勝手に最遊記

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Family ―10―


まだ熱があるため食欲はないのだが、栄養を取らないといつまでも治らない。

『これ以上、みんなに迷惑かけられないもんね。』
幸い、八戒に頼まれているのか、宿の女の子が良く世話をしてくれる。

「これ、お水です。薬を飲まれると思って・・。」
「ありがとう。ゴメンネ、他のお客さんのお世話もあるのに・・。」
「いえ、いいんです!何だか憧れちゃって。あんな優しいお兄さんが居て、羨ましい~。」

桃花としては複雑な気分である。
『あたしの方が3コ年上なんだけど・・。やっぱ童顔だからかな~。』
特に今は化粧っ気もない。今さら否定するのも・・。

「八戒・・お兄ちゃん達、ドコに行ったのかな?聞いてる??」
「え?別に・・・お連れ様を探しに行くとしか・・。」

そう・・と桃花は考え込んだ。悟空ちゃんが夕飯時に帰って来ないなんて。
八戒ちゃんはああ言ったけど、とても信じられない。

「あ!でも、沼地の場所は聞かれましたよ。」
「沼地?」
「ええ、この町にある怖い話なんですけど・・聞きます?」
宿の女の子は茶目っ気たっぷりに言う。

「ぜひ、聞かせてくれるかな?」桃花はベッドの上に座り直した。


・・・・・・・三蔵達は目の前の光景に息を呑んだ。

悟空は沼の中央にいた。いや、体は浮いている状態だ。

沼の中心から蔦が何十本と生えており、球体となって悟空を包み込んでいる。

蔦の球体の中心から覗く悟空の姿は、まるで胎児のような姿で眠っている。


「・・・ざけんなよ。何だこりゃ・・。」悟浄が錫杖を手に取る。

「おらああぁぁ!!」悟浄が蔦の球体に向かって、錫杖を振るった。

           ザククッザクッ  鎖鎌で蔦を切り落とす。

次の瞬間、沼地から続々と蔦が這い出して球体を更に包む。

「クッ!・・キリがないって事かよ!?」
「八戒、気を放て!」三蔵が球体を睨んだまま言った。
「しかし三蔵、あの球体に気を放てば悟空も巻き添えになります!」

「このままじゃ埒があかねぇ・・。大丈夫だ、アイツはそんなにヤワじゃねぇ。やれっ!」

「・・・判りました。」八戒が精神を集中させる。

「―――――――――・・・・・はぁっ!!」

八戒の手から放たれた気が、蔦の球体へとぶつかる・・・と思った瞬間、
放たれたはずの気が、八戒へと跳ね返ってきた。

「うあああぁっ!!」
自ら放った気の直撃を受けて、八戒が倒れ込む。

「八戒!・・・大丈夫か!?」慌てて悟浄が駆け寄る。

「僕は・・・大丈夫です・・。それより・・。」
悟浄に抱き起こされた八戒が苦しげに呼吸する。

「バカ野郎!・・ドコが大丈夫なんだよ!?・・って、オイ!三蔵!?」

三蔵が沼地へと入っていく。

ズブズブと自分の体が沼へと沈んでいくのにも関わらず。


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