勝手に最遊記

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Jealousy ―7―



落ちてきた夕日が、サクラの白い体を朱に染めた。

とても美しい姿なのに、蒼い目には感情がない。それなのに微笑みを浮かべているサクラの顔が・・・。

                          『恐いっ・・・!』

桃花は木の幹に背中を預けたまま、動けない。

風のように、ゆらゆらと自分に近づいてくるサクラを見ているしかなかった。

目の前に――――――――――――――・・・・サクラの蒼い目が迫った。
肩を両手で掴まれ、動くことも叶わない。

「・・っ、サクラちゃん・・・」どうにか声を上げた桃花の唇が、サクラの唇で塞がれる。

「・・・!!・・・っ」必死でサクラの体を押し戻そうとするが、もの凄い力で抱き竦められる。
サクラの舌が口腔に押し入り、ドロドロとした液体を桃花の喉に流し込む。
その液体を桃花が飲み下したのを確認して、サクラが桃花を解放した。


「はっ・・はぁ・・な、なんで・・。」
サクラの行動に混乱しながらも、必死に問いただそうと歩み寄ろうとしたが、

「――――・・・エッ。」カクンッと膝が曲がる。
足のつま先から痺れが広がり、体を蝕んでいく。とても立っていられない。

『さっきの液体・・・!?』薬を飲まされたと思い当たったが、既に体の自由が利かなくなっている。

「タダノ、薬。自由ヲ奪ウダケ。」

喋らなかったサクラが喋った!その驚きよりも、人形が喋っているような抑揚のない声に、鳥肌がたった。

「キミ、実験動物(ウサギ)。最適ダ。博士、判断シタ。」

「誰・・が・・」舌まで痺れてきた。頭も朦朧(もうろう)として、考えがまとまらない。

「実験動物(ウサギ)捕獲。回収スル。」サクラの手が自分に向かって来る。

その光景をただ、見つめながら『・・・・今日は最悪・・・・。』桃花が意識を手放そうとしたとき、

              ガウンッ――――サクラの額に穴が開いて倒れた。


「桃花っ!大丈夫か!?」力強い腕で抱き起こされる。

「・・・ごじょ・・みんな・・。」
自分の背後に、悟浄・悟空・八戒・三蔵を確認する。

「・・・ったく、バカ女。」昇霊銃を構えたまま、三蔵が不機嫌に言った。

「三蔵・・!」サクラが膝も折らず、ビョンッとネジ巻の玩具のように立ち上がる。

サクラの額には銃口の穴が開いたまま――――――・・・蒼い目が秘かに発光している。

「人間じゃねーぞ?」悟浄が桃花を抱えながら言った。
「妖怪でもないだろ?」悟空が如意棒を出現させる。
「アレは恐らく・・・。」八戒の顔が歪む。

「式神と科学の融合体だ。」三蔵が続けて2発、サクラに向けて撃ち込む。

ガウンッガウンッ・・・・狙い違わず、サクラの心臓に穴が開き・・・・「チッ!効果ねぇか!」
平然と立っているサクラの姿は異様としか言いようがない。

「・・・直接、攻撃を仕掛けるしかないでしょうね。」八戒が手に気を集め始める。
「つーことで、三蔵、桃花頼むわ。」悟浄が三蔵に桃花を渡す。

「・・オイッ。」じろりと睨み付ける三蔵をからかうように、

「肉体労働は俺等の専売特許♪よろしくね~ん。」ジャラッと錫杖を手に持つ。

「じゃー始めるかっ!!」悟空の言葉が合図だったかのように、三人がサクラへと向かう。

「おらああぁぁっ!!」悟空の如意棒が、サクラへと振り下ろされ・・・・。

『消えたっ!?』確実に仕留めたと思ったのに、如意棒は空を切った。

「悟空!後ろ・・」八戒の言葉が間に合わない。

一瞬で悟空の背後に回ったサクラが、悟空めがけて手刀を繰り出す。

ドゴッ!!・・・頭部を強打された悟空は、意識が飛びそうになる。

「ぐっ・・うぅ!!」必死に意識を繋ぎ止め、サクラの二撃目の手刀をかわす。
足下がよろける悟空に、サクラは容赦なく追いつめる。

「・・コッチも遊んでくれよ!」振りかざすサクラの手に、悟浄が錫杖の鎖鎌を巻き付ける。

一瞬、動きが止まったサクラへと、八戒が気功を放つ。

ドォォンッ――――大きい音と共に、砂塵が舞い上がる。

「・・・やったか?」悟浄が錫杖を持ち直そうとしたとき、

「っっっっがあぁ!!」もの凄い力で、錫杖に繋がっている鎖が引っ張られ、
身長180センチ以上もある悟浄の体を、木に叩きつけた。

その鎖の先に・・・サクラが居た。いや、“だった”と言うべきだろう。

艶やかな表皮は剥がれ落ち、鉄が見え隠れしている。その鉄の間からはドロドロと薄いピンク色の
液体が流れ出ている。
目だけは蒼い光を発したまま、無表情で悟空達を見ていたが――――――・・・

          「実験動物(ウサギ)捕獲スル。邪魔スルモノ、排除スル。」

機械的な声で、宣言した。


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