勝手に最遊記

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Family ―14―



『ここが・・・貴女の・・・。』
『そう。あたしの心。いつもは思い出す事もしない、あたしの過去。』

女は驚愕した。目の前に飛び交う過去の映像。

・・・・・血みどろで・・・凄惨で・・・悲痛な叫びと・・・絶望の底・・・・・

女が怯える。
『こんな・・・こんな事って・・・。』

『・・・あたしは生きてるから。どんな傷でも背負って生きて行くから。
・・・生きて行かなきゃダメだから。』

『・・・生きて・・・?』

『そう。でも、貴女は違う。これ以上、苦しむ必要なんて無い。・・きっと、待ってるよ。』

『待ってる・・・?』

『待ってる。貴女の大事な人達・・・首を長~くしてね。』

微かに女が微笑んだ。

『・・・ありがとう・・・。』

『どういたしまして・・・。』


女が光となって、桃花の心から出て行く。

――――――――――――――――――ゆっくりと、桃花は眼を開けた。


「桃花・・。」安堵の息が漏れる。

「逝けたね・・・やっと。」桃花が空を指す。

いつの間にか、辺りを包んでいた霧が晴れ、星空が見える。

「ええ。貴女の体から光が抜け出し、空へ昇っていくのを見ましたよ。」

「ハラハラさせんなよな~?」悟浄が桃花の頭をポンポンと叩く。

「ゴメンゴメン。・・・悟空ちゃん、どうしたの?」

桃花の手を握ったまま、無言で座り込んでいる悟空。
「俺・・・ゴメン。」俯いたまま小さくつぶやく。

「猿~。何言ってンだよ?」
「悟空・・。」

「俺、三蔵やみんなに助けてもらってばっかりだ・・。オマケに病気の桃花にまで迷惑かけて・・。」

「・・悟空ちゃん。顔上げて?」

「・・うん。」悟空がゆっくりと顔を上げる。

「エイッ。」       【ぷすっ】    桃花が悟空の鼻に指を突っ込んだ。

「ーーーー!!!?」

「つまんないこと言ってると、鼻の穴大きくしちゃうゾ?」

「っっってぇ!!何スンだよぅ!?」指を引き抜き転げ回った。

悟浄は大爆笑。八戒は笑いを堪え・・一人立っていた三蔵は呆れている。

「じゃ~宿に帰ろっ!森の外に、ジープを待たしてるから。」
「・・・なんかジープを使いこなしてますねぇ~。」
「いちいち脅されているジープが気の毒だよな・・。」

よいしょっと桃花は立ち上がったが、足下がおぼつかない。

「桃花?」
「あはは・・。気合い抜けたから・・。」どうも熱がぶり返したらしい。

「俺が、ジープまで背負って行く!」悟空がしゃがみ込んだ。
「い~よ~。悟空ちゃんも体力が回復してないでしょ?」
「猿は三蔵に担いでもらえよ。俺が桃花を抱き上げて行くからサッ♪」

「・・ヤダッ!俺が背負っていく!!」
責任を感じている悟空は、引っ込むつもりがない。

ど~しよ・・桃花は三蔵を見たが、『俺は知らん』光線を発していたので諦めた。

「・・・じゃ、お願いします・・。」桃花は恐る恐る悟空におんぶされた。


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