勝手に最遊記

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Jealousy ―9―



ダッ――――素早い動きで飛びかかるサクラ・・狙いは三蔵の後ろに居る桃花。

ドオォーンッ・・気の光球がサクラの体を吹き飛ばす。

「・・・三蔵達には近づけませんよ。」深い笑顔の八戒。
「薬を盛って誘拐ってのは、未成年のする事じゃねーしな。」ニヤリと悟浄が牽制する。
「仲良くしようと思ってたんだぞ!?」いきり立つ悟空。

――――――――――――――三人がサクラと三蔵の間に入る。

「キキキキキ・・・邪魔者・・排除セヨ・・。」サクラの口が開く。

「ヤベッ!」「避けろっ!!」三人が思い思いの方向に飛ぶが、サクラは光線を出さない。

「・・・しまっ・・・!!」
フェイントに引っ掛かった!そう八戒が気付いたときには、サクラは三蔵の眼前にまで迫っていた。

「三蔵っ・・・!!」悟空が叫んだ刹那、

「魔戒天浄!!」三蔵の体から放たれた経文が、サクラの体へと絡みつく。


「ガギギギキキイイィ・・・」力と、自由を奪われて、藻掻くサクラ。

その機を逃さず、「うおりゃあぁぁっ!!」悟浄の鎖鎌がサクラの手足を切り落とす。
「こんのおっ・・!!」悟空の如意棒が、胴体へ突き刺さる。

「ギ・・キーーキキィィ・・。」倒れようとするサクラの顔を、八戒が押さえる。

「式神には良い思い出がないので・・・スミマセン。」サクラの口腔へ気を放つ。同時に、体中が発光する。

「みんなっ・・・伏せて下さい・・・っ」八戒がサクラから離れる。

咄嗟に、三蔵は後ろに倒れている桃花の体を庇う。

ドカーーンッッ・・・凄まじい爆音と共に、サクラが砕け散った。

巻き起こった爆風を感じながら、『・・あー・・勝ったよ・・良かった・・。桃花は安心して、意識を失った。


「・・・・ん?ココは・・。」目を開くと、見慣れない天井が目に入った。

「気が付きましたか?ココは宿の部屋ですよ。」八戒が穏やかな笑顔で横に座っている。

「・・・八戒ちゃん、あたし・・。」起き上がろうとするが、まだ体に力が入らない。

「まだ薬の効果が消えていないんですよ。・・・コレで良いですか?」
八戒が桃花を起き上がらせ、背中に枕を置いてくれる。なんとか座れた格好だ。

「そうなんだ・・。あ、喋れる。・・・みんなは?」

「今の今までココに居たんですけどね~。悟浄と三蔵は喫煙に。悟空は食料を調達しに行ってますよ。」

「そっか。・・みんな無事で良かった。あのさ、八戒ちゃん。」

「何ですか?」

「みんな、どうして助けに来てくれたの?」桃花には良く判らなかった。
確かにサクラは禁断の汚呪で出来た式神だったけど、
襲われるまで分からなかったし、都合良くみんなが助けに来てくれなければ間違いなく・・・。

「それはですねぇ、」八戒が言いにくそうに「判ってたんですよ、彼女が怪しいって事。」

「はぁっ!?」思いもかけない返答に、間抜けな声を出してしまう。

「三蔵は最初から怪しいって思ってたみたいですけど・・。
僕がハッキリと確信したのは、宿に着いてからなんですよねー。」のほほんと、のたまう。

「ど、どうやって怪しいって思ったの??」

「“瞬き”ですよ、“まばたき”」
「まばたき?」
八戒は自分の片眼鏡(モノクル)を指して、
「僕のコッチの目は義眼じゃないですか。で、当然・・・瞬きしませんよね?」

「?そりゃそーだけど・・サクラは瞬きしてたよ。すんごい長いマツゲだな~って感心してたんだもん。」

「ええ、してました。同じ間隔でね。」
「同じ間隔??」

「5秒に一回、15秒に一回、10秒に一回・・という間隔です。」
桃花は思わず口を開けたまま八戒を見つめる。
「・・・桃花?」

「ハッ!・・・いや八戒ちゃんって凄いな~って思って。洞察力ありすぎだよ・・・ハハハ。」

『絶対、八戒ちゃんは敵に回したくない・・・』心でそう誓っている桃花に、八戒がそっと顔を寄せて

「・・・“やきもち”妬いてたんですよね、桃花。」

「んんあっ!?ななな・・・何を根拠にっ!?」いきなり自分の弱みを突かれて、桃花は赤面した。

「僕は“洞察力”が、ありすぎますから。」
しれっという八戒の笑顔が、憎いっ・・・!桃花は本気で思った・・。


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