者だ。町の平和について責任がある。
どうやってお前らの言葉を信じろって言うんだ?」

「それは・・。」桃花が口ごもる。
「別に信じてもらわなくて結構だ。」三蔵の言葉に桃花が驚く。

「ちょっと!何て・・。」桃花の言葉を遮って、
「オレ達は足止めを喰っているヒマはない。どうしてもこの町から出さないと言うのなら、
強行突破するまでだ。」

―――――――――――――その場の空気が凍り付く。

「さあぁぁんぞおぉぉ!!」

桃花の突然の大声に、三蔵と晴掩がひっくり返る。

「お前っ・・。」
「問題を大きくしてどーすんのよ!?おとなしく捕まっている悟空ちゃん達の
身にもなってみてよ!!」
あまりの桃花の剣幕に三蔵が沈黙した。

「晴掩さん!!」
「お、おう。」桃花の勢いに晴掩まで押されている。

「悟空ちゃん達は絶っっっ対!大丈夫だから!!あたしを信じて下さい!!」

晴掩の顔に噛みつかんばかりに顔を寄せる桃花。
そんな桃花の顔をジッと眺めていた晴掩が口を開いた。

「『あたしを信じて』・・か。なら、“証し”を立ててもらおうか。」
「はっ?カカシ??」

「カカシじゃねぇ!“証し”だ“証し”!!・・・まったく面白い嬢ちゃんだな。
この村に受け継がれている儀式でな。男が一人前になったかどうかを
見るために“証しをたてる”という事をするんだ。ま、嬢ちゃんが“証し”の
儀式を見事果たせたら・・・村のみんなも納得するだろう。
“信じるに値する人間”だと言うことをな。」

「信じるに値する人間・・・。」桃花が頷く。

「ちょっと待て。儀式とはどんな内容だ?危険なモノなのか?」三蔵が怪訝そうに言った。

「そうさな・・。男が証を立てるって言うぐらいだからな。ソコソコ危険なもんさ。・・心配かい?」
「別に。煩いのが三人もいるからな。俺の所為にされちゃかなわん。」
憮然とした顔の三蔵をおいて、

「その儀式をあたしが出来たら・・。あたしのことを信用して悟空ちゃん達を解放してくれますか?」

「もちろんだ。・・・出来ればな。」晴掩がニッと笑う。
「オイ、お前勝手に・・。」
三蔵を遮り、
「あたしヤルッ!絶対・・やり遂げて見せます!」拳を握ってみせる桃花。

晴掩が可笑しそうに
「いい意気込みだ。女にしておくのはもったいないな。」そう言って哄笑した。


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: