勝手に最遊記

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Stay ―12―



「無論だ。・・・分かったな、みんな。」
晴掩が村人達を見回すと、一様に頷く・・・が、飛は歯を食いしばっている。

「飛・・・。まだ分からないのか?お前の気持ちも・・。」「止めろ!誰も俺の気持ちなんて・・。」

「キュ―――――ッ!!」夕焼けに赤く染まった空を、小さな飛竜が飛んで来た。

「アレは・・ジープ!?どうしたんですか?」ジープが八戒の頭の上を旋回している。

「何だ、あれ?」「鳥・・いや、龍か!」村人達が呆気にとられている。

八戒がジープが飛んできた砦の方角を見ると、悪質な妖気を確認した。

「みんなっ!・・・妖怪の大群が砦の方に・・・!」八戒が叫び終わらぬうちに、


           ドゴオォォンンッッッ・・・砦が破られた。

「砦が破られたぞ!」「女、子供を守れ!!」ワーッと村人達が駆け出して行く。

「三蔵!行きましょう!」
「・・仕方ないな。」
「ま、閉じこめられていて体力余ってるからな!」
「よぉーし!行くぞ~!」

続いて三人も駆け出していく。

「桃花はココに残れ!ジープ頼んだぞ!」「ピーッ!」
悟浄の言う事を理解したジープが、桃花の肩に止まる。

「みんなっ・・・あたしも・・・。」桃花も駆け出そうとしたが、足がもつれて転ぶ。

「痛~い!足、捻挫してるんだった・・。」『あたしだけ安全な場所に居るわけには行かない!』

桃花はジープをシッカリと両の手に抱き締め、
「ねぇ~、ジープちゃ~ん♪お願いがあるの~♪」と、不気味な微笑みを向けた。


―――――――――――――砦の前は大混乱だった。

いかに妖怪狩りをしているとはいえ、妖怪の数が多すぎる。

しかも無力な女・子供を守りながらの戦いでは、劣勢を強いられても仕方なかった。

「うおおおっ!」大きな刀で妖怪を一刀両断した晴掩は、冷静に戦況を分析していた。

『このままでは数に押されて負ける・・!今のうちに何とか村人を逃がすことは出来ないものか・・。』
鬼神のように妖怪を切り殺していく晴掩を、妖怪が束になって襲いかかる。

「くううっっ!!」いかに晴掩といえども、多勢には手が足りない。

『もはやこれまでか・・・。』そう、思った瞬間・・・・・

ドオォーンッ・・目の前にいた妖怪達が一瞬で消し飛ぶ。
唖然とする晴掩に、
「ああ良かった。間に合いましたね♪」

「あ、アンタ達・・。」場違いな八戒の微笑みに、晴掩が驚いた。


「きゃあああ!!」妖怪に家から引きずり出される娘が悲鳴を上げる。
「美味そうな女だ。俺様がじっくり味わって・・。」
言い終わらないうちに、妖怪の体がバラバラになって消える。

「お前みたいな不細工にはもったいないってーの。あ、もう死んでるか。」
さ、お嬢さん♪と手を差し伸べる悟浄に、

「このエロエロ河童!チンタラしてんなよ!いくらでも遊び相手は居るんだからよぉ!!」
悟空が如意棒で妖怪を叩きのめしながら叫ぶ。

「・・・・魔戒天浄!!」
三蔵が集団で襲ってきた妖怪達を一瞬で無に帰す。

戦況はあっというまに好転した。
村人達も勢いを盛り返し、次々と妖怪を退治する。

「・・・強い・・アンタ等本当に強いんだな。」晴掩が驚きの表情で言った。

村へ進入してきた妖怪達を、全て倒した村人達が、三蔵達の方へ歩み寄ってくる。

「ありがとう!」「酷い目にあわせて悪かったな。」「良くやってくれた!」

口々に喜びや詫びの言葉をかけられて、三蔵達も悪い気はしない。

ただ、それでも飛は一人離れた所にいた。

その飛の近くに、倒れていた妖怪が起きあがろうとしていた。


――――――猛毒を持つ爪を伸ばして・・・飛に襲いかかった―――――――――


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