勝手に最遊記

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Stay ―10―



桃花が斜面を滑り落ちた。「いっ・・・痛い・・・。」

もう何度目だろうか。とりあえず山の中腹までよじ登ったのはいいのだが、
そこから上はますます急になっており、簡単に登れそうにない。
中腹には少し棚が出来ており、滑り落ちてはそこに戻されるのだった。

「やんなっちゃうな~・・。」大きくため息をついた。

もう、指には感覚がない。爪が割れて血が滲んでいる。足も腕も・・・擦り傷だらけで、力が入らない。

フッと見回すと、そこかしこに白い花が咲いている。
「これと同じ花が頂上で咲いているんだ・・。」

もう時間はあまり残されていない。夕方までに帰らなければ、花を持ち帰っても無効になるのだ。

しばらく白い花を見つめていた桃花だったが、「・・・よし!」決意の声を上げた。


「ずいぶんと遅いな・・。」晴掩がつぶやいた。

「もう、時間なのか?」三蔵が新聞から目を上げた。

「もうじき日が暮れる・・。そうなったら、帰ってきても無効だ。」
「・・・そうか・・。」

「俺は、あの嬢ちゃんが気に入っててな。」唐突に言い出した晴掩に三蔵は
「何言ってるんだ?」目を丸くする。

「例え儀式に失敗しても、あの嬢ちゃんが一生懸命に信じているアンタ等のことを・・。」

        ドゴオオォォンッ・・・家が揺れた。


「!?何だっ!!」「爆発音?・・・岩牢の方角だっ!!」

「―――チッ!」三蔵が飛び出す。その後を、晴掩も続いて飛び出した。


「どうしたっ!」
駆けてきた三蔵と晴掩の目に入ったのは、粉々に砕けた岩牢だった。

「なんだ・・コレは・・。」三蔵が足を止める。町の男達が集まっていた。そこに飛の姿も見えた。

「飛!どういうことだコレは!!」晴掩が詰め寄る。
「どういうことって・・・村を守ったんですよ?俺が。」飛の目が皮肉一杯に笑っていた。

「なんだと・・儀式は終わっちゃいないんだぞ!?誰がこんなことしろと言った!!」

「もう、帰って来ねぇよ!じき夕暮れだっ。アンタに任しておいたらこの村が危ないんだよ!
あんな坊主や女に騙されて・・。妖怪なんか皆殺せばいいんだ!」
「このっ・・・!」晴掩が飛の胸ぐらを掴む。今にも殴り倒しそうだ。

「・・・残念だったな。」三蔵の声が晴掩を止めた。
「何?」

「生憎と俺の連れは・・・」   ドガッ   バゴッ 砂煙が上がる。

「タフ・・なんだよ。」     ドォォン・・・岩の瓦礫が吹っ飛んだ。


「うわぁーっ!ビックリした~!!」「生き埋めになるかと思ったぜ。」
「早く気付いて良かったですよ。もう少し遅かったらバリヤーを張っているヒマもなかったですね。」

悟空達が、元気に瓦礫の中から出てきたのを見て、村人達に動揺が走る。

「本当にゴキブリ並の生命力だな。」
「ヒデー!三蔵、心配しなかったのかよ!?」
「まーまー。皆、無事ですし・・。」
「無事ね・・。俺等に喧嘩売ったコイツらはどうすんだよ!?」

見れば集まっていた村人達が、手に武器を持っている。

「止めないか!お前達!!」晴掩が叫ぶ。

「火薬で吹っ飛ばしても平気なんて・・。こうなったら直接殺すしかない!!」飛の声に皆が頷く。

「三蔵・・。どうするんですか?」
「・・・仕方ねぇだろ。」
「桃花は?・・まだ帰って来てないんだ・・。」
「村人に手を出したら・・・激怒るぞ、アイツ。」

               ・・・・緊張が辺りを包む・・・・

村人が三蔵達に襲いかかろうとした・・刹那、


           ガァーンッ・・・銃声が鳴り響いた。


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