勝手に最遊記

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Jealousy ―6―



「ほっとけばイイだろ。」三蔵が新聞から目を離さず言った。

「なんだよー。いつもは個人行動はするなって言って、桃花を一人にさせないクセに~。」

「お前が遊びに行きたいだけだろ?」悟浄が突っ込む。

「違うって!なんか桃花の様子が変だったから・・。」うーんと悟空が頭を振る。

「大丈夫ですよ。・・・サクラは?」八戒がお茶の後片づけをしながら聞いた。

「・・・と、便所に行ったと思ったケド?」悟浄の言葉に、無言で八戒がトイレに向かう。

「サクラ?・・サクラ、どうしたんですか?」返事はない。ガチャガチャ・・鍵が掛かっている。

「エッ?八戒・・・。」悟空が八戒に話し掛ける間もなく、八戒がドアを蹴破る。
ドーーンッ・・トイレのドアが開いたが、サクラの姿は無い。
小さな窓が開いていて、そこから抜け出したようだ。

「うぇっ!?ココって三階の部屋だよな?」悟空が素っ頓狂な声を出す。

「・・・三蔵。」八戒が真剣な眼差しで三蔵を見る。

「・・・・動き出したな。」新聞を置いて、三蔵が立ち上がった。


「っだから、どうしたいって言うの!?」桃花はチンピラ三人に、公園へと連れ込まれていた。

―――――――――――――――――――夕暮れが迫った公園では、人影もない。

「金が無いなら・・体で払ってもらう!」その言葉に桃花はまた・・・ため息をつく。

「なんでこう・・決まり文句しか言えないの?ボキャブラリー貧困って言うか、バカ丸出しって言うか・・。」

桃花の言葉にチンピラ達がいきり立つ。
「こっ、この女(アマ)!」
「容赦しねぇ!!」一人が飛び出しナイフを出す。

・・・・ココで殺されても構わない・・・自暴自棄な感情に心が揺れる。

           “限りある命を粗末にしない”そう、誓ったのに。


顔色一つ変えない桃花に、チンピラの方が動揺する。
「お、大人しくしてりゃ、痛い目みないんだ!」
「お前は黙って・・「黙ってればイイの?」チンピラ達は口を噤んだ。

「それで、あたしは救われるの?玩具のように弄ばれて。・・・真っ平ゴメンよ。
それなら潔く、あたしを殺したらどうなの?」

挑発的な桃花の態度に、ナイフを持った男が突っ込む。
「この女・・・!」

桃花はサッと男を避けた。・・・何のことはない。人殺しをした事がないのか
へっぴり腰で、手元もおぼつかない。

「そんなので・・。」よくもまぁ、と桃花が呆れる。
「畜生・・・っ!」男が再び桃花へと襲いかかる。

一振り、二振り・・・と男のナイフを交わしながら後退した桃花の背中に、木の幹が当たる。
『・・・しまった、逃げ場がない!』桃花の目に、興奮状態の男の双眸が見えた。

ダメだっ・・・目を閉じた。・・・が、いつまでたっても衝撃がない・・・・?


桃花が目を開くと、男の姿がない。いや、あったのだが上半身が無くなっている。

「―――――っ!?」男の体が、血を吹き出しながらゆっくりと倒れていく。
桃花は声を出すことも出来ず、その光景を凝視するだけだった。

「ひっ・・・ひいぃぃっ!!」
チンピラ二人が悲鳴を上げながら逃げ出す。そこへ、光が走り抜ける。

「・・・!?」男達の体が両断される――――――――・・・・・・・音もなく。

血飛沫をあげながら倒れた男達に、ゆっくりと歩み寄る人影があった。


          「・・・サクラ、ちゃん?」

決して感情を顔に出さなかった少女が、血溜まりを眺めながら笑っていた。


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