勝手に最遊記

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Jealousy ―2―


もう一人の妖怪が、恐怖のあまりへたり込む。

「・・・もう一度、お伺いします。」ゆっくりと八戒が詰め寄る。

「貴方は、本当に百眼魔王の配下なんですか?」
もはやいつもの八戒ではなく、まるで制御装置を外してしまったような危険な
雰囲気に、悟浄達も息を呑んだ。

「ちっ違う!!・・オレ達は・・百眼魔王の名を騙(かた)っていれば
女や喰い物が簡単に手に入るから・・それで・・・。」
喚きながら説明する、妖怪の無様な姿・・・。

八戒はその姿を見ながら、冷静さを取り戻していた。

「そうですか・・。」フッと八戒が息をつく。

「じゃぁテメェは百眼魔王と何の関係もないんだな?」
三蔵が再度妖怪に確認する。

「そうだ、俺は百眼魔王に会ったことも無い・・。」

「なら死ね。」ガウンッ・・妖怪は消滅した。

「八戒。大丈夫か?」悟浄が八戒に駆け寄る。

「ええ・・スミマセン。ちょっと動揺してしまいました。」
いつもの八戒の笑顔に、悟浄が安心したように息を吐いた。


「桃花、大丈夫か?・・・気にすんなよ?八戒は百眼魔王ってヤツに恨みがあるからさ・・。」
青い顔をして立っている桃花を悟空が心配する。

「あ、うん。いつもの八戒ちゃんじゃ無かったから、驚いただけ。」

そっか、と安心した悟空の顔を見て、桃花はぎこちなく笑った。
側にいるのが悟空ちゃんで良かった・・。
コレが目敏い三蔵や八戒ちゃんだったら・・・・震える手を握りしめた。

「もう、大丈夫だからよ?」
悟浄が少女に手を差し伸べるが、少女は動かない。

「やっぱり危険人物って言うのが分かるんですかねェ。」
「・・・どういう意味だよっ。」
「そう言う意味なんだろ。」
「三蔵っ。テメー・・」

いつもの小競り合いが始まりそうなのを察知して、桃花が割って入る。

「だーかーらー!そんな事言ってるから、怯えるんだって!
襲われたばかりなんだから、この子の身にもなって・・・うん??」

少女が桃花の腕を掴んでいた。
「えっと・・。あたし桃花って言うの。貴女は?」
ニッコリ笑って桃花は言ったが、少女は答えない。

「・・怪しい人達に見えるけど、怪しい人達じゃないよ?
まーある意味、危険人物ばっかりだけど・・。」
笑わせようと試みるが、少女は答えない。

「お名前・・教えてくれるかな?」
「・・・・・・・。」少女は答えない。

「~~~~~~~~三蔵~~。」困り果てた桃花は三蔵に視線を送る。

「チッ、構うな。・・・行くぞ。」

「「「エエエェェ~~っ!!!!」」」

「ひっどい、三蔵!この子をこのままにしておく気!?」
「この鬼畜坊主!!お前には女の子に対する優しさがねぇのかよ!?」
「ひでーよ三蔵!また襲われたらどうすんだよ!!」
三人で寄って集(たか)って三蔵に文句を浴びせる。

「~~~~~~煩せぇぞ!てめぇらっ!!」
スパパパーーッンッとハリセンをお見舞いして不機嫌に睨み付けた。

まーまーと八戒が取りなし、
「次の町まで30分足らずですから。そこまで彼女を送って行きましょう。」

「・・・・勝手にしろ。」

「良かったですね。三蔵の許可が下りましたよ。」
ワーイワーイと喜ぶ4人に、三蔵はため息をついた。


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